5. みんなで遊ぶ楽しさを

岩田

コントローラの操作性を徹底的に検証して、
仕様が固まったのは、どのタイミングだったんですか?

辻本

1年前の東京ゲームショウ(※4)の直前です。

岩田

『3(トライ)』は1年前の東京ゲームショウで
初めてプレイアブル出展したんですよね。

※4

1年前の東京ゲームショウ=東京ゲームショウ2008。2008年10月に幕張メッセで開催されたビデオゲームをはじめとするコンピュータエンタテイメントの総合展示会のこと。

藤岡

そうです。
そこで出展用のロムをつくったんですが
「そろそろロムを焼かないと間に合いません」
と言われるような段階になっても、
まだ触っていたくらいでした(笑)。

岩田

そういうこと、ありますよね。
締切がなければ決まらないパターン(笑)。

藤岡

(笑)。
「ここはもうちょっとこうしたい」とか
「もうひと泣きさせてくれ」とか
ギリギリまで悩みながら、
直前まで操作を変えてたんです。

辻本

そもそも操作性に関しては、
東京ゲームショウまであえて発表しない方針だったんですね。
インタビューで聞かれても絶対に答えないようにしようと。
というのも、言葉で何かを伝えるよりも
お客さんたちに実際に触ってもらって
その人たちがどう感じたかを知りたかったからなんです。
それで、いざふたを開けみると、
僕らがいちばん聞きたかった言葉を聞くことができて・・・。

岩田

どんな言葉だったんですか?

辻本

「安心した」と。
みなさん、そうおっしゃってたんです。

岩田

ああ、なるほど。

藤岡

本当にホッとしました。
そのとき、Wiiリモコンでどうやって遊ぶんだろうという
不安も解消できたかなと思いましたし。

岩田

それにしても、東京ゲームショウのときの
お客さんの盛り上がり方はすごかったですよね。

藤岡

恐いくらいでした(笑)。
朝イチとかはもう、カプコンのブースに向かって
大勢のお客さんが走ってくるのが見えましたし。
「ゆっくり歩いてきても遊べるんですよ」と思いながらも、
来てくれるのはすごくうれしかったですね。

岩田

さて、そのように、1年前の東京ゲームショウでは
「いちばん盛り上がった」と多くの方に言っていただいた
『モンスターハンター3(トライ)』ですけど、
名前は知ってるけど、体験したことのないお客さんも
まだまだたくさんいると思うんですね。
そういった未経験のお客さんに対して
今回の『3(トライ)』では
どういった工夫をしたのか訊かせてもらえますか?

辻本

→「闘技場モード」(※5)がそうですね。
このモードでは、二分割の画面で
2人同時に狩りを楽しむことができるようになっています。
ですから、「やり方がわかりません」という人は
知ってる人といっしょにプレイして、
アクションの基本を覚えていただければと。

岩田

まず身近にいる人の手ほどきを受けてから、
オンラインの世界に出て行きましょうということなんですね。

※5

「闘技場モード」=『モンスターハンター』の醍醐味のひとつ、協力プレイが手軽に楽しめる、1人〜2人用のモード。専用のステージで、さまざまなクエストに挑戦することができる。

辻本

その通りです。
そもそも僕らが子どもの頃は
ファミコンの『スーパーマリオ』を
友だちといっしょに遊んだ思い出があるんですよね。
後ろから見ながら
アクションのやり方を学んでいたところもあったと思うんです。

藤岡

ところが最近のゲームは
1台のハードを、1人のプレイヤーが独占するものが多いですし
はじめてしまえば、なかなか一区切りできないタイプのものが
増えてると思うんですね。
そんなとき「あ、楽しそうなゲームをやってるな」と思っても・・・。

岩田

なかなかいっしょに遊べないんですね。

藤岡

はい。
そこで、「このゲーム楽しそう」と感じてもらえたら
すぐに体験できるように画面を二分割にして
コントローラが2つあれば遊べる状態をつくったんです。
ですから、いきなりオンラインにつないでいただく必要はないんです。
まず二分割のオフラインで
友だちや家族といっしょに楽しんでいただいて、
それからオンラインに入っていただければと。

岩田

なるほど。

辻本

そもそも画面分割のゲームは
任天堂さんのタイトルなら
当たり前なんだと思うんです。

岩田

スーパーファミコンの時代から
『マリオカート』などで取り組んできたテーマですからね。

辻本

でも、いままでの『モンスターハンター』シリーズでは
画面分割という発想が出てこなかったんです。
ところが今回、Wiiで出すことになって
はじめて画面分割に挑戦しようということになったんですね。

藤岡

Wiiというハードの特性上、
リビングに置かれてることが多いと考えています。
ですから、家族みんなで楽しめる環境をつくってみようと。

岩田

家庭内モンハン人口の拡大ですね(笑)。

藤岡

やっぱり、身内が身内に宣伝していく効果というのは
大きいなあと思ってまして。

岩田

家のなかは世代を超えて口コミが生まれる
おそらく「唯一の場所」ですよね。

藤岡

はい。
子どもの影響でお母さんがはじめたりとか、
そういうことは携帯機のシリーズでもすごく経験していますし、
今回は二画面にしたことがいちばん、
まだ触ったことのないお客さんを意識した仕組みになってますね。

岩田

どんなふうに普及するか、興味深いですね。

藤岡

自分たちとしても初めての試みですし、
どういう結果が出るのかなと、
すごく楽しみな仕組みですね。

辻本

あと、初めての試みとしては
Wiiリモコンのなかにデータを入れて、
持ち運びするようなこともできるようにしました。

岩田

Wiiリモコンを持って友だちのところに行こうと。

藤岡

せっかくWiiリモコンに対応しましたので(笑)。
で、友だちの家に遊びに行って
二分割でいっしょに狩りを楽しんでいただいて、
そこで遊んだ結果を・・・

岩田

家に持って帰れるんですね。

藤岡

やっぱり友だちの家に行って、
いっしょに遊んでも何も得られなかったら
ちょっと寂しいですよね。
次にもつながっていきませんし。
そこで、コントローラをひとつ持っていけば、
そこで得られた成果を持ち帰れるようにしてみたんです。
それも結果がどう出るんだろうと・・・。

辻本

結果は想像できないんですよね。
ふたを開けてみないと。

藤岡

想像できないんですけど、
まさにWiiならではの
面白い試みだと思ってるんです。
またまたファミコン時代の話になりますけど
自分が子どもの頃、
ゲームで遊ぶために友だちの家に行くのが
すごく楽しかったんですよね。

辻本

ワクワクしましたね。

藤岡

Wiiリモコンが
そのキッカケになればいいなと思っています。