社長が訊く
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社長が訊く『スティールダイバー』

社長が訊く『スティールダイバー』

目次

6. 「量ではなく深さを」

岩田

今村さん、DSから3DSに替わって、
どんな手ごたえを感じましたか?

今村

実は最初、立体にぜんぜん見えなかったんです。

ジャイルズ

そう・・・もうどうしようもなくって。

岩田

いろいろな試行錯誤の結果、
あんなふうに見えるようになったんですか。

今村

そうなんです。僕らも最初は、
いきなりポンと立体に見えるだろうと思ってたんです。
ところがいざやってみると、
「・・・見えない」と。

ジャイルズ

ぜんぜん奥行きが見えなかったんです。
なんとなく3Dっぽいだけで。

今村

そもそも僕らは、3DSのソフト開発の
先頭を切ってつくっていたグループでしたので、
あの当時はまだ、十分な開発キットがなかったんです。

岩田

なるほど。

ジャイルズ

で、いろいろと試していたら、
ある日突然、ポンと飛び出してきて。

今村

あれは本当に感動しましたね。

ジャイルズ

うん。あれは本当にすごかった・・・。
3Dが見られるようになったのは、
プレゼンテーションの前の日くらいで、
もしそれができなかったら、
たぶん・・・終わってたかも・・・?

岩田

あははは(笑)。

今村

いや、本当にそうだったんですよ。

ジャイルズ

ですよね。

岩田

でも、先頭を切ってつくっていたとはいえ、
最終的には、ただ奥行きがあるだけでなく、
海上から注ぐ光の感じとかも含めて、
とてもいい感じになりましたよね。

宮本

最初は泡がリアルじゃなかったりして、
「もっと本物っぽく」と、いろいろ足していって・・・。

杉山

まるで“水槽”みたいな絵になりましたから。

今村

だから、その意味でも
3DSに替えて本当によかったと思います。
ただ、宮本さんから「これを3DSにしたい」というのを
もっと早く言ってもらえれば、
なおさら良かったんですけどね!(笑)

宮本

いや、だから、それは・・・はい(笑)。

一同

(笑)

岩田

それでは最後に、
ひとことずつ、メッセージをいただきましょう。

杉山

あのう、初めての人には
とっつきにくいゲームかもしれないですけど・・・。

岩田

うわぁ、プロデューサーがすごいこと言いますね(笑)。

杉山

いや、あの、それは・・・
「世界観的には」という意味で(笑)。

岩田

なので、ゲーム的には
とっつきにくいわけではないんですね。

杉山

はい。もちろんハードルを低くしましたし。
ただ、ある程度のハードルはやっぱりあって、
でも、それを乗り越えたとき、
すごく楽しく感じてもらえると思います。
で、本当に大きな潜水艦を、
自分の思うように動かせるようになると、
自分が悦に浸れる世界が待っていますので、
ぜひ、そういうところまで深く遊んでいただきたいですね。

今村

僕は言いたいことはいろいろあるんですけど、
とくに「潜水艦モード」で、
上から爆雷が落ちてきて、それを避けようとすると、
やっぱり動きが遅いので、もどかしいと感じるんですが・・・。

岩田

潜水艦は速く動けませんから。

今村

そういう感覚は、潜水艦の映画とかを見ても
同じようにあると思うんです。
敵からの攻撃を受けて、素早く避けられないと、
やっぱりもどかしいと感じたりするんです。
ただ、実はそれがいちばんリアルなんですよね。
「面舵いっぱーい」とか言って、攻撃を避けようとしても、
爆雷をドーンと食らっちゃう、
あの感じがすごく出せていると思います。
それに、爆雷が命中して水がバーッと漏れてきたりとか、
そういった表現にもこだわりましたので。
ですから、爆雷を、間一髪で避けたときの快感を
感じられるゲームになりましたので、
ぜひ楽しんでいただきたいと思います。

ジャイルズ

僕は杉山さんと同じで、
最初に乗り越えなきゃいけない
ラーニングカーブが高いゲームなんですけど、
うまくなるとその分、ものすごく楽しくなると思います。

岩田

ジャンプすべきハードルは高いんだけど、
それを乗り越えたらすごく気持ちがいいよ、
ということですね。

ジャイルズ

はい。ぜひ、みんなに頑張っていただいて、
大きな潜水艦を操縦する楽しさを味わってほしいです。

宮本

僕が言いたいのは、たとえばクルマでいうと、
オートマチックとマニュアルの車があって、
もちろんオートマのほうが運転は楽なんですが、
クルマを運転する楽しさというのは
やっぱりマニュアル車のほうが味わえると思うんです。
今回の『スティールダイバー』は
まるでクラッチ付きのクルマに乗ったようなところがあって、
「これ、こうしないと動かないんですよ」
「そうなんですか」
「これ、こうしないと止まらないんですよ」
「ああ、そうなんですか」
というふうに覚えていって、
覚えたことが同時にできていくようになるのが
すごく楽しいと思います。

岩田

同時にいくつものことをやって、
それが使いこなせるようになるのが面白い、
ということですね。

宮本

はい。だから、ときには
思わぬ動きをすることもあるんです。
そんなときは、「ええーっ! ウソウソウソ~!」
とか言いながら遊んでほしいんです(笑)。
このゲームに限っては、
操作性がいいとか、悪いとかいう評価は
当たらないと思っていて、
「わーわー」言いながら遊んでもらえれば、
もっと楽しくなると思いますので、
ぜひとも試してみてください。

岩田

実際、極め甲斐のあるゲームになりましたよね。
もともと、情開がつくるものというのは、
そういうゲームが多かったりするんですが、
とくに今回の『スティールダイバー』には
それを強く感じています。
どんどん物量で勝負していくかたちではなく、
遊びの密度で勝負すれば、限られた世界でも、
遊びごたえをこれほど出せるんだ、
というつくりのゲームになりましたね。

宮本

そもそも、密度の濃いものをつくるのは、
豪華で大きなものをつくるくらい、労力がかかるんです。
たとえば舞踏会で着るような、装飾品がたくさん付いた、
きらびやかで豪華なドレスをつくるのと同じくらい、
1個の指輪をつくるのは、大変なんですね。
ちっちゃくても。

岩田

小さいものでも職人さんが大きな労力をかけて
つくるわけですからね。

宮本

なので、今回も
「潜水艦もいっぱいつくったり、
コースもいっぱいつくるのは禁止」みたいに、
そっちのほうには逃げないで、
決まったなかで何度も遊べるようにしました。

今村

実際、僕は何度も宮本さんや杉山さんに、
「もうちょっと足したほうが・・・」と言ったんです。
でも、「いや、それは、いいから」と。

岩田

だから「量ではなく、深さをつくれ」
ということなんですね。
ところで今村さんというと、
『スターフォックス』や『F-ZERO』の
それこそ濃いキャラクターを
ついつい思い浮かべてしまうのですが・・・(笑)。

今村

・・・はい(苦笑)。

岩田

今回、キャラクターを描こうという
誘惑には負けなかったんですか?

今村

はい。それについても、杉山さんからずっと
「ダメ!」って言われてたんです(笑)。

杉山

今村さんは放っておくと、
すぐにキャラクターを描くことに没頭しますから。

一同

(笑)

杉山

それに今回は、ディレクターだし、
デザイナーじゃありませんからね。

今村

それでも、最後の最後で
船長だけは描かせてもらいました(笑)。
もし、続編があるなら
たくさんのキャラクターを登場させて、
もっと色気のあるものにしたいです。

宮本

そのためには、
たくさんの人に遊んでいただかないといけませんね。

今村

はい。なので、
これをお読みのみなさん、ぜひ遊んでください!

岩田

(笑)。
みなさん、本当にお疲れさまでした。

一同

ありがとうございました。