マリオのゲームだからできること

まったく新しいものを提供したい

ラケット破壊

私は入社してからずっと、外部の開発会社さんと一緒にゲームを作る仕事を続けてきましたが、Nintendo Switchで発売された『マリオテニス エース』では、任天堂側のディレクターを担当しました。このシリーズには、ストイックなスポーツゲームが楽しめるNINTENDO 64路線、そしてスペシャルショットなどが使えるマリオらしいキャラクターゲームのゲームキューブ路線の2つがあって、新作を作るたびにどちらの路線を選ぶかという議論になるのですが、今回はスポーツゲームというよりはアクションゲームとして、マリオのテニスゲームだからこそできる、まったく新しいものを提供することを目指しました。


一般的にテニスゲームというと、青空の下、緑の芝のコートで静かにプレイする、というイメージがありますが、開発会社のキャメロットさんがいちばん最初にトライしたのは、「ナイトコート」のデザインでした。スタジアムの空は真っ暗で、中央にはライトが照らすハードコートがあり、観客席ではたくさんのキャラクターが歓声をあげています。さらに、マリオがドカンから出てきてポーズを決める演出もあって、それを見た私は、『マリオテニス エース』では、エンターテインメント性を追求するんだという意気込みを強く感じることができましたし、その熱意に懸けることにしました。そのときにゲームの方向性が決まったのだと思います。

バランスを取ることも大事

新しいものを提供したいということで、「ねらいうち」という新しいショットも提案してもらいました。これは、プロのテニスプレイヤーが、狭いスペースにピンポイントで打つことがあり、そのかっこいいプレイをゲームでも表現したいと考えたんですね。ただ、そのワンショットで勝敗が決まってしまうとおもしろくありませんし、そもそもこのシリーズの魅力のひとつは、ラリーを続けられることにあります。そこで強い必殺ワザがあるのなら、強い防御ワザも必要だ、ということで考えられたのが、スローモーションでボールを打ち返すことのできる「加速」だったのです。対戦ゲームとして面白くなることも大事にしていましたので、必殺技をただの使った者勝ちにならないように、キャメロットさんと一緒に調整していきました。


さらに、マリオの身体能力ならこんなこともできてよい、ということで、一発逆転をねらって相手のラケットを破壊して試合に勝つこともできるなど、新しいことをいっぱいこのゲームに詰め込みました。テニスだからこんなことをやってはいけないというブレーキをかけるのではなく、テニスの本質的な面白さはしっかり守りつつも、マリオたちが本気でテニスをやったらどうなるの、ということに全力でチャレンジできたタイトルになったように思います。


ワンワン登場

マリオのゲームらしさを出すために、新しいキャラクターとして、「ワンワン」も登場させました。ワンワンは私の提案で実現したのですが、これまでラケットを持つ手がないキャラクターは出していなかったものの、口でラケットをくわえればいいでしょうということで、キャメロットさんの快諾を得ることができました。限られた開発期間であったのにも関わらず、まったく新しいものを提供しようということで、遊びも、見た目も大きく変えましたので、本当に完成するのかとヒヤヒヤしたこともあったのですが、キャメロットさんと一蓮托生で乗り越え、無事に発売の日にたどり着くことができたのは、大きな喜びでした。


社員略歴

山村 知弘企画制作部/2008年 入社
2008年「理工系(ソフトウェア)」入社。ニンテンドー3DS『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』(2015)、『Ever Oasis 精霊とタネビトの蜃気楼』(2017)のほか、ニンテンドー3DS以降のマリオテニスシリーズ、マリオゴルフシリーズなどに携わる。Nintendo Switch『マリオテニス エース』では、任天堂側のディレクターを務める。
職種