Nintendo Switch 2 と同時に発売された『マリオカート ワールド』は、これまでの「マリオカート」シリーズとは異なる新しいスタイルを取り入れたタイトルです。従来は、個別のステージでレースを楽しむ「グランプリモード」が中心でしたが、今作では複数のステージがひとつの“大陸”に配置され、すべてがシームレスにつながっています。この構造により、ステージを連続して走破する「サバイバルモード」など、これまでにない“大陸横断レース”が実現しました。
このプロジェクトで私が担当したのは、ステージ間をつなぐエリアのレベルデザインです。レベルデザインとは、プレイの心地よさを生み出すために、地形設計も含めて遊びの環境全体をデザインする仕事です。私は主に、グランプリモードの「サンダーカップ」や、サバイバルモードの「ハートラリー」「ムーンラリー」などで走行する、クッパキャッスル周辺の火山や城壁、ビッグドーナツと呼ばれる、溶岩の池を囲むドーナツ状のエリアなどの地形を手がけました。
入社前は、プランナーはアイデアを考え、デザイナーやプログラマーに伝える役割だと思っていたため、「モデリングツールを使って地形を作ってほしい」と指示を受けたときは正直驚きました。私は美大出身ではなく、モデリング経験もありません。戸惑いながらも「任されたからにはやり遂げたい」と覚悟を決め、慣れないツールと格闘する日々が始まりました。わからないことは抱え込まず、先輩に相談しながら一つひとつ課題を乗り越えていきました。自分で作った地形で走行テストを何度もおこない、形状や道の視認性、減速地帯やジャンプアクションの配置などを検証しながら、納得のいく仕上がりを目指して、試行錯誤を重ねました。
特に苦労したのは、シームレスな構造ゆえに、プレイヤーがあらゆる方向からエリアに進入できる点です。迷わず進行方向を直感的に認識できるよう、視認性と誘導性を両立させる必要がありました。例えば、ビッグドーナツではロータリー状の地形を採用し、すり鉢状にすることで、どこから進入しても視線が自然と進行方向へ向かうよう工夫しました。
振り返ると、プランナーが地形設計を担当したのは、「地形=遊びのコア」であるという「マリオカート」シリーズの考え方があったからだと実感しています。地形制作はプランナーだけで完結するものではなく、デザイナーやプログラマーと相談し、多くのアドバイスをもらいながら進めていきます。その中でも、プランナーは特に「走行感や遊び心地を決める地形の設計」に責任を持ちます。どこでドリフトするか、どこでジャンプアクションを決めるかといったプレイの選択は、地形と密接に関係しており、こうした要素がプレイ体験に直結しているのです。
さらに、私は火山エリアを使ったレースや、フリーランで遊べるミッションの制作も担当しました。「この地形なら、こんなミッションができそうだな」「この城壁エリアにはレース中にKKというキャラクターを配置してみようかな」など、地形と遊びをセットで考える必要がありました。複合的に遊びを設計するという意味でも、プランナーが地形を手がける意義は大きいと感じています。
このプロジェクトを通じ、私は「実際に手を動かしながらアイデアを考えることの重要性」を学びました。これは、任天堂のものづくりの醍醐味のひとつだと感じています。