社長が訊く
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社長が訊く『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』

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社長が訊く『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』

サウンド 篇

目次

5. 「初めて遊ぶ人がうらやましい」

岩田

横田さんが音楽をつくるとき、
“ゼルダらしさ”については
どのようなことを考えていますか?

横田

“ゼルダらしさ”・・・ですか。

岩田

やっぱり、横田さんのなかで
「これははずせない」という部分があるんでしょう?

横田

・・・すごく抽象的な言い方をすると、
燃えるシーンには燃える曲を、という感じでしょうか。
これ、ちょっと違うかなあ・・・。

岩田

遊んでいる自分が共感する曲づくりということですか?

横田

すごく大きな敵との戦いの曲は、
自分がやってても、すごく興奮するような音楽にして・・・。
あと、『ゼルダ』の音楽には
ヒロイズムがすごくあると思っています。
『マリオ』と同じようにお姫様を救う物語なんですけど、
『ゼルダ』の場合は、自分はかっこいいヒーローで、
命をかけて救いにいく感じが、より強くて・・・。
なので、魂が揺さぶられるような音楽、
自分のハートが熱く刺激される音楽になるように、
要所要所では、そこを大事にしてつくったんですけど・・・
近藤さん、そこはどうなんですか?

近藤

僕が、『ゼルダ』の曲づくりで
最も大切にしているのは、
場面とか情景を表した“空気感”なんです。
いまの横田さんの話の流れでいうと、
『ゼルダ』の主人公であるリンクは自分の分身で、
『マリオ』は画面のなかにいるマリオを操作するという・・・。

岩田

ああ、近藤さんにとっては
マリオは自分のコントローラで動かすものだと。

近藤

ええ。で、リンクは自分自身で、
ゲームのなかに入って戦っている感覚があるんです。

横田

なるほど。

岩田

じゃあ、近藤さんの脳のなかでは
緑の服を着ているわけですね(笑)。

近藤

そうです。緑の帽子をかぶって(笑)、
そういう気持ちで曲をつくってます。

岩田

リンクがかっこよく敵を倒せば、
「おれはなんてかっこいいんだ」と思い、
難しい謎を解けたら、
「おれはなんて頭がいいんだ」と思いながら・・・。

横田

だから、音楽がリンク目線なんですね。

近藤

そうですね。

岩田

では最後の質問をします。
世の中には、『時のオカリナ』をご存知の方もいれば、
『時のオカリナ』をまったく知らない方もいますよね。
それぞれの人たちに対して、今回の『時のオカリナ 3D』は
横田さんはどのようにアピールしますか?

横田

自分は完全にファン目線なんです。

岩田

はい、愛がありますからね(笑)。

横田

なので、初めて体験する人には
オススメの言葉を言うのは、とても難しいんですけど、
ひとことで言うと・・・
「ゲームでしか味わえない感動がある」と。

岩田

N64版のときのキャッチコピーですね。

横田

はい。今回は3DSの立体の映像で、
さらに深い感動を味わっていただきたいと思います。

岩田

横田さんのようなファンの方に対しては?

横田

今回はリメイクですけど、
「これこそがおれが求めていた『時のオカリナ』だ」
というものに仕上がっていると思います。
N64版が出たときにたくさん遊んで、
さらにバーチャルコンソールで遊び倒していただいた方でも、
とくに今回の裏ゼルダ(※13)はミラーモードになっていて、
敵の攻撃力も2倍になって
すごく手ごたえのあるゲームになっていますので、
ぜひそこまで遊び倒していただきたいなと思います。

※13
裏ゼルダ=『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』には、ダンジョンや謎解きの内容が本編と異なる「裏ゼルダ」が収録されており、今作の裏ゼルダの世界は、フィールドやダンジョンなどの本編の世界を左右反転させた「ミラーモード」になっている。

岩田

近藤さんは?

近藤

僕はN64版をつくっていたので、今回の3DS版を見ると
「つるつるした感じだなあ」と感じるんです。

岩田

「つるつる」というのはどういうことですか?

近藤

N64版はざらざらした印象なんです。

岩田

3DS版はキレイに磨かれてる感じなんですか。

近藤

はい。つるつる光ってるみたいな。
それは画面がキレイになっただけでなく、
お店のなかを覗いても、商品が増えて、
豪華になっていたり、人も増えていたりしますし、
それを見ているだけで楽しいんです。

岩田

だから、ゲームの本筋は変わらないけど、
じつはいろんなところに手が入っているんですね。

近藤

そうです。なので、N64版を知っている人には
どこがどう変わったのか、違いを楽しんでほしいと思います。
で、初めてプレイする人に対しては、
立体で楽しんでこそ『ゼルダ』だと思うんです。
なので、ニンテンドー3DSを買った人は
「これこそ立体のゲームだ」というのを、
ぜひ今回の『ゼルダ』で堪能していただきたいと思います。

横田

いまの近藤さんの話を聞いて思い出したんですけど、
さんざん『時のオカリナ』をやりこんだ自分でも、
全シーンを立体で見たくなっちゃったんです。
「ああ、こんなところまでキレイになってる」
「あんなところもキレイになってる」と
自分自身もいちいち感動しながら遊べましたし、
N64版を遊んだ人も、そんな楽しみ方をしていただきたいですね。

岩田

ありがとうございました。
いま、おふたりの話を訊いていて、
とくに横田さんにはファン目線を強く感じたんですけど、
わたしはN64の『時のオカリナ』を知らない人が、
ちょっと、うらやましくもあるんですよ。
だって、まったくあの世界を知らないところから、
生まれて初めて遊べちゃうんでしょう。
しかも立体で。

横田

ああ、それはうらやましいですよね。

岩田

だから、「自分が見たことのない人になれるものなら、
ぜひそうなりたい」という気持ちもあったりするんです。
なので、『ゼルダ』を知らないと
この世界には入れないんじゃないかとか、
そういうことは思わないでほしいんです。
なぜならば、『時のオカリナ』というのは、
N64時代に、それまで3Dのゲームを遊んだことのなかった人に、
3Dゲームの遊び方を示したわけですから。
横田さんが、たとえばオートジャンプに感動し、
Z注目にも感動したように(笑)。

横田

そのとおりです。

岩田

もちろん、知ってる人が
「あそこが変わってる。ここもキレイになった」
というのを楽しんでいただくのも、
ぜひお願いしたいことなんですが、
わたしは遊んだことのない人にこそ、
遊んでほしいゲームになったと思います。
 
これが十数年前にデザインされたゲームだとは、
たぶん感じないでしょうからね。