『マリオカート ワールド』には、ドライバーや景色の写真を撮ることができる「フォトモード」という機能があります。この「フォトモード」は、もともとチームのプログラマーが試作していたもので、私はその試作をベースに仕様をまとめ、UIとシーケンス(画面や操作の流れ)を考えるプランナーとして関わることになりました。
UIでは、「この機能をどんな言葉で表現すればわかりやすいか」「ボタンの位置や順番はどうするか」といった、細かな部分をひたすら考え続けました。いっときは機能を詰め込みすぎて、触るのが難しいモードに見えてしまったこともありましたが、お客様に使ってもらえなかったら本末転倒です。そこで、「わかりやすさ」と「こだわり」のバランスを意識しながら、少しずつ機能を削ったり、足したり、文言をちょこまかと変えたりと、UIデザイナーやプログラマーと相談を重ねながら試行錯誤を繰り返しました。
お客様が「フォトモード」を起動して写真を撮る、一連の流れを設計するうえでは、ゲームのさまざまな場面において「フォトモード」をどう扱うべきかを考える必要があります。事前に検討し尽くしたつもりでも、いざ実装してみると想定していなかった問題が次々と発覚し、頭を抱えることも少なくありません。そのたびに「これはこうします」と責任を持って判断していくのが、プランナーの仕事です。とはいえ、どうすれば良いかを考えるときは、プログラマーもデザイナーも一緒になって知恵を出し合い、試行錯誤します。そんなとき、「手軽に、良い写真が撮れるようにする」という、この機能で大切にしたいことをチーム全体で共通認識として持っておくことが、とても重要でした。
「フォトモード」は開発中、チームの多くのメンバーに触ってもらっていた機能です。まだ仕様が固まっていない段階から、「こんなのが撮れたよ!」「今、ここはこんな見た目になっています!」といった情報共有にも使われていました。
そうしたやりとりを見て、「こんな遊び方ができるんだ」「じゃあ、この機能はこうした方が良いな」と仕様を調整したり、熱心に写真を撮ってくれるメンバーに「どんな機能があったら嬉しいですか?」と聞きに行ったりもしました。
たとえばフォトフレームは、「このフレームなら、こんな写真が撮れるかも」と思ってもらえることが大切です。そのため、チーム内でどのように使われ、遊ばれているかがデザインに大きな影響を与えています。「縦のフレームも欲しい」という声をきっかけに、雑誌風のフレームや「ヨッシーズ」(ゲーム内に登場するファーストフードチェーン店)のパッケージ風のフレームが生まれたこともありました。また、最初はトリッキーに思えたフレームでも、意外と多く使われていたことから採用に至ったケースもあります。つまり「フォトモード」は、担当者だけでなく、チーム全体で育てていったアイデアです。アイデアは、考えることも育てることも、ひとりではできないのだと、改めて実感しました。
結果として「フォトモード」は、スタッフロールの素材や、パッケージ、『Nintendo Today!』などに使用する素材にも活用される機能になりました。発売後も、たくさんのお客様にすてきな写真を撮っていただいています。
マリオカートはレースゲームですから、基本的にはゲームの世界をものすごい速さで通り過ぎていきます。また、明確なストーリーがあるゲームではありません。ですが、ふと「フォトモード」でじっくり眺めてみたときに、気づいて嬉しくなってもらえるよう、いろんな工夫が細部に散りばめられています。「フォトモード」で写真を撮ることで、『マリオカート ワールド』の世界を、レースとはまた違った視点で楽しんでもらえたら、とても嬉しいです。