株主・投資家向け情報

2013年10月31日(木) 第2四半期決算説明会
質疑応答
Q 4

 新興市場の展開について伺いたい。当面は欧米市場が最優先地域だと思うが、莫大な市場潜在性が期待できるようなニューマーケットでの中間層に向けた展開について、今どう考えているか教えてほしい。欧米で2DSなどを販売しているが、他地域での発売があるのかどうか、教えてほしい。

A 4

岩田:

 任天堂の現在のビジネスは日米欧と豪州のマーケットが中心になっていますが、新興市場でどうするのかは、いわゆるインタラクティブエンターテイメントをご提案する会社として、「中期的には非常に重要な課題だ」と思っています。一方で、ハードの製造原価は今までに比べて高くなりがちで、かつ、世界中に、これは新興国も含めて、スマートデバイスというものが場合によっては家庭用ゲーム機よりも普及しているという状況がある中で、今までと同じアプローチ、すなわち「『先進国で販売したものを少し安くして新興国で販売する』という考え方だけで、大きな市場が開拓できるのか」というようなことはいろいろ考えています。これについては、今日はお話しする準備をしてきていませんが、経営方針説明会を第3四半期の決算説明会と同時に開催するつもりですので、来年の1月の末になると思いますが、その際には、「任天堂は新興市場に対してどういうアプローチをするのか」について当社なりの考えを、近い未来のことだけではなく、中期的にお話ししたいと思っています。

Q 5

 コミットメントについて伺いたい。コミットメントという表現は、マスコミや投資家が使う材料になってしまっていて、任天堂にとって何のメリットがあるのかがよく分からない。岩田さんはこのコミットメントについてどうお考えになっているのかを教えてほしい。また、Wii Uのサードパーティーサポートについて、欧米のサードパーティータイトルを見ていると、ダウンロードコンテンツがWii U向けにだけ無いということが起こっていたり、Wii U向けにタイトルを出してもらえないという状況になっている。他社さんはサードパーティーソフトのサポートに数百億円費やすというような話をされているわけだが、任天堂としてもこういう資金的なアプローチはあり得るのか。

A 5

岩田:

 コミットメントというのは「目標達成に向けて最善の努力をして必ず達成したいという意思をもっています」という意味で申し上げました。そのことが「辞める、辞めない」という報道になってしまった以上は、言葉の使い方として適切でなかったかもしれません。

 また、私の責任は「任天堂の長期的な企業価値の最大化にある」と思っています。このように考えていますが、一方で、現時点で、「もう当期の業績予想の達成が不可能になった」と申し上げているわけではありません。先ほども申し上げましたように、私たちのゲームビジネスというのは、「年末商戦がうまくいくか、いかないか」で通期業績は非常に大きく左右されます。最も強気なシナリオと最も弱気なシナリオを両方書いて計算すれば、ものすごく大きな幅が出ます。これは私たちのビジネスの宿命で、「もっと安定するべきだ」とおっしゃられても、つくったものを世の中に問うてお客様にご評価いただかないと結果は分からないですし、ましてやお客様同士の中で起こる相互作用によって発生する価値の変化、これは具体的に言いますと、「お客様同士がやり取りをしながら社会的に話題にしていただけることによってヒットする」というのは、私たちの力の及ばないところになります。私たちは最善の質の娯楽をお客様にご提案して、お客様に話題にしていただけるように最大限努力していますが、その結果には、どうしても幅が出てくる場合があります。そのような意味で、今は業績予想の変更をする時期ではないと考えてこのようにお話ししています。

 それから、「ソフトメーカーさんとの関係をどのように考えるか」についてですが、「自社で一定のソフトラインアップを作り得る、任天堂のようなソフト開発リソースがある会社が考えること」と、「そうでない会社さんが考えること」は違って当然ではないかと思います。前社長の山内が最近亡くなりまして、改めて私は「山内から何を教わったか」ということをつくづく考えるのですが、「娯楽では、よそと同じことをするのが一番いかん」ということを教えてくれたのを非常に強くかみしめています。「他社さんが何々しているから、任天堂も何々する」という思考は、任天堂が最も避けたいと思っている思考です。ソフトメーカーさんとの協力関係を強化することについて、もちろん私は否定的ではありませんが、その方法論が他社さんと同じでは、結局値引き合戦であったり、お金の出し合いであったり、単純な価格競争的なアプローチになってしまい、結果的に際限なくそれが続いていくと思いますので、私たちはそこから一線を画して、その上でソフトメーカーさんと協力し合える関係をつくっていきたいと思います。

Q 6

 デジタルビジネスに関してもう少し教えてほしい。結構売上高が伸びていて驚くところもあったが、中身がパッケージソフトのダウンロード版が多いという印象を持っている。来期以降、中身を見たときに、どういう構成に変わっていくというイメージを現時点で持っているかを教えてほしい。それに関して、例えば御社がこれまで出してきた過去の売れたタイトルがかなりアセットとしてたくさんあると思うが、過去のタイトル、アセットの活用というところも、どのように考えているか教えてほしい。例えば最近だと、スクエニさんが『ドラクエ』の過去のソフトをスマートデバイス向けに出すと発表したが、その点に関して、どのような考えを持っているか。

A 6

岩田:

 プレゼンテーションの中でお話ししましたが、今期のダウンロード売上114億円の中でパッケージソフトのダウンロード版の販売が大体半分ぐらいで、残りがそれ以外のデジタルビジネス、すなわち、デジタル専売のソフトであったり、ダウンロードコンテンツであったりします。逆に言いますと、(パッケージソフトのダウンロード版と、ダウンロード専用のソフト売上の)両方が伸びたのでこのような売上になったということだと思います。一方で、これから特に化ける可能性があるのはパッケージソフトのダウンロード販売以上に、新しい販売方法をとるものだと思います。ただ、私たちは新しい提案をする際は常に「これで化けさせたい」と思っていますが、こればかりは「いつ本当に大化けがくるか」は分かりませんので、「どのぐらい経つと割合がどうなっていく」ということについて、今日具体的な数字を申し上げることは難しいかと思います。

 「これまでのアセット(ソフト資産)をもっと活用できないのか」ということについて、二つの側面があると思います。一つは既に「バーチャルコンソール」という形でやっている、過去のプラットフォーム用のソフトウェアを私たちの別のプラットフォーム上で遊べるというものです。例えば、これはWiiから始まった仕組みですが、昔のファミコンやスーパーファミコンのソフトが新しいプラットフォーム上で遊べるようになりました。これは、今、Wii U やニンテンドー3DSでも展開していますが、まだまだ私たちのアセットを展開し切れていないと思いますので、これをもっと充実させたいと思います。デジタルではお客様へのいろいろな提案の仕方を柔軟にできるわけですから、そういうことについていろいろ考えることは当然将来の課題だと思います。もう一つは、今おっしゃった「スマートデバイス向けに展開してはどうか」ということになるのですが、任天堂の考え方として、「スマートデバイス上に私たちのコンテンツを出すことよりも、私たちのコンテンツは任天堂がご提案するプラットフォームの価値のために使う方が全体としてバランスが良い」と考えていますので、現時点で「私たちのコンテンツをスマートデバイスに出す」という予定はしていません。


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