社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

第11回:『BIOHAZARD REVELATIONS』

目次

3. 連続ドラマみたいに

岩田

では、シナリオについても話してもらえますか?

川田

今回、シナリオは非常にボリューミーで
発想豊かなものができたんじゃないかと思っています。

中西

いちばん最初に“連続ドラマ形式”でいこう、
というのは決めていました。
クリフハンガー(※12)って手法があるんですが、
毎回「次どうなるの?」という引きをつくるというのと、
群像をあつかって短めのシーンが次々に変わって、
テンポよく進んでいくというのをやろうとしたんです。

※12
クリフハンガー=作劇手法のひとつ。絶体絶命のシーンであえて物語を中断させて、興味を惹きつける。

岩田

そうすることで、
物語の世界に引っ張り込まれるわけですね。

中西

はい。僕らが「こういうシチュエーションで、
 こういう終わり方にしたい」ってものを12個つくって、
シナリオライターさんにつなげてもらいました。
どうしても尺に合わなくて外したものもありましたけど。
今回、シナリオ制作の期間とゲーム制作期間が
かなり並行していたので、
つくりながら変えていくところが
ステージ側にも影響が大きかったのですが、
堀も非常にすばやい判断で整理していました。

川田

たがいのいいところを認め合ったうえで、
託せる仕事は堀に、まとめるところは中西に任せたりして、
うまく分担できたんじゃないかなと思います。

中西

まあ、けっこう無茶をしているのですが、
「もしかして、(現実に)あるかも?」みたいな
きわどいラインをうまく選ぶことが
できたんじゃないかなと思います。

岩田

というか・・・『バイオハザード』のシナリオって、
最後はかなりあり得ないことになっていますよね?(笑)

一同

(笑)

岩田

でも、あり得そうなことから地続きに
そうーっと持っていくから、
ゲームをプレイしていると、
その世界に引き込まれている状況になるんですよね。

中西

そうです(笑)。
あれはシリーズ初期からやっている“伝統芸”ですから、
今回もその伝統にのっとりました。

たいてい後半になると、
「おもろかったら、まぁええやろ」になりますけどね(笑)。

一同

(笑)

竹中

カプコンはいつもそうですね。
ポイントを面白いところでつないで、
あいだを“へりくつ”で埋めます!

岩田

ははあ・・・。
“へりくつ”と、あえて言い切りますか(笑)。

竹中

はい(笑)。

川田

その中で今回、ホラーを遊ぶうえで
“サウンド”の貢献度がかなり高いと思うんです。
・・・ようやく鈴木に、発言の機会がまわってきました。

鈴木

ありがとうございます(笑)。
僕はE3で最初のPVを見て、
すごいなと思って立候補してチームに入ったんです。
やっぱりグラフィックに負けないように、
効果音も音楽もリッチ感を意識してつくりました。
“昔のホラーに立ち返る”というコンセプトだったので、
音楽もそれにのっとって不気味な感じを出したり、
ときには音楽をなくして効果音だけにしたりもしました。

川田

音楽の方向性は、わりと初期から決めていたよね?

鈴木

そうですね。
中西から“海外の連続ドラマ感”というのを聞いて、
音楽もキャッチーさを感じられるテーマ音楽をつくりました。
最初に入るフラッシュバックシーンとか、アイキャッチとかに、
お決まりのテーマ音楽を入れるように演出しています。

川田

そのテーマ音楽が
リベレーションズ」っていう曲なんですが、
テーマとして頭に残ることを意識して、
どのトレーラーにもこの曲を入れています。

岩田

ああ、とても映画的ですね。

鈴木

はい。それで・・・
これは僕の先入観なんですけど、
舞台が海だったので、海とサスペンスといえば・・・
ピアノなんです。僕は。

一同

(笑)

中西

なんで、そこにつながるの?!(笑)

鈴木

最初にデモを見たときに、
何となくピアノが浮かんだんです!(笑)
で、ピアノやオーケストラの楽器収録もやって、
よりリッチ感を出すようにしています。

川田

1回収録が終わって、
「もういいかな?」と思ってたんですけど、
「川田さん、足りないんで追加収録させてくれませんか?!」って、
目をちょっと赤くはらしながら言うんですよ(笑)。
それぐらい情熱をかけて、音づくりをやっていました。

鈴木

2回目の収録では、オーケストラに加えて
合唱とかバイオリンのソロとかを録って、
限界までチャレンジしました。
それからSEやボイスもすごくリッチです。

川田

そう。今回、シリーズ初の日本語ボイス収録を行いました。
それで、より海外ドラマ感が増したんじゃないかなと思います。

中西

「海外ドラマっぽさを出したい」という
意図につながるのですが、
英語音声だけだと、英語がわからない人は
字幕を消せなくなってしまうので、
全部ボイスを入れることにしました。

竹中

なので、日本語だけでなく、
フィグス(※13)も詰め込んでいます。

※13
フィグス=FIGS。フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語の頭文字をとったもの。本作『BIOHAZARD REVELATIONS』には、英語、日本語のほかに、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語の吹き替えボイスが収録されている。

中西

ホラーゲームは、ほかのジャンルと比べても
サウンドの重要性が高いですよね。
ゲームや絵と同等に、サウンドに力を入れないと
その気になってもらえない。
実際、音を消すだけで、だいぶ怖くなくなるんですよ。
社内で1回、何人か音なしでテストプレイしてみたら、
「ぜんぜん怖くない!」みたいな感想を書かれまして、
以降、「イベントに出展するときは絶対ヘッドフォンを!」と
徹底しています。

鈴木

ニンテンドー3DSの
サラウンドモードとの相性がすごくいいんです。
効果音が緻密なので、ヘッドフォンをつけてやると、
まるでその空間に包まれているかのような感覚になります。
だから暗いところで3Dボリュームを最大にしながら、
ヘッドフォンをつけてやるのがいちばんおすすめです(笑)。

川田

ちゃんとどこを歩いているのか、
想像つくような音づくりになっているよね。

鈴木

はい。『バイオハザード』シリーズって
昔から足音にすごくこだわっていますので、
スクロール班とかとも緻密な打ち合わせをして、
地面の材質に合わせて足音を決めていきました。

岩田

現場の人が考えて自分で動く、いいチームですね。

チームワークがよかったですね。
みんなアイコンタクトで仕事ができていました。

川田

短い期間でどうベストをつくすのか、
各々で考えて動けたことが、今回の結果に
つながったんじゃないかなと思います。