6. 結果発表までドキドキの「コインバトル」

岩田

ちなみに、完成の2週間前に
バトルモードの専用コースをつくれと言われて、
そんなに簡単にできちゃうものなんですか?

一角

実は、最終的にお蔵入りにしていたコースがありまして、
それを復活させようと。

岩田

コインバトルとして使うなら、
お蔵入りしたコースでも
必ずしもダメとは限らないということですか。

一角

そうなんです。
目的が「ステージクリア」だとテンポの悪かったコースでも、
「コインの取り合い」を目的にした場合は、
また違った楽しみ方ができるのではないか、と思ったんです。
そこで、復活させたコースにコインを配置し、
ステージ全体をコインバトル用に再構成しました。

足助

それでコインバトルのコースができたら、
スタッフがワイワイ言いながら遊ぶようになって、
隣のチームから怒られたりしたんです(笑)。

岩田

コインバトルはふつうの多人数プレイと比べて
どんなところが違うんですか。

向尾

そもそも多人数プレイというのは
遊ぶ相手によって、プレイの仕方が違ってくると思うんです。
同じ開発現場でも、一角さんたちのような人が集まると、
たちまちバトルが展開されるんですよね。

一角

僕はコインを取るより、
相手のじゃまをするようなプレイばかり考えていますから(笑)。

向尾

でも、僕の周りのデザインチームでは、
わりとほのぼのとした平和なプレイになる傾向にあって、
「ああ、楽しかったね」と終わることができるんです。
ただ、そんな僕らでも「コインバトル」では、
少し攻撃的になる傾向があるんですね。

岩田

やっぱり「コインバトル」は
勝ち負けがきっちりつくのがいいんでしょうね。

一角

そうですね。
たとえば誰かを奈落に落としても、
負けるときは負けますし。

岩田

ああ、なるほど。
コインの奪い合いをしながらも、
遊んでいる最中は誰が勝っているのかわからず、
最後に結果がわかるのが面白いと言いますよね。

足助

そこはゲームデザインの重要なポイントでした。
最初の頃は、途中経過がわかるようにしていたこともあったんです。
でも、獲得したコインの枚数を表示すると、
大差がついてしまえば、負けている方は途中であきらめてしまうんですね。
ところが、表示を隠すようにすると、
自分が勝っているのか負けているのかわからなくて、
結果を見るまですごくドキドキするんです。

岩田

チャリンチャリン鳴ってるけど、
それは相手がコインを取ってる音かもしれないですし。

足助

遊んでいる本人も
勝っているのか負けているのかわからないんです。
だから、ゴールするまで必死になって遊ぼうとするんですね。
それにちょっと面白いのが、周りで見ている人も
誰が勝っているのかわからないんです、
結果発表の画面が出るまでは。

岩田

だから、みんなでいっしょにドキドキできるんですね。

足助

それがすごくいいなあと思っています。
もう一点、コインバトルに関してですが、
今回、通常と同じゴールを目指すままのコース形状で、
コインバトルができるようになったのもよかったと思っています。
いつものようにゴールを目指しますので、
コインバトルを何度もやっているうちに
本編のほうもいつの間にかうまくなっていたりするんです。

岩田

ああ、なるほど。
コインを狙った軌跡で跳べるようになりますからね。

足助

そうなんです。
基本的にはジャンプでキレイに取れるように
コインは配置されていますので、
それでジャンプを覚えてうまくなっていくんですね。

岩田

なるほど。他に作り手として
「こういう遊び方も面白いですよ」と、
それぞれおすすめしたいことはありますか?
というのも、今回の『NewマリオWii』は
いろんな人たちに、“遊び場”を提供していて、
遊ぶルールはわりとゆるめにしてあるでしょう。
だから「ルールは自分たちで考えて
この遊び場でこう遊ぶと面白いよ」というのがあれば、
ぜひ訊いてみたいのですが。

一角

僕はやっぱり最速プレイです。
ダッシュで走っていって、
1カウントでも速くゴールしようという遊びです。
たとえばワールド1−1は「45カウントで行けたぞ」と言うと、
隣の席から「オレは44カウントで行けたぞ!」
みたいになったりして、それがすごく楽しかったんですね。
ですから、「このコースは○○カウントでクリアしたぞ」
みたいなことを、友だちと競い合ってもらったら、
すごく楽しいと思います。

岩田

向尾さんのオススメは?

向尾

先ほど「おたからムービー」のスーパープレイは
すごいプレイだという話がありましたけど、
なかには試せそうなものもいくつかあるんです。
たとえば、キラーが大量に大砲から出てくるコースがありまして、
→地面に落ちないように、キラーの上を連続ジャンプすると
どんどん点数が加算されていくんです。
それで最終的に1UPして、その後も2UP、3UPと
ずっと上がっていくんですけど、
それを延々と繰り返すことが
自分の周りでは流行っていたんです。

岩田

ほのぼのプレイのデザインチームのなかでも、
それができる人がいたんですね?

向尾

記録更新に燃えた時期があったんです(笑)。
完全に1人プレイの世界なんですけど、
はじめた当初は、記録が20UPとか30UPで、
「すごいねえ」という話をしていて、誰かが40UP出すと
「うおー、すごい!」となって、
すると突然誰かが100UPとかを出すようになって、
最終的には200UPとかいうレベルになったんです。

岩田

おー、やりますね(笑)。

向尾

スーパープレイができるようになると
すごく気持ちがいいと実感しましたので、
ぜひ「おたからムービー」を見て、試してほしいですね。

岩田

「おたからムービー」のスーパープレイは
特別に選ばれた人だけのものじゃないですよ、
ということですね。
内田さんは、おすすめプレイは?

内田

わたしも、ほのぼのタイプでしたので、
しょっちゅうシャボンになるんです。
しかも「お願いだから、割らないで」という感じで。

岩田

Wiiリモコンは振らずに、
とにかくじーっとしてるんですね(笑)。

内田

はい(笑)。それでもけっこう何回もミスしてしまって、
すぐにマリオの残り数がゼロになってしまうんです。
そうなると、シャボンになることもできなくなってしまうので、
あとはボーッと見ているだけで、手持ちぶさたの状態になるんです。
そういうことがわたしだけでなく、
サウンドのメンバーのなかには何人かいましたので、
サウンドディレクターが
「残り数がゼロのときってやることがないから、
何か遊べるものを入れたいよね」ということで、
Wiiリモコンのボタンをガチャガチャ押すと
楽器が鳴らせるという仕様を入れたんです。

岩田

それはサウンドの人が残り数がゼロになることが多かったから、
音の遊びが生まれたということなんですね。

内田

ですから、もし、マリオの残り数がゼロになってしまっても、
いろんな音を出して楽しんでほしいですね。