作る楽しさを伝えるために作る楽しさを伝えるために

プログラムのおもしろさが伝わるレッスンを考える

プログラムを組む際、こうしたらこうなるのではないか、という仮説を立てて組んでみると、その動きが自分の想像したものとは違う、ということがあります。その場合、原因が何かを考えて、問題の箇所を修正する、というトライアンドエラーを繰り返すことで、ようやく自分の思い通りに動くようになり、達成感を得ることができます。自分の考えた通りに動くものが作れる、ということはプログラミングの楽しさのひとつですが、プログラムを組んでいき、少しずつ自分の理想の動きに近づけていく過程自体にも、試行錯誤や発見の楽しさがあると私は考えています。

Nintendo Switchの『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』は、プログラミングの経験がないお客様にも、「試行錯誤を通じて思い通りに動くようになる」というプログラミングの楽しさを体験してほしいと考えて、『Nintendo Labo Toy-Con 04: VR Kit(ブイアール キット)』のToy-ConガレージVRという機能を切り出して開発されたソフトです。私はサブディレクターとして、ディレクターといっしょにこのプロジェクトを立ち上げました。そして、プログラミングを教えるレッスンをどのように体験してもらえばいいのか、作る楽しさを感じていただくにはどうしたらいいのか、ということから模索していきました。

開発初期の頃は、Toy-ConガレージVRの画面を上下に分割して、上の4分の3くらいのスペースをプログラムのエリアにし、下のスペースには解説用のテキストを出す形でプロトタイプを作り、プログラミングの経験がない社員にモニターになってもらいました。すると、テキストを読んで、まず内容を解釈してから、プログラムの画面に目線を動かし、触るべき場所を探すということをしなくてはならず、レッスンの内容があまり頭に入ってこないという問題が明らかになりました。

開発初期の試作

ポインターをキャラクターに

画面を分けるのはわかりづらいという結論に至った私たちは、ひとつの画面で、プレイヤーが次に触るべき場所を、自然に目線で追えるようにすることが重要だと考えました。そこで思いついたのが、画面上にポインターのようなものを表示し、プレイヤーが触るべき場所を指示していくという方法です。さらにそのポインターに「ボブ」という名前を付けてキャラクター化することにより、画面を飛び回ることもできれば、動きやセリフで喜怒哀楽も表現でき、プレイヤーにも親近感を持ってもらえるだろうと考えたのです。

ポインター型のキャラクター「ボブ」(画面中の青い丸)がナビをする

ゲーム開発というものは、開発が進んでいくと、後戻りが難しくなるケースも少なくありません。今回のプロジェクトでは、開発初期の段階でモニターをとり、問題点を早期に認識できたことが大きかったように思います。また、そのときの発想の転換がなければ、ポインターをキャラクター化するというアイデアは生まれなかったでしょうし、そもそもゲームのキャラクターとは、さまざまな考えが連なって、役割をもって生まれてくるものだと強く実感しました。

社員略歴

手嶋企画制作部/2013年入社
2013年「理工系(ソフトウェア)」入社。
プログラマーとしていくつかのゲーム開発に携わったのち、Nintendo Switch『Nintendo Labo』シリーズではテキストを担当。その後『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』(2021年)のプロジェクトの立ち上げにサブディレクターとして参加。

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