私は入社以来、『Wii Fit Plus』『マリオカート8 デラックス』『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』をはじめ、さまざまなタイトルのUI/UXデザインに携わってきました。その中で大切にしてきたのは、プレイヤーとしての遊び心を忘れず、UI/UXデザイナーとして「一目で状況が分かる見せ方」と「快適に遊び続けられる設計」を軸にUIを追求する姿勢です。
今回、私がUI/UXデザイナーとして携わった『マリオカート ワールド』では、従来のマリオカートのように「独立したコース」だけではなく、「ひとつながりの広い世界」を自由に走りまわる遊び方が検討されていました。そのため、お客様が広い世界を自然と理解できるUIが必要でした。そこで私は、「世界を表す地図」の制作を担当することになりました。
ゲーム内の要素をそのまま地図に載せると情報量が膨大になります。プレイヤーは「今いる場所」や「次の行き先」をすぐに把握できず、遊びに集中できません。そこで、地図全体を見たときに、まずコースアイコンが目に入り、次に道のつながりが分かり、最後に大地の雰囲気が伝わるよう、目立たせ方の順序を「コース→道→大地」に設定しました。
まずは、地図を見て「このコースに行きたい」と思える見え方を目指しました。私はマリオカートでコースを選ぶ瞬間のワクワクが好きです。その気持ちを損なわないため、地図上でどんなコースかを一目で分かるようにすることを重視しました。しかし、地図上の小さなアイコンにコースの要素をすべて詰め込むには限界がありました。そこで、各コースを手のひらサイズのミニチュアとして捉え、ジオラマとデフォルメを組み合わせたアイコン表現を模索しました。
アートディレクターやコース担当者とも対話を重ね、コースの重要な要素は何かを丁寧に聴き取りました。加えて、何度もコースを走り、印象に残るポイントを観察しながら、描く要素と省く要素を整理していきました。目立たせ方の順序を崩さないよう、道や大地との「明度・彩度・コントラスト・描き込みの密度」のバランス調整を重ね、地図全体の見え方を確かめていきました。
ようやく地図は完成しましたが、この地図を用いてゲーム全体の没入感に貢献できる余地がまだあると考えました。そこで、この地図をゲーム全体のナビゲーションとして機能させ、プレイヤーが「今いる場所」を自然に把握できるよう、ローディング画面やオンライン対戦の投票画面など複数の場面で表示するようにしました。何度も走り直したり、次の遊びへ移ったりするときでも『マリオカート ワールド』の世界で遊んでいる気持ちが途切れないようゲーム全体へも配慮しました。
一般的にUIというとボタンやテキストを思い浮かべがちです。今回、私はUI/UXデザイナーとして培ってきた情報設計とグラフィックの経験を活かし、迷わず遊びに没入できる「ひとつながりの世界地図」をUI/UXとして設計しました。その後、この地図はゲームの世界を示す要素の一つとなり、グッズにも展開されました。お客様が『マリオカート ワールド』を遊んでいないときにも、この地図に触れる機会が生まれ、世界を思い出してもらうきっかけにもなります。こうした体験の広がりを設計で支えられることが、任天堂のUI/UXデザイナーとしてものづくりを続ける大きな原動力になっています。