ゲーム世界に「ありえる」をゲーム世界に「ありえる」を

「エフェクトは接着剤だ」

Nintendo Switch用のソフト『スーパーマリオ オデッセイ』が発売される前に、1本のトレーラー(予告映像)が制作されました。CGで描かれたニューヨークのような街並みが映し出され、マンホールからマリオが飛び出すという映像なのですが、リアルな舞台にマリオというゲームキャラクターを融合させることで驚きをもたらすことこそが、このゲームのアートコンセプトだったのです。私はエフェクトデザイナーとして、このゲームのプロジェクトに関わることになったのですが、自分にとってそのアートコンセプトは、とても大きな課題となりました。

ちなみにエフェクトとは視覚効果のことで、『スーパーマリオ オデッセイ』では、マリオが走ると小さな白い雲のような煙が出ますが、それはエフェクトでつけられた演出です。「エフェクトは接着剤だ」と言う先輩デザイナーもいて、モノとモノが接触するときに発生するものでもあるんです。マリオが帽子を投げて、それが敵に当たった瞬間、命中したということを視覚的に認識させ、手ごたえを感じさせるために、星のようなものがパーンと出ますが、そういった演出をするのがエフェクトの役目なのです。


さて、リアルな世界とマリオ的な表現の融合というアートコンセプトで作られることになった『スーパーマリオ オデッセイ』では、どちら側のエフェクトで表現したらいいのか、というところで悩むことになりました。マリオ的なエフェクトを全編に採用すれば、リアルな背景から浮いてしまいます。かといって、リアルなエフェクトに限定すれば、マリオらしさが薄まってしまいます。そこで、両方の作風のものを作るというやり方で解決することにしたのです。

画面がちからを持つ瞬間に立ち会える

たとえば、大自然に囲まれた滝は、リアルなしぶきを上げるようなエフェクトをつける一方で、マリオのようなキャラクターが何かにぶつかったときは、おなじみのかわいい星が飛び出すという、両方の作風で表現するようにしました。ただし、登場するキャラクターのすべてに、マリオ的なエフェクトをつけるのではなく、リアルなドラゴンから放たれる攻撃にはリアルなエフェクトをつけるようにしました。とはいえ行き当たりばったりにならないよう、「マリオに近いほどデフォルメ、離れるほどリアル」という考え方で、全ステージをチェックしながら、ひとつひとつにエフェクトをつけるような作業をしたのです。

エフェクトデザインは、キャラクターデザインと比べてちょっと地味な印象があるかもしれません。でも、テクノロジーの力を借りることで、ユニークな表現を出せるようになるのが、エフェクトデザインの面白いところです。ただ、新しいテクノロジーを導入したいと思っても、デザイナーひとりでできることではありません。日進月歩のテクノロジーをエフェクトに還元するためには、プログラマーの手を借りることが必要で、今回の『スーパーマリオ オデッセイ』でも、ずいぶん助けてもらいました。

例えばこの、マリオが敵に乗り移るときのバラバラになる効果はプログラマーとの合作で、うまくテクノロジーを生かせた一例だと思います。

この仕事の魅力のひとつは、ある場面にエフェクトをひとつ足すことで、画面がちからを持つ瞬間に立ち会えることです。森の地形があったときに、エフェクトで立ちこめる霧を表現すると、自然の豊かさが一気に溢れだします。それに、たとえば1本の桜の木が描かれた静止画があるとしましょう。その絵単体でもとても美しいのですが、そこに風で散る花びらのエフェクトを入れると、静止画だったものが、時間軸を持つ映像に変化するのです。つまりエフェクトデザインは、「接着剤」の役割だけでなく、「空気」や「時間」までも表現し、ゲーム世界を「ありえる」と感じさせることができる仕事なんです。

社員略歴

池内 隼生

池内 隼生デザイン系/2012年 入社
2012年「デザイン系」入社。
ニンテンドー3DS『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』(2013年)、Wii U『Splatoon(スプラトゥーン)』(2015年)、Nintendo Switch『スーパーマリオ オデッセイ』(2017年)、Nintendo Switch『Nintendo Labo』(2018年)などで、主にエフェクトデザインを担当。プランニングを担当するケースもあった。
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