3. フィギュアとシール

岩田

『スマブラ』って
出てくるキャラクターが多彩で、
さらにアシストフィギュアとして
登場するキャラクターも多い。
そしてさらに、純粋な「フィギュア」として
登場するキャラクターの数を合わせると
ものすごいことになりますよね。

桜井

やっぱりそれも、『スマブラ』ならではの、
「たくさんのキャラクターが一堂に会する機会」を
いかに楽しむかという発想がもとになっているんです。
あるひとつの世界観に縛られたゲームだったら、
そこに出てくる登場人物だけで終わっちゃうけど、
いろんな世界観が混ざり合ってOKなのは、
『スマブラ』以外だとあまりないので
つい、がんばってしまうんです。

岩田

やっぱり、それも
お客さんのことを考えたうえで。

桜井

そうですね。
やっぱり、ゲームをつくっている人たちって、
そのキャラクターがどのくらい愛されていて、
ゲームとは直接関係のないところで
どれほど求められているかということが
よくわからなくなっていることもあるように思うんですね。
自分も、『星のカービィ』をつくっているときは、
『カービィ』のキャラクターたちが
ゲーム以外のところで受け入れられてるとは
それほど意識していなかったですし。
でも、いろんな機会にファンの人と話すうちに、
やっぱりそのキャラクターが
すごく愛されているということに気づくんです。
そういう人にとっては、たとえ動かなくても、
フィギュアが1個あるだけで、
めちゃめちゃうれしいわけじゃないですか。

岩田

それで、ついついがんばってしまう、と。
基本的にはモデリングだけだとはいえ、
ファンの方にも納得してもらうものを
つくらなくてはいけませんから、
かなりの手間がかかってますよね。

桜井

ええ。でも、『スマブラDX』のときは、
開発がゲームキューブの初期だったこともあって、
フィギュアをつくるにしても、
イチからつくらざるを得なかったんですが、
今回は、それぞれの開発チームから
素材を預からせていただいたのでずいぶん助かりました。
たとえば『ゼルダ』シリーズの『風のタクト』や
『トワイライトプリンセス』などは、
オリジナルで使われたモデルを
そのまま加工してフィギュアにしています。

岩田

本家の、というと変ですが、
純正品のデータをいただいたと。

桜井

純正品です(笑)。
ですから、裏側や後ろから眺める楽しみも
ちょっと意味が変わってきますよね。

岩田

ああ、なるほど、そうですね。
つまり、本家のゲームでは見られなかった、
そのキャラクターの裏側みたいなところが
『スマブラX』だと見られるわけですね。
→フィギュア映像

桜井

もう、好きなだけ見られます。
とはいえ、最新ゲームのキャラクターだけを
フィギュアにすればいいかというと、
当然、そんなことはなくて。

岩田

そうですね。

桜井

古いゲームのキャラクターや、
思い出深いアイテムなんかも
たくさんフィギュアにしました。

岩田

そのために資料や素材を任天堂内から
かき集めたんですよね。
わたしも、いろんな人に資料発掘のお願いをしましたから。

桜井

はい。いろんな方々にお世話になりました。

岩田

新しいゲームからは、
ゲーム内で使われたモデルやデータを。
古いゲームであれば、2Dのイラスト、
あるいはマニュアルやパッケージ、
広報素材として使われたイラストなんかも。

桜井

たくさんお借りしました。
やはり、こういう機会でもないと、
お客さんの目に触れないものも多いですから。
もちろん、ただ素材をもらうだけでなく、
きちんと監修もしていただいて。

岩田

スタッフロールが700人になる秘密のひとつが
こういうところですね。

桜井

はい。

岩田

あと、これは言ってもいいのかな?
今回、「シール」という要素がありますね。
ちょっと簡単に説明してもらえますか。

桜井

はい。ええと、ゲーム中、フィギュアと同じように
「シール」というものを集めることができるんですが、
それは単にコレクションするためのものではなくて、
1枚1枚にパワーアップの内容が決まっていて、
それをフィギュアの台座に貼ることによって、
少しずつキャラクターが強化されていきます。(→企画書表示
パワーアップされたキャラクターは、
『亜空の使者』で使えるという仕様になっています。

岩田

おもしろいのは、シールには大きさがあって、
台座の限られたスペースの中に
どう組み合わせて配置するかという
戦略が必要になってくるんですよね。
→シール映像

桜井

そうです。
やはり、無制限にパワーアップされるだけだと
おもしろみに欠けてしまうので。

岩田

シールによるキャラクターのカスタマイズは
これまでのシリーズにはなかった楽しさですね。

桜井

いままでのフィギュアは
ただ集めるためだけのものでしたからね。
ゲーム本編から派生するものとして
なにか収集要素ができるというのが
これまでのゲームでは
ふつうのことだったと思うんですが、
その収集要素がもう一度ゲーム本編に
返ってくるようにできないかということで
この仕様を考えたんです。

岩田

ちなみに、その「シール」のデザインも
ファンの人ならニヤリとするようなものばかりで。

桜井

はい。いろいろご協力をいただいて集めることが
出来ましたので、ご期待ください。
 
(続きます)