遊んでくださる人のことを第一に遊んでくださる人のことを第一に

続編でインクを改良

チーム色の違いをならす

『Splatoon(スプラトゥーン)』は、4対4で地面にインクを塗り合い、塗った面積が多いチームが勝ちというアクションシューティングゲームです。1作目はWii Uで発売しましたが、このゲームで最も重要なマテリアルでもあるインクについて、ステージによっては光りすぎて遊びにくいとか、見た目がのっぺりしていて、インクらしく見えないという反省点が少なからずありました。


その続編をNintendo Switchで開発することになり、私はグラフィックスプログラマーとして、インクを改良する仕事に関わることになりました。ハード性能がアップしたこともあり、まずはインクの視覚的なリアリティを高めようということで、物理ベースシェーディングと呼ばれる、光学的に正しい計算を使った描画手法を『スプラトゥーン2』に取り入れることにしたのです。それにより、見た目にリアルなインクが表現できると考えたんですね。


そこで、まずは試作してみたのですが、「遊びにくい」とか「もっと魅力的に見えるように」という、否定的な意見が寄せられたのです。そもそもインクは盛り上がっているために陰影ができますが、光学的にはその陰の部分のインクは、暗い色になるのが当然なんです。その理屈にそって陰影をつけると、自分のチームと敵のチームのインクの境目が区別しづらくなってしまって、遊びにくくなってしまったのです。

正解のないテーマと向き合う

ならば逆の方向で、ということで、インクの境目を区別しやすくするために、陰影をなくす処理をしてみたのです。ところが立体物にインクを塗ったときに、どこが壁なのか、どこが床なのかがわかりにくくなってしまって、それはそれで遊びづらいものになってしまったんですね。その一方で、デザイナーがインクのキラキラした感じを出したいということで、インクの鏡面反射強度を上げてみたりしたのですが、敵がイカになってインクのなかに潜ったときのしぶきが見えづらいという意見が出てきたのです。インクの調整は、続編の開発がはじまったときからスタートしたのですが、それはまさに正解のないテーマと向き合うようなことだったのです。


そこで、インクの表現で生じた問題で、解決すべき点と優先すべき点を共有するために、他セクションの代表者と何度も話し合いました。そもそも『Splatoon』というゲームの魅力は、何度も繰り返しプレイできるところにあり、長時間遊んでいただくためには、見栄えのするグラフィックにするよりも、遊びやすさを最優先すべきだということになったのです。

どんなライティング環境でも映えるように

何もしていないモノと最終結果の比較

インクの調整は、体験版の配信がはじまった時点でもまだ続いていましたが、インクの存在はゲーム開発において大切なことを気づかせてくれました。もともと私は、学生時代にグラフィックス関係の研究をしていたこともあって、「光学的にはこう表現するべきだ」という理屈に凝り固まっていたのです。でも実際に自分でプレイしてみると、それが間違いであると気づきました。理論に基づいて作ることで、いかにリアルな描写ができようとも、ゲームなんですから、遊びにくくなってしまっては本末転倒です。なので、まずは遊んでくださる人のことを第一に考えて作ることが大事だということをインクが教えてくれたんですね。

社員略歴

上田 和英企画制作部/2013年 入社
2013年「理工系(ソフトウェア)」入社。
グラフィックスプログラマーとして、Nintendo Switch『スプラトゥーン2』(2017年)、Wii U『Splatoon(スプラトゥーン)』(2015年)の開発に関わる。
職種