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株主・投資家向け情報

2015年6月26日(金)第75期 定時株主総会 質疑応答
質疑応答
Q 7

新ハードのNXについて、ゲームファンとしては、Wii Uとの住み分けや、Wii Uのゲームが今後もずっと出続けるのかどうかが非常に心配だが、どうなるのか教えてほしい。

A 7

岩田:

 先ほど申しあげたとおり、NXについて今日具体的なお話をすることはできません。新しく私たちがどんなことを考えているかをここで全部洗いざらいお話ししてしまいますと、説得力はあるかもしれませんが、他社さんがいろいろな対抗策を打ち出したり、その中で面白いと思うものを取り込んだり、あるいはお客様がそれを驚きとして感じていただけなくなったりといった可能性がございます。当然ながら、そうしたことは会社全体の利益に反し、最終的には株主の皆様の利益も損ねてしまいますので、ご理解いただきたいと思います。

 「Wii Uはどうなるのか、あるいはニンテンドー3DSはどうなるのか」というご懸念に関しましては、NXというのは新しいプラットフォームですから、ゼロから普及台数を積み上げていきますが、NXの発売時にはある程度まとまった数のニンテンドー3DSやWii Uハードが世の中に存在しています。ですから、ソフトウェアのビジネスという観点で考えますと、NXが出たからといってすぐにニンテンドー3DSやWii Uのソフトを出さないようにすると、大変効率が悪くなります。そのため、将来に向けてNXの準備をしながらどうやってWii Uやニンテンドー3DS向けのソフトをつくり続けていくかということを、社内のチーム、社外で一緒にソフトをつくっているセカンドパーティーさん、そして外部のソフトメーカーさんといろいろ相談をしながら準備をしていますので、少なくとも今お話しいただいたようなご心配がすぐに起こってしまうことはないと思います。私たちもWii Uに関しては、「せっかく買っていただいたお客様にできる限りご満足いただこう」ということを会社の中で優先して考えていますので、これからも努力していきたいと思います。

Q 8

スマートデバイス向けのゲームアプリの販売方式はどうなるのか。ワンショット(売り切り型)の課金をするのか、あるいはダウンロードは無料でアイテム課金のようなことで収益を上げるのか。また、ターゲットとする年齢層はどこか。

A 8

岩田:

 スマートフォンあるいはタブレットといったスマートデバイスの世界中の普及台数が非常に多いということや、決して(大ヒットしているタイトルの)数が多いわけではないのですが、(スマートデバイス向けのゲームアプリは)大ヒットしたときの収益性が非常に高いということを証明された会社さんが複数あるため、ゲーム業界で注目されています。

 一方で、任天堂がスマートデバイス向けに有名なキャラクターやゲームシリーズの世界観を使って何かを出せばすぐに成功できるというような甘いものではありません。今は競争が非常に厳しくなっており、その中でどうやって存在感を出していくのかが問われている状況だと思います。

 ご質問にあった課金方式について申しあげますと、(スマートデバイス向けのゲームアプリには)「売り切り型」そして「アイテム課金型」と呼ばれるものがあります。「アイテム課金型」については、世の中では「Free to Play」という言葉が一般的に使われています。これは「タダで遊べる」という意味ですが、「Free to Play」という言葉は、「ゲームというものに価値を感じていただき、その価値をなるべく高く維持したい」と考えている当社としてはあまりよい言葉ではないと思い、「始めるのはタダ」という意味で「Free to Start」と呼ぶようにしています。スマートデバイス向けの課金では、「売り切り型」のものは実はあまりうまくいっていません。これは、スマートデバイス向けアプリはあまりにも競争相手が多いために過当競争が起こってしまっており、みなさんが値下げ競争をされた結果、ゲーム専用機向けソフトに比べて非常に安価に売られているためです。「キャンペーンで9割引」といったものをスマートデバイスのショップでご覧になったことがある方もいらっしゃると思います。確かに(ソフトは)デジタル商品ですから、固定費や輸送費がかかるわけでもないので、売れないよりは(安価でも)売れた方がよいのですが、ソフトの価値というのは一度下がると元に戻らなくなってしまいます。したがって、ソフトの価値を大事にしたい当社としては、値段を安くすることには限界があると考えています。その値段で世の中のスマートデバイス向けのほかのアプリと比べられることを考えますと、もちろんゲームの種類にもよりますから一概には申しあげられませんが、販売方式を「売り切り型」だけに限ることはするべきではないと思っています。

 先ほど申しあげた「Free to Start」というのは、始めるときはタダなのですが、「これ以上遊ぶときはこれだけ払ってください」とか「ゲームを有利に進めるにはこのアイテムを買ってください」といった仕組みです。極端な例では、非常にレアなアイテムが手に入るとお客様が心理的にエキサイトするようなゲームの設計をして、お客様がついついボタンを押すと決済に進んでしまい、課金をしてしまうというようなものもあり、一部社会問題になっていると認識しています。ちなみに日本では、非常に収益性が高いと言われているスマートデバイス向けアプリでは、「Free to Start」で遊ばれている人たちの中で実際にお金を支払っている人の割合は非常に小さく、その非常に小さい割合の方がものすごくたくさんお金を払っています。それこそゲーム専用機ハードを何台も買えるような金額を払っているお客様もいらっしゃるぐらいだとお聞きしており、それが収益性の高い理由でもあります。一方で、日本以外の地域でビジネスが成立している例を見ますと、必ずしもそのやり方はうまくいっていません。海外で成功されているスマートデバイス向けのゲームアプリでは、むしろ幅広い層の方々からちょっとずつ払っていただくというモデルで成功されているものが多くなっています。このように、狭い範囲から徹底してお金をいただくというスタイルで(ゲームアプリを)つくっていけば、日本ではひょっとしたら高い収益性を実現できるかもしれませんが、それが世界中で受け入れられるとは思っていません。したがって、簡単な道ではないことは承知の上ですが、任天堂がスマートデバイス向けのアプリをつくる以上は、必ずしも特定の年代の方だけではなく、任天堂が従来アピールしてきた幅広い年齢層、あるいはゲーム経験が長く上手な方から初心者の方、もちろん性別、そして大変重要な点として文化や国籍や言語も問わず楽しんでいただけるようなものをつくり、世界中でヒットと呼ばれるものをできるだけ早く、複数つくりたいと考えています。

 ご質問にあった「ターゲット層」ということに関して申しあげれば、「幅広い層の方々に受け入れられるものをつくり、幅広い方から広く薄くお金を支払っていただいて、それらが全体として大きな規模で非常に収益性が上がる」というような姿を目指したいと思っています。今のご質問はおそらく「任天堂も少数の人からものすごく集中的にお金をもらう商売にシフトするのではないか、そうなったらブランドは傷つかないか」というご心配もあってのご質問かと思いますが、任天堂なりのあり方を考えてご提案していきたいと思います。

 ちなみに、(第一弾のゲームアプリを展開する)年内から来年にかけて、数多くのゲームアプリを展開することは考えていません。と言いますのは、ゲーム専用機向けソフトというのは、いわば「プロダクト」であり、発売時に一番鮮度が高く世の中にインパクトがあり、だんだんインパクトがなくなっていくのに対して、スマートデバイス向けアプリというのは「サービス」としての側面を持っていて、最初はプレイする人が少ないのですが、人が人を呼ぶことで徐々にお客様が増えていき、あとから収益性が上がっていきます。逆に言いますと、それは発売しても開発が終わらないということです。日々進化し続けないサービスはお客様からすると楽しくありませんので、「時間をかけて少数のものを、先ほど申しあげたような目標に向けて育てていきたい」というのが当社の考え方です。

Q 9

子供が遊んでいるのを見たり聞いたりしていると、「俺がこのヒーローになりたい」、「私がこのヒロインになりたい」という子供が多い。自分がヒーローやヒロインになれるよう、ゲームに登場するキャラクターの顔を自分の顔に置き換えることは可能か。
また、一つ要望だが、私はそれほどゲームをしないが、いろいろな機会になるべく任天堂に関連した商品を買ったり、着たり、持ちたいと思っている。例えば、他社が販売されるTシャツや靴に任天堂のキャラクターを使ってもらってはどうか。

A 9

岩田:

 任天堂がWiiというハードを開発していた頃、かなり終盤になってからMiiという機能を入れました。これはお客様の似顔絵をつくるための仕組みで、具体的にはお客様の顔の輪郭や髪型、目、鼻、口などをいくつかのパーツから選んで、その大きさや間隔、角度を調整することでいろいろな顔がつくれるというもので、福笑いのもっと自由度が高いものと思っていただいたらよいと思います。ご自身やご家族のMiiをつくっていただいて、ゲームの中に登場させることもしており、2006年に発売したWiiでご提案して以降、ニンテンドー3DSにもWii Uにもこの機能はあります。その意味では、プレイヤーの顔、プレイヤー自身をゲームの中に登場させることに関しては、あるレベルまではご要望を満たせているかと思います。一方で、そうしてつくられたプレイヤーは本当にマリオのように見えるかといいますと、マリオのキャラクターの全体の造形とは必ずしも一致しませんので、マリオの姿や形にそのままプレイヤーの似顔絵をあてはめるだけでは必ずしもうまくいかないかもしれません。今のご質問にあるお子様たちの夢を叶えようと思いますと、「Miiというものが将来、もう一段進歩したときにどんなことができるのか」ということを考えなければいけないと思います。

 また、いただいたご要望に関してですが、任天堂のキャラクターやゲームを愛してくださり、「関連の商品があれば手に入れたい」と言っていただけるのは大変ありがたいことだと思います。一方で、「ライセンス商品は多ければ多いほどよいのか」という問題も考えなくてはいけません。短期的には、多くの人の目に触れ、ライセンス収入等も増え、そして「このようなものがあったらいいのに」という夢も叶うのかもしれません。しかし、それで正しくクオリティーコントロール(キャラクターの価値を維持、管理すること)ができるのか考える必要があります。世の中のキャラクタービジネスはそのほとんどが消耗型あるいは消費型であり、生まれては消えを繰り返し、その中で10年、20年、30年と続くキャラクターというのは全体の中でほんの一握りです。任天堂は長期的にキャラクターIP(知的財産)を育てたいと考えており、ゲームのキャラクターや世界観、その中にある設定の魅力というものを長期にわたって高めることを目的にしています。任天堂は「IPを積極活用する」と申しあげていますが、それは単に「たくさんライセンスします」ということではなく、「価値が高まるようなことはこれからどんどん積極的にやります」ということです。「短期的には利益になったとしても、未来に向けて任天堂のIPの価値をただ擦り減らしながらライセンス収入を得るのなら、しないほうがいい」と考えていますので、展開のペースにご満足いただけないかもしれませんが、ご理解いただきたいと思います。

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