私は、開発チームの中で「カットシーン」の制作を担当しています。「カットシーン」とは、ゲームのオープニングやエンディングなど、ストーリーの節目に挿入されるイベントシーンのことで、お客様のプレイ体験を盛り上げ、遊びの目的を伝える役割があります。
私のキャリアは前職でのゲーム内のモーション制作からスタートし、その後カットシーン内のモーション制作にも関わるようになりました。その過程で、画面全体を使った絵作りやカメラワークの奥深さに触れ、演出への興味が高まった結果、カットシーンチーム専任になっていきました。任天堂への転職後は、カットシーンの設計や構築、他セクションとの橋渡し、品質管理など、全体を監修する役割を担っています。
そしてNintendo Switchの『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』にも、カットシーンの演出・監修担当として関わりました。
『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』は、横スクロール型の2Dアクションゲームとして、『New スーパーマリオブラザーズ U』以来約11年ぶりの完全新作です。新たなチャレンジにやりがいを感じつつ、カットシーンを通じてワクワクしていただけるよう、お客様の視点を意識して取り組みました。
カットシーンはゲームプレイの一部であるため、お客様のプレイ体験をスムーズにつなぐことが求められます。本作は、横スクロールのゲームなので、横視点からの「平面カメラ」でゲーム画面が構成されています。この特徴を活かすため、オープニングのカットシーンも同じカメラで制作することにしました。ただし、平面カメラでの絵づくりは奥行きや立体感の表現に制約があるため、独自の演出で見せ方を工夫する必要があります。そうした中で、お客様が最初に目にするカットシーンとして、「ワクワクする」「早く遊びたい」と感じていただけるようなオープニングを目指し、最適な方法を探しながら制作しました。
特に工夫が必要だったのは、クッパが去っていくシーンです。絵コンテでは、空飛ぶ城である「城クッパ」が、マリオたちの頭上を通過する演出でした。しかし、実際に3DCG化するとカメラの特性で遠近感が出ないため、「最強の敵」としての迫力や恐ろしさが十分に伝わりませんでした。
「平面カメラ」でどう演出すればよいのかを考え続けていたある日、ふと帰り道に空を見上げると、飛行機が飛んでいるのが目に入りました。その時、「離れて見るから小さいけれど実際はすごく大きいはず……」と思い、同時に「これだ!」とひらめきました。「城クッパも最初は小さくしておき、通過時に画面いっぱいに大きくすれば迫力が出せる」と考え、早速チームに提案したところ、好感触を得ることができました。
実現に向けて、関係者には「城クッパをどこまで巨大化できるか」「サイズ変更でモーションやシステムに支障が出ないか」といった技術的な相談を行いました。その結果、極端なスケール変更にも対応できるモデルを作ってもらえることになりました。また、サイズだけでなく見た目にも迫力を出す必要があると考え、モーション制作を依頼していた協力会社には、「巨大な物体が上空から迫ってくる臨場感を出すために、城クッパの底部を見せたい」と相談しました。その際は口頭だけでなく、3DCGソフトで仮モーションを制作し、演出意図がより明確に伝わるよう工夫しました。
1つのカットシーンの変更は、モデルやモーションだけでなく、ステージやエフェクトなど多くの要素に影響します。そのため、社内外問わず関係者への事前説明や密な連携を大切にしました。「この改善をすることで、城クッパが画面に迫ってくる迫力を表現でき、アトラクションに乗った時のようなワクワク感を演出できる」と伝えると、皆快く協力してくれました。
こうして目指していたカットシーンが完成し、商品発売後にオープニングシーンを見たお客様の「クッパが大迫力!」という声を耳にしたときは、安堵とともに喜びを感じました。チームでより良いものを目指して試行錯誤を重ねる開発現場は、活気と一体感にあふれています。工夫しながら制約を乗り越え、チーム全員で同じ目標に向かって走り抜けるチームワークが、この仕事の魅力だと感じています。