社長が訊く
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社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ 2』

社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ 2』

目次

4. 「僕はきらいや」

岩田

今回は、本編のコースとは別に、
コインラッシュ」モードが遊べますよね。
この新しいモードはどのように生まれたんですか?

天野

今作のテーマを「コイン集め」に
決める前のことなんですけど、もともと僕の中には
「何度も遊べる『マリオ』をつくりたい」
という気持ちがあったんです。

岩田

「全コースをクリアしたから、もうおしまい、
 にならないためにはどうするか?」を考えたんですね。

天野

はい。だからといって、
コースのボリュームをむやみにふやすという方向ではなく、
「お客さんが空いた時間に、ちょっと遊んでも
 面白いものにできないか?」
ということを考えていたんです。

岩田

「時間ができたので、これから5分だけやってみよう」
みたいな感じですか?

天野

そうですね。なので、
「3コースくらいを連続で遊んで、 
 1回ミスしたら終わり、みたいに、
 ちょっと手軽な感じにまとめられないかな」
というのがはじまりだったんですけど、
最初の頃につくったものは、
お客さんが能動的に遊んでくれるような、
いいものにはならなかったんです。

岩田

遊びたい動機が弱かったんですね。

天野

そうなんです。で、その一方で、
コイン100万枚を集めることをテーマに、
本編のコースをつくりはじめていたんですけど、
そこで大きな問題が起こって。

石川

どれだけ遊んでも、
100万枚集まらなかったんですよね(笑)。

一同

(笑)

岩田

「なんとかなるやろ」が、
なんとかならなかったんですか。

天野

ええ。もちろん万単位までは行くんですけど、
「100万枚集めるために、
 本編を何回クリアしないといけないんだ?」
という感じになって。

岩田

それだと、遊びというより、
作業になってしまいますね。

天野

それでまた「どうしよう・・・」と思っていた頃に、
「コインラッシュ」モードのことが蘇って、
「ここでたくさんのコインを稼げるようにしてはどうか」
ということを考えてみたんです。

岩田

コインがたくさん稼げるようになると、
強い動機にもなりますよね。

天野

そうなんです。
「コイン集めが、能動的に遊ぶための
 モチベーションになるのではないか」と思いました。
そこで、ゴールポールのてっぺんにつかまると、
集めたコインが2倍になるようにしてみたんです。
それがうまくいくと、すごく気持ちいいんです。

岩田

痛恨のことも起こりますけどね(笑)。

一同

(笑)

岩田

それで、100万枚も見えてきたんですね。

天野

はい。「なんとかなった・・・!」と思いました(笑)。
でも、今度は別のところで大きな問題が起きました。
さっき「『3Dランド』からネタをもらって、
今作に移植した」という話をしましたけど・・・。

岩田

ブロックをかぶると、
コインがたくさん出るという話ですね。

天野

はい。
「ゴールドブロック」と呼んでいるんですけど、
それをつくったときに手塚さんに見せたら、
すごくうれしがってもらえて、
そのまま宮本さんに見せたんです。
そしたら・・・「僕はきらいや」と言われてしまって。

岩田

宮本さんが「僕はきらいや」と言われたんですか?

手塚

はい(笑)。
なんでコインが出るのか、
すごく気になったらしいんです。

岩田

ああ、宮本さんは
インダストリアルデザイナー出身ですから、
構造が気になったんですね。
どういう仕組みかよくわからないものは、
生理的に受け付けないみたいです。
一例としては、『New スーパーマリオ Wii』の
「プロペラマリオ」の話
なんか、そうでしたよね。

天野

そうなんです。
よくわからないまま、
よくわからないものをかぶって、
よくわからないままコインが出る、
というのが嫌いだと。

岩田

「僕はきらいや」と言われて、
手塚さんはどう思ったんですか?

手塚

まあ・・・いろいろ・・・。

岩田

「ちゃぶ台に手をかけてはる」
くらいに思っていたんですか?

手塚

そうですね。

岩田

(笑)

手塚

あ、でも「やばいな」とか思ってました。

天野

そのときはまだ、ちゃぶ台も
きちんと並べていない状態だったのに、
いちばんでかいちゃぶ台を
ドーンとひっくり返されたようでしたから。

岩田

その、ひっくり返されたちゃぶ台は、
どうやってかたづけたんですか?

天野

宮本さんと手塚さんの2人で
ディスカッションしてもらったんです。
そうしたら、宮本さんは
「唐突にブロックをかぶらされて、
 何をしていいのかわからないというところが、
 すごくイヤだ」
ということだったんです。

岩田

確かに、そもそも顔がふさがれる自体、
不快なことですしね。

天野

もともとブロックというのは、
叩くとコインがいっぱい出てくるものですよね。
で、僕としては、
「あのアクションと組み合わせればいいんじゃないか」
と思ったんです。
つまり、コインが出てくるブロックを
何回も叩き続けていると、
その勢いでブロックをかぶってしまうと・・・。

石川

ブロックを叩き続けてること自体が
「コインが欲しい!」
という意思表示になりますしね。

天野

だから「コイン欲しい、コイン欲しい」と
何度もブロックを叩き続けた結果、
すっぽりブロックをかぶってしまった・・・
ということにしてみたんです。

岩田

あー、なるほど。
なんか必然性があるような気がします(笑)。
気がするだけですけど。

天野

それを宮本さんに口頭で説明しました。
そうしたら、
「ああ、それだったらええんちゃうか」と、
意外にあっさり、ご了承いただけました(笑)。

岩田

そのとき、宮本さんのなかで、
キレイにつながったんでしょうね。
でもまぁ、もうみんなが認めていますけど、
そもそも、ブロックを叩いたら、
なぜコインが出てくるのかは、
よくわからないんですけど(笑)。

一同

(笑)