1. 完全に1本別につくった感じ

岩田

今回の『スマブラX』は、ひとり用のモードが
ものすごいことになっているんですけど。

桜井

どうもすみません(笑)!
かなりムチャなことをしました。

岩田

もともと『スマブラ』というゲームは、
どちらかというと対戦ゲームの定番として
遊ばれてきたところがあって、
そのためにひとり用のモードは、
どうしてもメインとして作りきれなかったところが
あると思うんですけど、
今回はかなりのものが入ったなという印象があります。
そこへのこだわりというか、
経緯みたいなものを教えてください。

桜井

やっぱり、さっきも言ったように、
基本的にはこれで最後だと思って開発に臨んだんです。
結果的には、任天堂のキャラクターとか、
よく知られているメジャーなキャラクターたちが、
これだけ一堂に会する機会というのは
もう、そうそうないだろうと。

岩田

まさにそれも、一期一会で。

桜井

そうですね。
そういう機会に恵まれたときに、
この「オールスターのぜいたく」を、
もっともっと楽しめるようにするには
どうすればいいだろうというふうに考えました。
そして、結果的には、 ちからわざを選びました。
簡単にいってしまうと、ひとり用モードだけで
もう1本、別なゲームが入っているようなものなので。
開発の手間的にも、完全に1本別につくった感じです。

岩田

対戦のモードと共通しているのは、
キャラクターのデータと、
基本的なモーションのプログラムぐらいで、
あとは全部、別のものですよね。

桜井

そうですね。
システムごと変えなきゃいけませんでしたから。
キャラクターの動きが共通しているといっても、
走る速度とかは、じつはひとり用モードに
すべて調整し直していたりします。

岩田

まぁ、あえて訊きますけどね。
・・・・なんでこんなことを?

桜井

(笑)。

岩田

(笑)。

桜井

なんていうんでしょう、
『スマブラ』というゲームにおいて、
対戦の楽しさはもういろんなところで
高い評価をいただいていて、
そこだけをどんどん高めていくというのは
当たり前すぎるというか、
変化が少ないと思うんですよね。
いえ、もちろん対戦も進化してますけど。

岩田

対戦のたのしさはすでにあるし、
そこだけに力を注いで開発しても
「今度の『スマブラ』は何が強い」とか、
そんな話にしかならない。

桜井

そうです、そうです。
より尖った方向になってしまうと。
かといって、『スマブラ』の対戦を
システムから変えていこうとか、
今度は3Dバトルにしようとか、
そういうことは望まれてないと思うんですね。

岩田

そうですね。
コントローラを握ったら誰でもすぐに
だいたいの感じが理解できて、
10分経つと初心者も上級者に混ざって
ぎゃあぎゃあ言いながら遊べるというのが
『スマブラ』のいいところですから、
それをなくしては意味がないですよね。

桜井

ええ。そういう意味では対戦の進化を求めるばかりではなく、
ひとり用モードに重点を置いて、
突っ込んでつくり込んでみたかったんです。