社長が訊く
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社長が訊く『スティールダイバー』

社長が訊く『スティールダイバー』

目次

5. 回転イスで遊ぶ。人対人で遊ぶ。

岩田

それでは2つめのモードの
「潜望鏡モード」についてお訊きします。
どうしてこのモードをつくることにしたんですか?

杉山

もっと間口を広げて、みんながかんたんに
楽しめるゲームにしたい、ということで、
「潜望鏡モード」をつくりました。

宮本

昔、デパートの屋上にあったアーケードの、
魚雷戦ゲームみたいな感じの遊びなんです。

杉山

上画面には、潜望鏡を覗いた画面が映っていて、
それをぐるぐる回しながら、敵艦を発見し、
魚雷を発射して撃沈するゲームです。

岩田

今村さん、この「潜望鏡モード」は
DSのパッケージソフトで出すことになってから
考えたアイデアなんですよね?

今村

はい。

岩田

どのようなキッカケで、
このモードが生まれたんですか?

今村

やっぱり潜水艦というと、
潜望鏡のゲームをまず想像しますよね。
なので、「潜望鏡モード」はスタッフみんなが
もともとイメージしていたゲームだったんです。
そこで、試しにつくってみようということになり、
僕とジャイルズさんで、3日くらいかけて
「潜望鏡モード」のプロトタイプをつくってみたんです。

岩田

情開時代からそうだったのを覚えてますけど、
そういうときのジャイルズさんの仕事は
ものすごく早いんですよね。

今村

そう、早いんです。

岩田

もともとイメージだけだったものを、
ササッとプログラムして、すぐに見せてくれるので、
それがすごくありがたかったりするんですよね。

ジャイルズ

やっぱり、実際につくってみるのが
いちばんわかりやすいですからね。
すぐにみんなの反応も見られますし。

岩田

それってまさに、
情報開発本部のつくり方のような感じがします。
手ごたえを見て、厚みをつけていくところが。

今村

なので今回も、すぐに杉山さんに見てもらったんです。
そしたら「これはいい」ということになりまして。

杉山

そこで、しっかり磨き込んでもらったんですけど、
DSからニンテンドー3DSにハードが替わることで、
「ジャイロセンサー」(※12)が使えるようになりましたので、
それにぜひ対応させようと。

※12
ジャイロセンサー=物の角度や回転速度を検出し、姿勢制御などに利用される計測器のこと。ちなみにジャイロ(gyro)は「輪」や「回転」の意味。

ジャイルズ

あれ、「ギミックっぽいかな」と
僕は最初、思ったんですけど、
実際にプレイするとすごく気持ちがいいんですね。

宮本

くるくる回して見る潜望鏡と
とても相性がいいですからね。

杉山

なので回転イスに座って
くるくる回りながら遊んでいただきたいんです。
それに、誰でもすぐに楽しめるモードになりましたので。
このソフトを持ってる人は、
身の回りの人に遊んでもらってほしいですね。

今村

ですよね。

岩田

それで3つめの「海戦モード」ですが、
これは先ほども言ったように、
宮本さんのリベンジのモードですよね。

宮本

そうです。

岩田

で、今回の「海戦モード」は
かんたんに言うと、どんなゲームなんですか?

宮本

昔、ボードゲームでありましたよね、
「撃沈ゲーム」とか呼ばれていて、
空母とかちっちゃい駆逐艦とかを、
相手に見えないように並べていって・・・。

岩田

で、敵艦の位置を予想しながら、
大砲の弾に見立てたピンを、1個ずつ交互に立てていって、
命中すると沈没させられるゲームですね。

宮本

ええ。それと同じようなゲームが
『風のタクト』(※13)のなかにも入っていましたけど、
あれを、もっとモダンな感じにしたのが、
今回の「海戦モード」なんです。

※13
『風のタクト』=『ゼルダの伝説 風のタクト』。ゲームキューブ用ソフトとして、2002年12月に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。「サルバトーレの戦艦撃沈ゲーム」がタウラ島で遊ぶことができた。

今村

あの「撃沈ゲーム」は、
山勘で大砲を撃つようなところがありましたけど、
今回の「海戦モード」では、
チェスのように交互にユニットを動かしながら、
お互いのユニットを探し合うんです。
ただ、相手のユニットを直接見ることができないので、
たとえばソナー(※14)を使ってサーチすると
敵艦隊の位置はわかるんですけど、
わかるのは場所だけで、それが駆逐艦なのか、
それとも輸送船なのかはわからないんです。
しかも、ソナーを使うと、その瞬間、
自分の位置も相手に知られてしまうんです。

※14
ソナー=水中音波を使って水上船舶や潜水艦、水中の物体を捜索、探知、測距する装置のこと。

宮本

だから、ソナーを使うとリスクが生じるんです。
ただ、移動できる距離は決まっているので、
見つかっても敵はすぐには来ないんですけど、
「きっと近くまで来てるはずや」という・・・。

今村

敵の姿が見えないだけに
すごくドキドキするんです。
しかも、見つかったほうからすると、
それが大事な輸送船だった場合は、
次のターンで逃がそうとするじゃないですか、ふつう。

宮本

で、見つけたほうも、「きっと逃げてるはずや」と。
ところが実際は、逃げてなかったりとか、
逃がしたとしても、それが輸送船なのかどうかは、
わからないんです。

岩田

おとりかもしれないんですね。

宮本

そうなんです。

今村

なので、対戦相手の顔色を見ながら
「いまのはおとりを逃がしたよね」
「うーん、それはどうかな?」みたいに、
かけひきをするのがとても面白いんです。

ジャイルズ

ポーカーフェイスでね(笑)。

杉山

相手の裏のよみ合いが本当に楽しいモードなんです。
実際、DSのパッケージを開発しているときに、
今村さんとふたりで、かなり遊びこみながらつくりましたし、
そのときもすごく盛り上がったんです。
この「海戦モード」は
対コンピューターでも遊べるようになっていますけど、
やっぱり対コンピューター戦では
絶対に再現できない面白さが、人対人にあるんです。
1本のソフトがあれば
ダウンロードプレイができますので、
ぜひ、人対人の対戦を楽しんでいただきたいですね。

岩田

人対人で、相手の顔色を見ながら
だまし合いを楽しんでください、ということですね。

杉山

はい。

岩田

ちなみに、もともとDS用に開発されていた
今回の『スティールダイバー』が
3DS用に切り替わったのは、
どのようなタイミングだったんですか?
宮本さんは前回の「社長が訊く」で、
「3DSになったら、すごく華が出る」と言ってましたけど。

宮本

3DSのことは、実はずーっと黙ってたんです(笑)。
だいぶ仕上がった状態になるまで。

岩田

宮本さん、あえて黙ってたんですか(笑)。

宮本

はい(笑)。
「これはどう見ても3DS向きよね」とは思ったんですけど、
開発の途中でDSから3DSに変えると、
内容が中途半端になってしまうと思ったんです。
なので、DS版がだいぶ仕上がってから、
「これを3DSにしよう」と言いました。

今村

その話を聞いたときはもう、
デバッグの予定を組んでいて、
開発もほぼ終わっていたんです・・・。

岩田

宮本さんが突然、言ったんですか?

宮本

そうです。計画的に突然、言いました。

岩田

(ジャイルズさんに向かって)すみませんねえ。

ジャイルズ

いえいえ(笑)。

今村

ジャイルズさんに言ったのは僕なんですけど(笑)。

宮本

そう。僕は後ろのほうで・・・
(操り人形を操作する仕草をして)こうしただけで(笑)。

一同

(笑)