適切な素材を探し求めて適切な素材を探し求めて

ひと目でわかるようなデザインを

一般的にプロダクトデザインの仕事というと、見た目をかっこよくしたり、おしゃれな感じにしたりするイメージがあると思うのですが、任天堂のプロダクトデザインに求められることはそれだけではありません。任天堂では、それまで世の中になかったものが開発されるケースがたくさんあります。そのような新機軸の商品は、えてして使い方がわかりにくかったりするものですが、だからこそ、今回のプロジェクトではひと目で使い方がわかり、ひと目で使いたくなるようなデザインを求めて、検討を進めました。

リングコンとレッグバンド
変形している様子

『リングフィット アドベンチャー』は、リングコンとレッグバンドを使ってフィットネスができるゲームです。このリングコンの開発に、私はハードウェアのデザイナーとして関わることになりました。

リングコンを考えるうえで重要だった点は「何だろうあれは?」「やってみたい!」と、見ている人に伝えることでした。そのために形状の面白さをどうやって表現するかということを考え続けました。円形のものを左右から押し込んで変形することが、周りから見ても理解しやすいように、リングの直径、太さ、素材、色を変え、いろんな種類の試作を行いました。

握りやすさとわかりやすさ

リングコンは力を込めて使うものなので握りやすさも重要でした。そこで、リング全体を太くして直接リングを握るタイプの試作品を作ってみましたが、手に持って使う商品としては重すぎました。逆に、軽い素材の発泡ウレタンでは、使い込むとぼろぼろになってしまううえに汚れも付着しやすく、任天堂の品質基準を満たすことができませんでした。いろんな太さや素材で試作品を作り、採用できる素材を探し続けました。試作を重ねることで、これまでに扱ったことのない素材の特性を知ることができたことは良い経験となりました。

リングコンの試作品

そうして、最終的にはリングコンの芯の部分に繊維強化プラスチックを採用し、その外側を可能な限り薄くした黒いシリコーン製のチューブで覆い、さらに手触りを良くし、汚れを付きにくくするために、特殊な塗装も行いました。

グリップ取付時の連続写真

また、握りやすく、リングコンのどこを持てばいいのかがわかるように、グリップを取り付けました。このグリップは外して洗うことができるのですが、再び取り付ける時にひと目で位置がわかるように、リングコン本体にも一部に色をつけています。このように、細かい部分にも工夫を重ねました。

布で作られているグリップやレッグバンドでは、市販の布を取り寄せて接着剤まみれになりながら試作を進めていました。慣れない素材との格闘を繰り返したリングコンの開発は、とても難しい経験でしたが、楽しむことができました。普段からコミュニケーションを大事にしながら、課題に対して一丸となって解決案を出し合うなど、プロジェクトチームの雰囲気がすごくよかったこと、また、いままで扱ったことのない素材を使って、ちゃんと形に仕上げていく工程自体がすごくおもしろかったからです。何度も試行錯誤を繰り返しながら最終製品にたどり着く開発という仕事の醍醐味を、今回のプロジェクトではたっぷり味わうことができたように思っています。

社員略歴

末武技術開発部/2003年入社
2003年「デザイン系」入社。
「Newニンテンドー2DS LL」や「Nintendo Switch Proコントローラー」等のデザインを担当。

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