社長が訊く
IWATA ASKS

社長が訊く『XenobladeX
(ゼノブレイドクロス)

社長が訊く『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』

目次

2. 小説のようなプロット

岩田

オープンワールドにすると決めて、
そのあとはどんな順序で進んでいったんですか?

高橋

オープンワールドを決めたあとは、
いろんな状況に耐えられるような世界観・・・
ストーリーのベースの部分をつくりました。
そこで、脚本家の竹田さんと兵頭さんだけでなく、
小島や横田さんを含めて、
ミーティングを重ねていきました。

岩田

竹田さん、高橋さんから
どんなかたちで発注がきたのですか?

竹田

今回、まず最初に高橋さんの書いた
複数のプロット(物語のあらすじ)が
すでにでき上がっていたので、
それを読み込むことからスタートしました。

小島

たしかにものすごい量を書いていましたね。
僕は長い間、高橋といっしょに仕事をしてきましたけど、
こんなにたくさんの量のプロットを見たのは初めてですし、
それはまるで、小説のようだったんです。

小島

竹田

そうですね。ホントに小説に近かったですね。

小島

そのまま読めるくらいで、
「これ、出版したらどうですか?」
と言ったくらいです。

岩田

つまり、
最初からかなり分厚いプロットがあって、
それを実際の脚本に落としていく
という流れだったんですね。

竹田

はい。複数あるストーリーのなかから、
今回のゲーム内容やスケールに適したものを
厳選して脚本化しました。

岩田

脚本にする仕事は
最初は竹田さんひとりで対応されていたんですか?

竹田

はい。ですが、クエスト関係も含めると
ひとりで担当するには
ボリュームがでかすぎました(笑)。

岩田

なるほど。

竹田

そこで、「これは信頼できる人を呼んで、
2人態勢でやるしかないでしょう」ということで、
兵頭さんにも加わってもらうようにしました。

岩田

兵頭さん、最初に声をかけられて
どんな印象をもちましたか?

兵頭

わたしも普段は
テレビアニメの仕事をやっていまして。

岩田

映像系のお仕事をされてるんですよね。

兵頭

なので、ゲームの制作に
本格的に参加するのは初めてだったんです。
で、最初に声をかけられたときに
モノリスソフトのプロデューサーの方から言われたのは
「現場から逃げないことが条件です」と(笑)。

一同

(笑)

兵頭

たぶん冗談だったと思うんですけど、
この仕事を受ける限りは、
絶対に逃げちゃいけないんだなと思いました。

小島

よくぞ逃げないで、
最後までやっていただきました(笑)。

兵頭

いや、逃げる逃げない、というよりも、
「ずっとこのチームに混ぜていてほしいな」
と思えるくらい、すごく魅力を感じたんです。

岩田

それはどうしてなんでしょう?

兵頭

先ほどの話にもありましたけど
「星をひとつ、丸ごとつくっちゃいます」
と、最初に言われて、
「なんて熱い現場なんだろう」と思ったんです。
それで、いざ仕事がはじまってから
わたしはクエストのシナリオを
何十本か書くことになったんですけど、
「新しいキャラをつくってもいいんですか?」
と、そのときに聞いたら、
「いくらでもつくっていいです」と言われたんです。
自分では「いくらでもいいの?」と思いつつも
熱い現場なので、きっと大丈夫なんだろうなと・・・。

兵頭

竹田

そうそう。
僕らは「こんな場所がほしい」と思いながら
シナリオを書いたりもするんですけど、
今回は「そんな場所はもうつくれません」
と断られるようなことは、ほとんどなかったんです。

小島

たしかに、『ゼノブレイド』と比べても
ロケーションのしばりは
今回はそんなになかったように思いますね。

竹田

それはやっぱり、
それだけ受け皿が大きかった、
ということなんでしょうね。
「星をひとつ、丸ごとつくっちゃいます」
というくらいですから(笑)。

小島

そうですね。
ですから、どっちかというと、
「どうしたら話がおもしろくなるか」ということに、
すごく時間を割いたという感じでしたね。

兵頭

そのおかげもあって、とても自由で
クリエイティブな仕事に参加できたと思いました。

岩田

だから
「ずっとこのチームに混ぜていてほしいな」
と思えたんですね(笑)。

兵頭

はい。
「もっとやらせてもらえませんか?」
と言いたくなったくらいです(笑)。

岩田

ところで、おふたりのなかで
役割分担のようなものはあったのですか?

竹田

僕の場合・・・
高橋さんとも共通してるんですけど、
オヤジキャラが好きなんです。

岩田

オヤジキャラが好きなんですか?(笑)

竹田

はい。年配の男性キャラを
活躍させるのが大好きなんです(笑)。
でも、お客さんのことを考えると、
「若い女性キャラを活躍させるような
 新しい流れも必要だ」と思いまして、その意味で
兵頭さんはとてもいい戦力になったんです。

岩田

なるほど。
そういうバランスをとってたんですね。

竹田

(兵頭さんに)ですよね?

兵頭

もともとわたしも、若い女性キャラ方面の
スペシャリストではないんです。
でも、お客さんの視点に立ったときに、
「もっと若い女の子が活躍するとうれしいだろうな」
と思いまして、そこは気合いを入れて書きました。

竹田

単に作業量が多いから、
人の数を増やそう、ではなくって、
僕が苦手なところを補ってくれる人がいたらいいな、
と考えて、兵頭さんをご紹介した、
といういきさつもあったんです。

岩田

ちなみに、シナリオに関しては、
どのくらいの期間がかかったんですか?

竹田

クエスト関係も含めると、
少なくとも1年半はかかったと思います。

小島

長かったですね。
『ゼノブレイド』のときよりもずっと。

岩田

それはやっぱり話が長いからですか?

高橋

いわゆるメインストーリーに相当する部分は
『ゼノブレイド』よりも短いくらいなんです。
でも、クエストストーリーのほうは
オープンワールド型のゲームデザインに合わせたことで
かなりボリュームアップしました。

岩田

クエストはどのくらい増えたんですか?

小島

どうなんでしょう・・・
3000パーセントアップ?

岩田

3000パーセントも、ですか!?
つまり30倍ですよね。

横田

はい。最初の企画段階では
クエストを3000パーセント増にしよう
という話だったんです。
でもそれは企画当初の話で、実際には
前作と同じくらいのクエスト数になりました。
ただ、そのくらいの気持ちで立ち上げましたので・・・。

岩田

つくり込んでいる密度が違う、ということですね。

横田

そうです。かなり違います。
プレイ時間のベースで言いますと、
やり込むと5倍とか、
それくらい遊べるのではと思っています。

岩田

前作は、一度クリアしても
何度も遊びなおしたりとか、
この世界の居心地がいいために
ずっと遊び続けていたりする方もいましたが、
今回はそういう人がさらに増えそうですね。

横田

はい。今回も隅々まで遊んでいただきたいですね。