社長が訊く
IWATA ASKS

社長が訊く『XenobladeX
(ゼノブレイドクロス)

社長が訊く『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』

目次

5. 車を買うような感覚でドールを

岩田

今回はオープンワールドという
大きな柱がまずあって、
ネットワーク対応にもなったわけですが、
高橋さんのなかには、他の柱もあったんでしょうか?

高橋

はい。最初のころ、
「そろそろロボットで戦いたいね」
という話を、小島としていたんです。

高橋

小島

そうでしたね。

岩田

前作では
「高橋さんのゲームなのに、
 どうしてロボットに乗れないんだ?」
という声も聞かれましたからね(笑)。

高橋

ええ(笑)。
ですから、オープンワールドとロボットの
2つを大きな柱にして、
その周りに、いろいろと遊びを乗せていく
というつくりにしました。
なので、オープンワールドも
とても高いハードルではあったんですけども、
ロボットとキャラクターを両立させつつ、
ゲームのなかに盛り込んでいくということも、
もうひとつの高いハードルだったかなと思います。

小島

今回のロボットは、
「ドール」と呼んでいるんですけど、
それを手に入れると、この広大な世界のどこにでも
自由に行けるようになって、
ものすごく気持ちがいいんです。

横田

その気持ちよさを出すためにも、
ものすごく広いフィールドが活きてきたんです。

岩田

ああ、なるほど。そういう意味でも
「オープンワールド」と「ドール」は
とても合っていたんですね。

小島

そうなんです。

岩田

でも、ゲームバランスが
重要になりますね。

小島

バランスをとろうという気持ちは
じつは僕のなかにはあまりありませんでした。

岩田

(笑)

小島

僕としてはドールを手に入れたあとは、
とにかく気持ちよく遊べたほうがいいと思いました。
人間だと倒すのにすごく時間がかかる敵も、
ドールだと一撃で倒せたりとか、
それくらい振り切っちゃおうと。

岩田

ドールを手に入れることで
スーパーになった自分を
気持ちよく味わえるわけですね。

小島

でも、その代わり、手に入れるためには
ちょっとハードルを上げました。
ものすごく高価にしまして。

岩田

どうして高くしたんですか?

横田

ドールを買うときは
「実生活で新車を買うような感覚になってほしい」
ということを、みんなで話していたんです。

横田

岩田

地道にお金を貯めないと
ドールは簡単に手に入らないんですね。

横田

はい。それに、高価なドールであっても、
かなり強い敵に出会うと
一撃で破壊されることもあるんです。
すると、新しいドールを
買いなおさなきゃいけない場面も出てきます。

岩田

それってけっこう、つらくありませんか?

横田

そこで「ドール保険」をつくりました(笑)。
ドールが破壊されても
3回目までは無料で修理してくれるんです。

岩田

なんだか、ものすごくリアルな話ですね(笑)。

小島

でも、4回目以降は保険がきかなくなるので、
多額の修理費が必要になってしまいます。
僕としては、ドールが壊れてしまったら、
そこでパーにしたかったんです。
一度でも破壊されたものは、もう二度と返ってこない、
というふうにしたかったんですけど・・・。

岩田

小島さんとしては、本物の車のように
ドールを大切に扱ってほしかったんですね。

小島

そうなんです。
ところがスタッフのなかから
「買いなおせというのは、いくらなんでもひどすぎる」
という声があがりまして・・・。

高橋

それでできたのが
「ドール保険」だったんですけど、
さらに、“保険の保険”のシステムもあるんです。

岩田

“保険の保険”システム、ですか?

高橋

「ジャスト脱出」と呼んでいるんですけど、
バトル中、ドールのHPがゼロになって破壊されたときに
タイミングよくボタンを押すと、
保険を使わずに修理をしてくれるシステムなんです。

岩田

だから、“保険の保険”なんですね(笑)。

小島

はい。バトル担当のリーダーに
島本(誠)(※14)というスタッフがいるのですが、
彼はすごくやさしい男なんです。僕とは違って。

※14
島本誠さん=モノリスソフト開発部所属。スクウェア(現・株式会社スクウェア・エニックス)時代、『クロノ・トリガー』(1995年発売)や『ゼノギアス』(1998年発売)でバトルプランナーを担当。モノリスソフトに移籍後、『ゼノサーガI・II』(2006年発売)ではバトルプランニングディレクターを担当し、本作『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』では、『ゼノブレイド』から引き続きリードバトルデザインを担当。

岩田

はい(笑)。

小島

それで、彼に対して
「ドールが壊れたら、それっきりにしてくれ」
と、きつく言ってたんですけど・・・
“保険の保険”の仕様を入れていたんです、勝手に。

一同

(笑)

竹田

自分のようにヘタなプレイヤーからすると、
島本さんを拝みたくなりますね(笑)。

小島

それは、彼のやさしさのおかげだと思ってください。

竹田

はい(笑)。

岩田

先ほど「ロボットをもうひとつの柱にする」
という話がありましたけど、
かなりこだわってつくられた印象ですね。

小島

はい。もともと僕は
同じフィールド上でロボットと人を、
どうしても出したかったんです。
かつて高橋が手がけた『ゼノギアス』(※15)・・・
その当時の僕は、いちユーザーとして
このソフトで遊んだのですが、
ロボット専用のマップがあったんですけど
そこでは人で遊ぶことができなかったんです。

※15
『ゼノギアス』=1998年2月にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたRPG。

岩田

当時のハードでは、不可能だったんですね。
スケールが違う世界になりますから。

小島

そうなんです。
でも、僕はそれを遊んだときに、
いつかロボットと人間をいっしょに
出したいと思うようになりまして・・・。

岩田

それが今回、叶ったんですね。

小島

はい。ようやく叶いました。
20世紀の時代に
「いつかやりたいな」と思ってから
十数年が経って、ようやく実現できたのが
『ゼノブレイドクロス』のドールなんです。