12. 命がけの責任感

宮本

自分に上役がいなかったからか
どうかわかりませんけど、
自分がいい上役ができているかどうかが
よくわからないんですよね。

糸井

ほう。

宮本

たとえば、ずっといっしょにやってるスタッフは、
「ちょっとこういうこと考えたんですよ」って
よく言ってくるんですけど、そのうちの7割がた、
「それはあかんな」って、ぼく、言うんですよ。

糸井

ああー。

宮本

ひどいこと言ってるなぁと思いながらも、
自分の案でも同じようにしてるはずですから、
やっぱり、言ってしまうんですよね。
まずそういう関係をやめないと、
人は育てへんのかなって思うこともあって。

糸井

いや、でも、しょうがない、という面もあるでしょう。

宮本

そうなんですけどね、
その、7割ダメって言ったうちの
2割ぐらいは、あとから考えたら
「そこまで言わんでもよかったかな・・・」
っていうのもあるんですけどね。

糸井

ああ、うーん・・・。

岩田

そっちの方向でも、いい結果は出たかもしれない。
だけど、そっちの方向に進めて
いい結果を出せるっていうことを、
保証できないんですよね、やっぱり。

宮本

そうそう。

糸井

そうなんだよねぇ。

岩田

糸井さんも上役はいないですね。

糸井

俺もいないんです。
基本的にはフリーとして、
上役もなく、自由にやってこれたから。
ところがご存じのように
広告が自由だった時代は短くて、
クライアントが上役っていう時代がやってくる。

岩田

はい。
そこから逃れるために糸井さんは
ほぼ日刊イトイ新聞をはじめられたんですよね。

糸井

そうです。

宮本

でも、そのかわり、
責任はしっかりと生まれますよね。
上役がいないからこそ、結果を出さないと。

糸井

そりゃ、責任は生まれます。
そこは、なんていうんだろう、
大袈裟な言い方すれば、命がけです。

宮本

ですよね。

糸井

うん。
命がけだと思うよ。

宮本

ぼくが提案の7割にNGを出してるぶん、
ぼくの責任はどんどん増えるわけですよね。
まぁ、それを、ボツを出す
言い訳にするわけやないですけど(笑)。

岩田

いや、でも、そういうことですよ。
できあがったものが、
結果をともなうかともなわないかは、
宮本さんの責任になってしまいますから。

宮本

だから、自分が当たり前にそうやってるぶん、
「どうして、そこを命がけにやれへんねや」って
言いたくなる。でも、考えてみれば、
構造的に無理なんだろうなとも思うんですよ。

岩田

あああ。