4. エレベータのカゴが盗まれて

岩田

さて、次橋さんが
一度は抵抗した「昇進」のシステムですが
ものすごくショックだったことがあったんです(笑)。
まず、わたしは部長に昇進しまして。

高橋

社長が部長に昇進(笑)。

次橋

おめでとうございます(笑)。

岩田

(笑)。
で、新人はビルの1階からはじまって
エレベータで上がりながら
を受けるようになっていますよね。

鈴木

そこはやっぱり、
昇進の状態がひと目でわかるようにと
ゲームっぽい流れでマップをつくってみたんです。

岩田

そうしたらエレベータのカゴが盗まれてしまって
昇進試験が受けられなくなってしまって(笑)。

高橋

昇進には試練がつきものなんです。

一同

(笑)

岩田

そもそも、エレベータのカゴが盗まれて、
新たにエレベータのカゴを買わないと
昇進試験を受けられないというのは
まったく意味がわからないんですけど(笑)。

鈴木

しかもなぜ、係長が
自腹で会社のエレベータのカゴを買うのか(笑)。

高橋

そもそもなぜ、
昇進試験を受けるためにお金がいるのか(笑)。

岩田

わたしは悔しくて
せっせとお金を貯めてカゴを買って、
部長への昇進試験を受けるまでプレイしました。
そこはけっこう動機付けになっているんですよね。
それに昇進すると、1問解くともらえるご褒美も増えて、
しかも金額の増え方が極端なんですよね。

鈴木

このゲームはお金がすべてですから(笑)。

岩田

お金で買えるものは
かなりつくりこんだんですか?

鈴木

アイテムだけでもかなりの数だと思います。

高橋

マジメだけでなく、
もっとオモロイものはないか、ということで(笑)。

鈴木

開発の終盤になってから
『新しいえいご漬け』(※7)の仕事が終わったメンバーが
続々と集まってきて、
みんなでオモロイことを足すようにしました。

岩田

オモロイことを足す係ですね(笑)。

鈴木

だから、開発の終盤は
かなりオモロイことが増えたと思います。

※7

『新しいえいご漬け』=DSiウェアの英語トレーニングソフト『リズムで鍛える 新しいえいご漬け』。2009年5月に配信がはじまった「やさしい会話編」と、同年6月配信の「ネイティブ会話編」がある。

岩田

北原さん、どんどんオモロイ担当がやってきて、
場を荒らしていくのを見て、どう思いましたか?

北原

やっぱりさすがでした(笑)。
それまでも買えるグッズのネタ出しをしていたんですけど、
ちょっと高級な時計とか、高級な額縁とか、
どうしても堅苦しいものばかりだったんです。

岩田

普通なアイテムだったんですね。

北原

ところが、助っ人の人たちといっしょに考えていくなかで、
自分でもちょっとだけはずれてみようかと。

岩田

背中を押してくれたんですね、
お笑いの世界に(笑)。

鈴木

北原さんはもともと
そういうのが嫌いなタイプじゃないと思うんです。

岩田

だって『バンブラDX』をつくってましたしね。
水を得た魚とまでは言いませんけど。

北原

そこで、はんこをぽんぽん押して
をつくりました。

岩田

ああ、あれ、かなりイジワルですよね。
「部長」と書いてあると思ってはんこを押したら
「剖長」と書いてあったり。

北原

(笑)。
でも、あれをやるとお金も稼げるんです。

鈴木

だから、問題を解かないで、承認のはんこだけ押して、
お金を稼いで昇進していただいてもいいんです。
そういう人生もあるかなあと(笑)。

一同

(笑)

鈴木

ただ、メインの1本道をやっていくのではなくて、
違うアプローチがあるのもまた良いかなと思っています。

岩田

そもそも日経さんの協力で実現したソフトですし、
経済のことがしっかり身につけられるのは
保証されているわけですから、
あとは人を退屈させないための
味付けが必要だったんですね。

鈴木

やっぱり、無色透明ないい子になりすぎないようにと、
そこはすごく意識しながらつくりましたね。

岩田

でも、エレベータのカゴが盗まれたりして、
日経さんは怒ったりされませんでしたか?

高橋

日経さんは実はそういったことを
期待されていたように思っているのですが・・・。

鈴木

開発の終盤の3〜4ヵ月で
オモロイ要素をどんどん入れていったんですけど、
「あ、やっと任天堂にエンジンがかかりましたね」
とおっしゃっていましたから(笑)。