6. 大澤さんのまわりに

岩田

いや、話をうかがっていると、
素直に、いいチームだなと思います(笑)。
ただ、いまのゲームづくりの現状でいうと、
なかなかこれぐらいの規模で、
つまり、中心メンバーが5人という規模では、
ゲームってつくれなくなってるので、
このチームの存在自体がすごく独特で、
非常に興味深いですね。

竹内

やっぱり、独特なんですね(笑)。

岩田

それはそうですね。
だって、ひとりの中心的人物が
なにかを極めていくその背中を見ながら
みんながそれを感じ取ってついていく、
というような構造では、
50人のチームは運営できないですよ。

一同

(笑)

大澤

この体制は・・・・・・ぼくも特殊だと思っていて・・・・・・
岩田さんとの面談のときに、
「このままでいいですか?」って、
何回か確認をしてたんですけど・・・・・・
でも、いいとおっしゃってくださったので、
なんとか、このまま続けられたんですが・・・・・・。

岩田

いや、それはね、こうするのが、
このチームの持ち味が
もっとも効率よく発揮されると思ってるし、
なにより、大澤さんという人の個性が
いちばん活きると思ったんですよ。
あと、その、なんて言うんでしょうね、
そういう、「大澤さんしかできない部分」に、
まわりの人たちが惚れ込んでいるというか、
大澤さんを盛り立てたい、という気持ちが
すごく感じられるチームなので、
このまま行くべきだと思ったんですよね。

大澤

・・・・・・・・・・・・。

竹内

あの、大澤さんは、本当に、
つくるということに対して誠実なんですよ。
語ることばは少ないんですけど、
ゲームの中に出てくるちょっとした表現とか、
プレーヤーに対するやさしさみたいなものが
すごく込められていて、
ふとそういうものに触れると
「すげぇな、こいつ」って思うんですよ。

岩田

ああ、遊んでいると、
そういうものが、ひょいっと出てきますよね。

竹内

そうなんです。
本当にちょっとしたことなんですけど、
やさしかったり、遊び心を感じられたり。

岩田

ほかの人が気づかないこともあるでしょうね。
竹内さんが知っている、
あんまり知られていない例ってありますか?

竹内

ええと、そうですね、知られていないというか、
ゲーム自体には入ってないんで
絶対にお客さんは知りようのないことですけど、
発売前のソフトを事前にチェックする方だけの
絵を一枚わざわざ入れたりするんですよ。

岩田

へーーー。

竹内

チェックしている人だけが見られるんです。
なんていうか、そういう思いやりのあることを
ひとりで黙ってやっちゃうんです。

大澤

・・・・・・・・・・・・。

岩田

ほかに、なんか、この際ですから、
大澤さんらしさを物語るような
エピソードはありませんか?

竹内

たくさんあるんですけど・・・・・・。
たとえば『メイド イン ワリオ』のときですが、
ふたりでデモをつくることになって、
ぼくがキャラクターの絵を描いて、
全体の絵コンテを描いてデータを渡すんですが、
違うものになってあがってくるんです。
でも、そっちのほうがおもしろいんですよ(笑)。
もう、活き活きと動いていて、うなりましたね。

岩田

オレの絵コンテを勝手に変えやがって、
とは思わずに。

竹内

ないです、ないです、ぜんぜん思わないです。
「変えやがって!」と思ったら、
たぶんいっしょにいないと思う(笑)。

岩田

そうだね(笑)。

そういうのはサウンドでもありますよ。
大澤さんにキャラクターの声とか
効果音を頼まれたときに、
ついでに発注にないものも
いくつか余計につくっておくんです。
で、つくりながら、
「この『咳き込んだときの音』は、
きっとこういうところで使うんだろうな」
って想像するんですけど、
できあがったものを見ると、
まったく予想していないところ、
それでいて、最大限にその音のよさを
活かすような使い方をしてくれてたりして。
「あー、ここかぁ!」と驚かされます。

大澤

・・・・・・・・・・・・。

岩田

正岡さんは、大澤さんらしさを、
どういうところに感じましたか?

正岡

まず同じプログラマーとして、速さに驚きますね。
「こういう機能が欲しいんですけど」って言うと
あっという間に組み込んでくれるんです。
あとは、丁寧さですね。
ひとつひとつのゲームに練習シーンがあるんですが、
それがすごく丁寧なんですよ。

岩田

あーー、それはいつも感じますね。

正岡

ユーザーに対する心遣いとか、
そのあたりに大澤さんの人柄が
表れるのかなと思うんですけど。

岩田

そうですね。
たぶん、大澤さん自身がプレイするんだったら
一発でできそうなことを、
「できない人はどこでつまづくか?」
というのを一所懸命考えて
つくり込んでいるという気がするんです。
関さんは、いかがですか?

あの、大澤さんって、
アニメーションをつくるのがすごくうまいんです。
ぼくもアニメーションはつくるんですけど、
それまで自分がつくっていたものって、
「なめらかさ」とか「リアルさ」とか、
そういうことを重要視してたんですけど、
大澤さんが「こういうふうにして」っていうときに
つくって見せてくれるアニメって、
絵というか、アニメ自体がすごく気持ちいいんです。
プログラムやアイデアも、もちろんすごいんですが、
「どうしたら気持ちよく感じてもらえるか」
というようなところにこだわっているのが
すごいと思いますね。

岩田

なるほど、なるほど。
大澤さんがドットを
打ったりすることもあるんですか。

大澤

・・・・・・ほんの少しだけ。
自分で描いたとしても、ほとんどは
竹内さんや関くんに描き直してもらいます。

岩田

でも原型は作ったりするんだ。

大澤

・・・・・・たまに作ったりします。

岩田

テキストは、全部、大澤さんですよね?

大澤

そうですね・・・・・・ほとんど書いてます。

なんでもできるんで(笑)。

岩田

マルチですねー。

竹内

しゃべって意思を伝えること以外は
なんでも(笑)。

一同

(笑)

岩田

じゃあ、みなさん、
できあがった『リズム天国ゴールド』で、
いちばん気にいっているところを
ひとつずつ紹介してください。
じゃ、関さんからお願いします。

気にいっているところ・・・・・・。
ええと、やっぱり「はじく」ところですね。
ゲーム全体にかかわる入力なんですけど、
「はじく」ときの、独特のタメの感じ、
「はじいた」ときの快感がすごく気に入ってます。
また、その「はじく」アクションが
いろんな表現に使われているのも好きです。

正岡

ぼくが気に入ってるのは、
シンプルなところですね。
ぼくは基本的に音楽的な素養はないので、
無理に凝ったことはせず、
単純に「叩く」だけとか、
ひたすら「はじく」だけとか、
そういうシンプルな要素を意識してつくったんです。
ただ、構造はシンプルでも、
そこにつんく♂さんの音楽が乗ったり、
大澤さんにアレンジしてもらうことによって、
気持ちいいものに仕上がっていると思います。
だから、シンプルな要素が、
組み合わせとか配置によって
おもしろくなっている。
そのあたりがオススメしたいポイントです。

岩田

米さん、お願いします。

はい。正岡くんも言ってたんですけど、
とにかくルールがシンプルで、敷居が低いから、
誰でもすぐに遊べるだろうなというところ。
あとは、やっぱり誰しも生活の中で
リズム感が必要なものってあると思うんですよ。
たとえば、お母さんが包丁で
トントントントンって野菜を切ったりとか(笑)。
そういう場面に、ゲームで鍛えた
ちょっとしたリズム感が
活かせることもあると思うんで
そのあたりも楽しんでもらいたいですね。
幅広い人たちが遊べるゲームだと思いますので
日頃ゲームをやらない人にも遊んでもらいたいです。

岩田

竹内さん。

竹内

そうですね、やっぱり、
実際に触っていただかないと
伝わらない要素もたくさんあるので、
まずは、ぜひ、触ってもらいたいですね。
ぼくなんかもいまだに驚くことがあるんですが、
遊んでいて、ちっちゃい発見や驚きが
たくさんあるゲームなんです。
そういうちっちゃいお楽しみが詰まってますので、
ぜひ、体験してもらいたいです。
うん。そんな感じです!

岩田

大澤さん・・・・・・に聞く前に、
私が自分で気にいっているところを
先に言っておきますね。
私が気に入っているところのひとつは、
このゲームの基本って、
自分でしっかりとリズムがとれてさえいれば、
だいたいすんなりクリアーできるはずなんです。
ところが、ゲームの中には、
そのリズムキープをジャマするために、
あの手、この手が用意されている。
わざと視界をさえぎってみたり、
カメラの画角が急に変化したり・・・・・・。
そういうことに、あっさりと引っかかって
リズムを崩してしまう自分がいて、
その、崩される自分がすごく愉快なんです(笑)。
つまり、つくり手の思うつぼにハマってるわけで、
それは遊びながらおもしろいなぁと思ってます。
それと、もうひとつは、音が自分の中に残ること。
遊んだあと、しばらく音楽を口ずさんだり、
頭の中でピンポンのラリーが
カコンカコン続いてたり(笑)。
あるいは頭の中で、リズムにのりながら
まんじゅうを食べ続けてたり(笑)。
ええと、社長業をやりながら、そういうものが
頭の中に居座り続けてるのって、
けっこう問題なのかもしれないなと。

一同

(笑)

岩田

そんなところが私の好きなところですね。
あと、とにかくこのゲームで遊んでるときって、
私は自然と頬が緩んじゃうんですよ(笑)。
それもこのゲームの大きな魅力だと思うなぁ。
すいません、とりとめがなくて。
大澤さん、うまく締めてください。

大澤

・・・・・・『リズム天国』で好きなところ。

岩田

はい、お願いします。

大澤

・・・・・・もともと、自分は音楽が好きで。
とくに、リズムの部分が好きで。
あと・・・・・・ゲームも好きで。
そんな自分が、おもしろいと思うゲーム、
それが『リズム天国』なんですが・・・・・・
なにより好きなのは・・・・・・
自分がおもしろいと思うことに、
ほかのみんなも同調してくれて、
いっしょにつくってくれたこと・・・・・・。
そういうところが・・・・・・好きです。

岩田

あ、なるほど(笑)。

大澤

お客さんに対するメッセージじゃなくて、
個人的なコメント・・・・・・ですけど。

岩田

だけど、それは、わかります。
そもそも大澤さんという人がいなきゃ
このゲームはできていないんです。
そして、つんく♂さんと出会わなければ、
やっぱり世に出なかったと思います。
そして、この仲間が集まらなければ、
できなかったでしょう。
あえていえば、こういう独特のチーム編成で
開発を進めることを会社がOKしなければ
やっぱりここまでこれなかったと思います。
だから、このゲームって不思議な
出会いの組み合わせによって生まれたもので。

大澤

そうですね・・・・・・偶然が重なって
できたものですね・・・・・・本当に。

岩田

その偶然の結果できたものが、
たくさんの人たちの手に渡るとうれしいですね。
願わくば、何百万人の人たちの頭の中で
あの音楽が鳴り止まないようにしたい、と思います。

大澤

(笑)

岩田

そんなところですかね・・・・・・。
あと、訊き忘れたことは・・・・・・。
あ、そうだ、大澤さんにひとつ、質問です。
大澤さんにとって、竹内さんってどんな人ですか?

大澤

え。

竹内

わ(笑)。

おお(笑)。

大澤

・・・・・・・・・・・・うーん。

竹内

こ、怖いな(笑)。

岩田

どんな人、ですか?

大澤

・・・・・・・・・・・・いなくなったら、困る。

一同

(爆笑)

大澤

精神面でも・・・・・・仕事面でも・・・・・・
いなくなったら・・・・・・困る(笑)。

岩田

すごいよくわかるわ(笑)。

大澤

こんな答えで・・・・・・いいですか(笑)?

岩田

十分です。
じゃ、米さんってどんな人ですか?

大澤

すごく・・・・・・優しいんです。
いろいろ察してくれて・・・・・・はげましてくれて。
ぼくの元気がないときに、メールで、
・・・・・・子猫の写真とかを送ってくれる。

一同

(爆笑)

岩田

そ、それで元気をくれるわけね(笑)。

大澤

かわいい子猫の写真に
助けてもらってます(笑)。

朝、大澤さんの姿を見てて、
ああ、今日はだいぶん元気ないなと思ったときに
なごんでくださいという意味で、
子猫メールを送ったりしてます。

竹内

そんなことしてるんだ(笑)。

たまに。

大澤

・・・・・・たまに。

岩田

会社のメールを
そんなことに使わないように(笑)。

大澤

・・・・・・・・・・・・本当にたまに。

岩田

はい、どうもありがとうございました。

一同

ありがとうございました!