社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS LL』

社長が訊く『ニンテンドー3DS LL』

目次

5. 「少しでもよくしたい」

岩田

そろそろ最後になりますが、
みなさんがそれぞれ気に入っているところや、
言い残したアピールポイントを、
ひとことずつ話してもらいましょうか。
宮武さんから、お願いします。

宮武

そうですね、デザインとしては
ぜんぶ関わっていますから・・・。

岩田

1か所じゃなくてもいいですよ。

宮武

ここまで触れてない点で言うと、
操作性がよくなった点にも注目してもらいたいんです。
ABXYの各ボタンや十字ボタンは大きくなって、
厚みも増して、遊びやすくなっていますし、
とくにLRボタンは
高さ方向にキートップの厚みを増して、
より操作しやすいものになっています。

岩田

うん、たしかに操作しやすくなりましたね。

宮武

START、SELECT、HOMEボタンも、
かなり設計のほうにがんばっていただいて、
シーソー型にボタンが沈むんです。
ここは細長いキートップになっていて、
どこを押してもきちっと入ります。

岩田

「どこを押しても、スムーズに押せるように
 工夫されています」ということですね。

宮武

あとは実際、手に持っていただいたときの
サイズ感や開いたときの印象は、
過去の機種とは違うよさがあると思います。
大きくても、その大きさを
感じさせないハードになったと思うので、
どこにでも持ち運んで遊んでほしい、
そう思っています。

岩田

この“大きいのにコンパクト”な感じは、
写真で見るだけでは
なかなか伝わりきらない気がするんですね。
ぜひ現物を手にとって
見ていただきたいと、わたしも強く思います。
次は、藤田さん。

藤田

「いかに大画面を映えさせるか」という点で、
かなり設計的にもがんばりました。
いま、先に宮武さんに
いろいろ言われてしまったんですが、
自分としても、START、SELECT、HOMEボタンは
ここだけの試作型をつくって、
とくにこだわった点のひとつなんです(笑)。

岩田

はい(笑)。

藤田

わたしは去年、開発技術部に異動して、
最初に担当したということもあり、
思い入れが強い製品です。
自分が担当したスピーカーもそうですし、
角の曲面であったり・・・。
そういう意味では、とにかくぜんぶ見てほしいです(笑)。

岩田

はい、わかりました。
村上さんはどうですか?

村上

あの、言い忘れていたんですが、
液晶の反射防止の話をしてもいいですか?

岩田

そうそう、反射のお話を訊かないと!
ぜひ、お願いします。

村上

反射防止は、もうずっと以前から
取り組み続けているチャレンジなんです。
ゲームはやっぱり、没入感が大事なので。

岩田

そうですね。
今回、光の映り込みに関して
どうやって抑えているんですか?

村上

具体的には、液晶画面の上に、
こういうスクリーンカバーが
貼り付けてあるんですが・・・。
今日説明しようと思って持ってきたんです。

岩田

これが貼ってあるんですか。

村上

はい。液晶の画面には主に3つの反射面があるんですが、
それらすべてで反射が起きて映り込みが生じてしまうんですね。
そこを今回、すべての層に特殊な処理をすることで
反射率にして3DSは12%くらいあったものを、
3%くらいまで軽減することができました。

岩田

今回、実現できた理由はなんですか?

村上

ひとことで言うと、技術の進歩ですね。

岩田

昔からARコート(※13)とかよく言われていましたが、
それと原理は一緒なんですか?

※13
ARコート=反射防止フィルムの名称。ARは、Anti-Reflectionの略。

村上

基本的な原理は一緒ですけれど、
製造工法や手法が違います。
あとはやっぱり、コストですね。
昔は本当に高かったんです。

岩田

それこそゲームボーイアドバンス(※14)の時代から
反射防止は毎回話題になっていましたけど、
コスト面で断念する場面が多かったんですよね。

※14
ゲームボーイアドバンス=ゲームボーイカラーの後継機として、2001年3月に発売された携帯ゲーム機。

村上

でもずーっと、
そういう技術はチェックし続けていたんです。

岩田

じゃあ、その時が来たわけですね。

村上

はい。その時がやっと、来ました(笑)。
反射防止に関しては、
いままでの任天堂ゲーム機の歴史のなかで、
いちばん優秀なものになりました。

岩田

わかりました、すばらしいですね(笑)。
田中さん、どうぞ。

田中

わたしはあまりハードに関わってないんですが、
3DS LLのいちばんの売りは、
大きくなった液晶画面で視差も大きくなり、
より迫力のある立体視を楽しめることだと思います。
3Dボリュームのストロークも長くなって、
より、好みの調整がしやすくなっていますし、
「より幅広い人々に魅力が伝わればいいなぁ」と思います。

岩田

そういう意味では
すでに3DSで遊んでいたソフトも、
3DS LLで遊ぶことによって
印象が変わるかもしれないんですよね。
事実、わたしは『マリオカート』や『パルテナの鏡』(※15)を遊んで
「おおっ!?」って感じたところがありましたから。

※15
『マリオカート』や『パルテナの鏡』=『マリオカート7』と『新・光神話 パルテナの鏡』のこと。『マリオカート7』は2011年12月に発売されたアクションレースゲーム。『新・光神話 パルテナの鏡』は、2012年3月に発売されたアクションゲーム。

田中

あと3DS LLには
3Dの立体視を体験いただけるサンプル映像を1本、
プリインストールしています。
この映像は3Dのノウハウを活かして
制作されたCG映像です。
3DS LLの魅力が味わえる映像になっていると思いますので、
ぜひいろんな人に見てもらいたいです。

岩田

それでは最後に、輿石さん。

輿石

さきほどの液晶の話にも関連しているんですけど、
新しい技術を試行錯誤しているなかで、
ACアダプタを新規でつくるかもしれない、
という場面があったんです。

岩田

初期の仕様では、充電しながら遊ぶ場合、
既存のACアダプタの能力を超えていたんですよね。
それで機能上、新たな専用品を
用意しなくてはいけないかもしれない、
という時期があったんですよね。

輿石

はい。でもその後、メーカーさんのご協力もあり、
既存のACアダプタでいけることになりました。
またその過程でコストの話もあって、
「充電台って必須なのか?」という話も出しました。
岩田さんから逆に、
「ACアダプタを別売りにしませんか?」
というご提案もいただきました。

岩田

そうでしたね。

輿石

悩みどころではあったんですが、
そのとき社内のすべてのグループで、自然と
「ぜったい要るものとそうでないものを分けよう」
という意識が共有できていたんだと思います。
それで最終的に
「ACアダプタと専用充電台を別売りにする形がベストだろう」
と決めることができました。

岩田

ACアダプタに関して言えば、
この型はDSi(※16)から数えて4機種目になるわけで、
そうなると、以前のACアダプタをお持ちの方も
多いと思うんですね。だったらその分、
「お客さんが少しでも買いやすくしたほうがいいのでは」と、
考えた結果だったんですけどね。
一方では、必ずお店で、
「この商品にACアダプタは同梱されていませんから、
 必要な方は別にお求めください」ということを
アナウンスしてもらう必要がありますから、
そこを営業本部に徹底してもらうことまでが
セットになるんです。

※16
DSi=ニンテンドーDSi。ニンテンドーDS Liteの上位機種として、2008年11月に発売された携帯ゲーム機。

輿石

そうですね。お客さんに対して、
「買わなくてすむものは付けない」と
スタッフみんなが納得する形で着地できたのが、
自分の中でもすっきりしてよかったです。
あとは3DS LL本体発売と同時に
『マリオ』や『鬼トレ』(※17)といったソフトが
発売されますので、
まだ3DSを体験されていない方もぜひ、
この機会に楽しんでもらえると、うれしいです。

※17
『マリオ』や『鬼トレ』=『New スーパーマリオブラザーズ 2』『東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング』のこと。どちらも、2012年7月28日にニンテンドー3DS LLと同日発売。

岩田

そうですね。
わたしも本当に、発売されたときの反応が楽しみです。
この3DS LLの魅力を知ってもらうには、
「現物を手に取って見ていただくのがいちばんいい」
という手応えがあります。
おそらくこの「社長が訊く」が掲載される頃には、
全国の店頭でご覧いただける環境が
整いはじめていると思いますので、
興味を持たれた方はぜひお店に足をお運びいただいて
商品に触れていただきたいと思います。

そして最後になりますが、
今日、開発にたずさわった人たちの話を訊き、
「本当に小さな努力をたくさん積み重ねたからこそ、
 ここまで到達できたんだなぁ」と、強く感じました。
「将来使える技術があるかもしれない」と
いつでも目を光らせてきた人や、
「まだまだ、少しでもよくしたい」と
ずっと考え続けている人がいて、
「一人ひとりにとっては当たり前のことでも、
 そんな人たちの思いが積み重なっていって、
 ハードはできるんだ」と、改めて思いました。
みなさん、お疲れさまでした。
ありがとうございました。

一同

ありがとうございました。