社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

第11回:『BIOHAZARD REVELATIONS』

目次

5. “怖さ”と“没入感”

岩田

今回、『バイオハザード』をつくるうえで
欠かせなかったポイントはどこになりますか?

中西

やっぱり、イベントなどでお客さんに
かなり触ってもらっていたので、
そこからのフィードバックが随分役に立ちました。
そこは大きなポイントだったと思います。

岩田

でも、お客さんのコメントはすごくありがたい一方で、
迷ってしまう悩ましい部分もあると思うんですが、
そこはどうでしたか?

中西

そうですね・・・でも、先ほど堀から
“お化け屋敷”って言葉が出ましたけど、
お客さんに触ってもらう意味は、まさにそこだと思うんです。
というのも、今回開発中に“お化け屋敷プロデューサー”の
五味弘文(※14)さんという方の本を読んだんですが、
お化け屋敷でも、実際のお客さんの
反応をチェックしながら調整していくらしいんです。
それは『バイオハザード』をつくるときとまったく同じで、
プレイしてる人の反応を見ながら、
「ここの敵がでてくるタイミングをもう0.5秒遅らせよう」
とか、何度も調整していくんです。

※14
五味弘文さん=日本のお化け屋敷プロデューサー。

岩田

じゃあ実際に触ってもらっている反応を
生で見られるところに、
ものすごく価値があるんですね。

中西

そうなんです。
ホラーをつくっていると麻痺していって、
怖さがわかんなくなるんですよ。
理屈としては“これで怖いはず”というように構成するんですが、
そこはあくまで理屈なので、
その結果を確かめるためのだいじな機会なんです。

岩田

そこでお客さんがちゃんとおどろいてくれると、
安心できるし、手ごたえも感じますしね。

中西

ええ。だから逆に
「え、そこそんなに怖い?」って思うこともあって、
社内でもけっこうテストをやるんですけど、
手に汗びっしょりかきながらやってるのを見て、
「お前、めっちゃビビリやなー!」って思います(笑)。
でも“怖さ”って、人間の感情の中でも
難しいと思うんですよね。
『バイオハザード』はどちらかといえば、
お化け屋敷のようなおどろかせ方なんですが、
同じものを見ても怖がる人と怖がらない人って、
けっこうわかれますし。

岩田

たしかに怖さは
笑いより個人差が大きい気がします。
中には虚勢を張って怖くないフリをする人から、
ものすごく怖がる人まで、いろんなパターンがあるので、
とても悩むと思います。

中西

はい。精神的なものですごく怖がる人もいれば、
直接おどろかすことでびっくりする人もいるし、
スプラッターなものを喜ぶ人もいるし・・・。
そういう意味では笑いに比べて、
ホラーはまだまだ研究の余地があるなぁと思います。

鈴木

音楽の演出でも、
あえて明るい曲を暗いシーンで流して、
ギャップで怖がらせることもしています。

岩田

ふだん、バランスをとっているぶん、
突然ギャップがあると
人間の感情が不安定になりますからね。
今回、実際にできあがった手ごたえとして、
ホラーゲームが携帯型になるとどう変わりましたか?

竹中

“笑い”はみんなのものですけど、
“ホラー”は1対1のものだと僕は思うんです。
だから、ちっちゃい画面を覗き込む
携帯型の“没入感”が、ホラーとすごく相性がいいと思います。

鈴木

裸眼で3Dを見られることもすごくいいですよね。
気を紛らわせずに集中できます。

川田

探検しているような気分が強くなりますね。
たとえば「洞穴の中ってどうなってるのかな?」
みたいな奥へ奥へと潜っていく感じは3DSならではです。
そういう意味では、“船の中”という限定した舞台が、
非常にマッチしています。

中西

最初、E3後に「ホラーでいく」と決めた要因も、
携帯型で、かつ3Dという臨場感ですよね。
世界がそこにあって没入していく部分が、
「廊下の角の先に何かいそう」というところの、
「角の先」をリアルに感じさせられる。
“船”という閉塞感ある舞台にしたのも、
そこが活きると思ったからです。

川田

でも船の中だけだと
どうしても変化に乏しくさびしくなるので、
雪山とか海岸とか、バリエーションもつくりました。

中西

はい。“連続ドラマ”をイメージしていたのと、
携帯型は比較的、短いスパンの遊び方をするので、
舞台のバリエーションを増やすことで
コントラストをつくりたかったんです。
開放的なところから久々に船へ戻ってきたときに
「うわー、またここか・・・」
みたいな気持ちにさせたいなぁ、と。

岩田

そのつくりもドラマっぽいですね。

中西

はい。手ごたえとしてはうまくいったかなと思ってます。

川田

ドラマ構成なので時間軸は一定じゃないんです。
じつはこれこそ、『バイオハザード』では初なんじゃないかな。

中西

ああ、そうですね。
シナリオ側からも、プレイヤーに不安感を持たせるために、
海外ドラマ風のサスペンス要素を入れたかったんです。
「え、これどういうこと? どうなっちゃうの?」って
煙にまくような・・・。

鈴木

あと、僕は“持ち運べる本格バイオ”っていうところも
すごく魅力的だと思っています。

中西

え? でも、サウンド担当としては、
家でヘッドフォンで聴きながら
遊んでもらったほうがよりいいんでしょ?

鈴木

あ、そうか。両方楽しめるということで(笑)。

一同

(笑)

僕はちょっと違う切り口から言わせてもらいますと、
2画面なので、下画面をタッチするときに
一瞬、目を離すお客さんが多いと思うんです。
あの一瞬の間ができるのが、プレイしていると
わりとホラーとリンクしてくると思います。

岩田

ああー、なるほど。

一瞬目を離すことに
すごくためらいを感じると思います。
敵にやられちゃいますし、
目を離してる間に何か出てくるし。
そういう部分はホラーとして成立しているかなと思います。

岩田

じつは怖さがより引き立つ構造なんですね。
もちろん、部屋で没入するのもひとつの遊び方ですが、
携帯型は遊ぶTPOの自由度を変える存在なので、
いままでと遊ばれ方が変わる気がします。
みなさん、そこについてはいかがですか?

川田

たとえばスリープしたら、いったん停止になりますよね。
ホラーとしてはあまり任意でゲームを止めたくないのですが、
携帯してゲームをするうえで必要だと判断しました。
クリフハンガー方式のようなシナリオ構成も、
自分がいまどういう経過をたどってきているかを
確認できるようなつくりになっていますので、
いままでの『バイオハザード』に比べて、
遊びやすくなっていると思いますよ。

中西

なので、逆に本編はそれで割り切って、
でもやっぱり携帯型だから持ち寄って遊びたいよね、
ということで誕生したのが「RAID MODE」なんです。