社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

第22回:『エクストルーパーズ』

目次

5. 自分のスタイルで楽しめる

岩田

「VRミッション」のお話が出たところで、
その中でプレイできる
協力、対戦プレイについてお訊きしたいんですけど、
1人プレイとはそれぞれ駆け引きの構造などが
それぞれちがうクセを持つはずなので、
ひとつの中にぜんぶ詰め込むのは
けっこう大変だったんじゃないですか?

小嶋

たしかに、いろいろぜいたくをしています。
シングルプレイと協力、対戦を
いかに消化していくかは、
けっこう悩みどころではありました。

岩田

「システムをわければいい」だけの
ことではありませんからね。

安保

そうです。
それぞれを融合させるために、
いろいろ考えた結果が「VRミッション」なんです。
「ストーリーミッション」とは別に
仮想空間での訓練ミッションをつくって、
「そこの中でみんな一緒に遊べますよ」という。
プレイヤーがブレンという固有のキャラクターなので、
協力プレイのとき、別のキャラを操作するというのが
ちょっと違和感があったんですが、
仮想空間ということでしばりを取っ払って、
仲間のキャラクターも自分で操作できるものにして・・・。

小嶋

とはいえ制作期間もかぎられていたので、
対戦まで盛り込めるかどうかは
最後までわからない部分もあったんですが、
何とか、シングルプレイと協力、対戦という
3つの要素をすべて盛り込むことができました。

岩田

そうやってしっかり入れ込めたのは、
どうしてだと思いますか?

小嶋

客観的に見て思うのは、
協力プレイの基礎としてつくっていたシステムが、
想像以上にしっかりできていたからですね。
本来、協力と対戦は相反するところがあるんですが、
両方に応用できるものになっていたんです。

岩田

アクション部分の駆け引きの
基本の筋がよかった、ということですか?

安保

もともと立ち上げの当初から、
「対戦自体、やりたい」というのはあったので、
実験は事前にしてあったんですね。
武器だったり、キャラクターだったりと、
わりと対戦で遊べるものを
けっこうつくりこんで、テストもしていたんです。

岩田

なるほど。
そういう後から活きた要素がいくつもあるのは
『エクストルーパーズ』の
開発の特徴とも言えそうですね。
大事にしていることがブレていないので、
最終的にいろいろなことが
よい方向に結びついている気がします。

小嶋

(安保さんを見て)
かなり盛りましたね、最終的に。

安保

シングルプレイで集めた武器は
対戦でもそのまま使えますので、
やりこむモチベーションにもなると思います。

岩田

アクションのテクニック以外でも、
対戦でどんな武器を使うかというところに
また駆け引きが生まれるわけですよね。
チーム内でのテストプレイのときに、
いろんなドラマが生まれているんじゃないですか?

安保

そうなんです。けっこうあるんです。
たとえば「ロケットランチャーが強いぞ」って
みんな使い出すんですけど、
「いや、これからはこっちのほうが強い」って、
それをくつがえす声が必ず出てくるんです。

岩田

「武器は××最強説」とか、
流行みたいなものがあるんですね(笑)。

安保

そうです、でもそこに
「オレはこれしか使わない」とか、
自分のスタイルを確立して極めようとする
人もいたりするんです。

小嶋

本当はテストプレイだから、
いろんな武器を使ってもらわないと
困るんですけど(笑)。

岩田

たしかにそうですね(笑)。

安保

でもそれはそれで、いろんなスタイルで
勝ち抜くことができるということなので、
逆に「うまくいってるなぁ」とも思っていました。

岩田

つくっている人たちが、
つくっているものを楽しそうに
テストプレイするのはすごくいいですね。

安保

やっぱり対戦はとくに盛り上がりますね。
先日竹内が「ちょっと見せてよ」って来たとき、
みんながあまりにも本気で戦うので、
「おまえら! 接待する気はないのか!」って
怒っていました。

一同

(笑)

小嶋

対戦慣れしている人間は、
ちょっと変わった持ちかたをしているので
見た目ですぐわかるんです。
僕はその持ちかたをしている人とは
やりたくありません(笑)。

岩田

ああ、“『エクストルーパーズ』持ち”が
あるわけですね。

安保

ありますね。
もちろん普通に持っても、ちゃんと遊べますけど、
その持ちかたをすると、ジェットを使いこなしながら
攻撃できるという、高等テクニックが使えます。

岩田

そういう「オレ流」みたいなやりかたが生まれるのは
いいゲームの特徴です。

小嶋

でも、マネできないですよ、普通の人は(笑)。

一同

(笑)

岩田

小嶋さんが『エクストルーパーズ』のことを
知らない方に紹介されるとき、
どんなふうに説明をされているんですか?

小嶋

まず「マンガチック爽快アクションです」と言うと、
「どういうこと?」って聞かれますので、
「撃って気持ちよくて、よけてかっこいい」
「ストレス発散できるアクションゲームです」
と答えています。
入り口として“撃つ気持ちよさ”を感じてもらって、
そこからかっこよく極めていける奥深さは
実際にふれて試してもらわないと、
なかなか伝わりにくいところではあるんですが。

岩田

はじめて遊んだときから、
すっとゲームになじめる。
だんだん自分がうまくなってきて、
まわりの人と協力プレイをすると
ひとりではできなかったことがクリアできる。
腕に自信が出てきたら、対戦も楽しめるし、
人によって個性豊かな戦いかたがあるから、
掘れば掘るほど味が出てくる・・・、
みたいな流れになるんですね。

小嶋

そうですね、時間を経ると、
ゲームの味わいが変化していく感じです。

岩田

「1粒で4度も5度もおいしい」構造に
なっているわけですよね、きっと。

一同

(笑)

岩田

マンガデモや物語が魅力的であるとか、
アクション慣れしていない人でも先に進める
親切な設計というのは入り口として大事なんですけど、
そこから先の変わっていくおもしろさは、
ちゃんと伝えたいところですよね。

小嶋

そうですね。
やりこみにしても、敵によって属性の要素があって、
敵を倒して出てくるアイテムによって、
武器の生成と強化ができるようになっています。
そこで自分好みの武器を育てていく戦略を探したり、
シンプルにアクションとしてのおもしろさ以外の部分も
たくさん秘めていますので、
そこは次のステップとして楽しみにしていただければ。

安保

「気持ちいいアクション」というのは
ある意味当たり前の条件ですし、
いまどきの遊びかたのスタイルとしては
じつはそれこそ、いっぱいあると思うんです。
カジュアルというのはあくまでアピールのひとつで、
『エクストルーパーズ』はそこを
いろいろな方面でかなり“盛った”つくりに
なっていると思います。
ぜひ、「そこの部分も注目してもらえれば」
と、思います。