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社長が訊く『Wii U』

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社長が訊く『Wii U』

Nintendo Land篇

目次

2. 機能からのデザイン

岩田

「任天堂のテーマパークにしよう」となって、
その世界を具体的にデザインする話は、
いつごろ阪口さんに行ったんですか?

阪口

僕が入るころには
試作がある程度そろった状態で、
「バラバラの積み木をどんな箱にはめようか?」
という話から、考えはじめた記憶があります。

江口

『Nintendo Land』っていう名前が
正式に決まったのはずっと後ですけど、
「任天堂のテーマパーク」ってテーマだけは、
その当時から決まっていました。

山下

ただ、それぞれのアトラクションを
「こぢんまりとした感じにはしたくない」
という気持ちが強かったんです。

阪口

各々のゲームをきれいにまとめるより、
「それぞれの個性をはっきり尖(とが)らせたほうが、
 よりテーマパークのアトラクションっぽくなる」
という方向で、イメージを膨らませていきました。

岩田

たしかに「リゾートスポーツ」だと統一感が求められますが、
「テーマパークのアトラクション」なら、
世界観が違うほど、ゲームの個性が際立ちますね。
一見バラバラな素材をひとつにまとめるうえで、
「テーマパーク」というのは相性がよかったんですね。

山下

ゲームの絵づくりも、
全部バラバラにつくっています。

阪口

そうでしたね(笑)。
たとえば2Dっぽい画面にしたり、
俯瞰(ふかん)で映したり、画面を分割したり・・・
各々のゲームの個性が映える見せかたを工夫しました。
あと『Nintendo Land』の個性として
ひとつ挙げられるのが、
各アトラクションに挑む前に、
Miiが着ぐるみに「変身」するシーンがあるんです。

阪口

はい。この変身シーンを見せることで、
「ここでは、このキャラクターに扮して遊びます」
ということがまず強調されるので、
デザインする側としても、
各ゲームの個性を思い切り伸ばせました。

岩田

「アトラクションが違えば、バラバラで当たり前」
ということを、変身シーンを通して見てもらうことで
地続きにしているわけですね。

山下

各ゲームによって遊ぶ視点もバラバラなので、
そこはこだわりました。
また一方で、プレイ中のMiiが
見えないゲームもあります。
たとえば「鷹丸の手裏剣道場」は
カメラのこっち側に自分がいるので、
一切、Miiが出てきません。

岩田

「ゲームをする自分は、どこにいった?」
そんな状態ですね(笑)。

山下

はい。さらに、
ドンキーコングのクラッシュコース」で
転がっていく三角形にいたっては、
もはやヒト型ですらありません(笑)。

阪口

デザイナー的には
「これ、なんなんだ!?」って
いう気持ちもありましたけど(笑)、
遊ぶうえでは三角形がいちばん楽しかったので
試作のデザインをそのまま採用しました。
そんなふうに、ひとつずつ決着をつけながら、
「このゲームはこういうものなんだ」って、
思い切ったデザインを心がけていきました。

岩田

とはいえ、Miiがマリオの着ぐるみになって、
「なんちゃってマリオ」に変身するということは、
「オリジナルをどこまでいじればいいか」という
別の難しさがありますよね?

阪口

そうですね。
でも「どういう“なんちゃって”にしようか?」
ってこと自体を、楽しんでつくっていた感じでした。

山下

たしかに「『Nintendo Land』なんでご勘弁を!」
って関係者に言えるから、
みんな自分の解釈で楽しそうに
オリジナルをいじっていましたね。
まあ、好きなようにやりすぎて、
江口さんに怒られたこともありましたけど(笑)。

江口

だって、あの時は「どうぶつの森」じゃなくて、
「お菓子の森」になっていたからね!(笑)

岩田

そういえば、
どうぶつの森 キャンディーまつり」で、
「キャンディーを食べたら頭が大きくなって、
 足が遅くなってしまう」という設定は、
どうやって決まったんですか?

阪口

もともとプログラマーさんが
状態をわかりやすくするために
頭を大きくしてくれていたんですけど、
見た目が面白いし、ルールとしてもわかりやすかったので、
そのまま採用されました。

岩田

え? 状態を表示するために
試作でプログラマーの用意した仕様が、
そのまま採用されたんですか?

嶋村

そうですね。

岩田

『どうぶつの森』の世界をつくった
江口さんからすると、どうなんでしょうか?(笑)

江口

そう・・・ですね(笑)。ただあれは、
Miiがどうぶつのかぶりものをしていて、
頭の中にキャンディーをほうり込むことで
いっぱい入ってきたことがわかるから、
ゲームの機能がデザインで表現されているし、
オッケーです(笑)。

岩田

ということは、宮本さんが
「プロペラマリオの動力は何だ?」(※10)
ということを追求するのと同様に、
江口さんは
「なぜ頭がでかくなるかというと、
 キャンディーがいっぱい詰まっているから」
と解釈しているわけですね。

※10
「プロペラマリオの動力は何だ?」=プロペラマリオの動力に関するくわしい経緯、社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ Wii』その1はこちら。

江口

そうです(笑)。

嶋村

オリジナルのしばりからある程度、
解き放たれた世界をつくりましたけど、
みなさん、すごく大らかでした。
「遊びとして面白ければいい」
って許してくれて、すごく感謝しています。
まぁ多少、むちゃくちゃもやっていますけど・・・。

岩田

それはたとえばどんな
「むちゃくちゃ」があるんですか?

阪口

「遊びの大事なところを活かす」ということで、
僕が「 ピクミン アドベンチャー」でやったのは、
敵の背中に丸い玉をつけて、
はっきり弱点がわかるようにしました。
本来なら、弱点は毛に隠れているとか、
もっとわかりにくいはずなんですけど、
このほうが圧倒的にわかりやすかったんです。

岩田

機能からデザインを突き詰めた結果なんですね。

山下

はい。「ピクミン アドベンチャー」でも
今回は「自分がピクミンになれる」ということで、
ぜひ、「ピクミンは食べられる存在である」
ということに「フィーチャーしたい」と思って、
食べられたあとを想像してつくったんですけど・・・。

江口

それ、オチを言わなきゃわからないよ?

山下

その・・・食べられたピクミンが
「排泄」されるんです。すみません。
そこはオリジナルでは「絶対にやらないだろう」
と思ったので、頑張って入れました。
そしたら『スカイウォードソード』(※11)で、
鳥のフンが落ちてくるネタがあって、
それがすごくリアルでちょっとホッとした・・・という、
しょーもない話です。すみません。

※11
『スカイウォードソード』=『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』。2011年11月、Wii用ソフトとして発売されたアクションアドベンチャー。

一同

(笑)

岩田

嶋村さんはどうですか?

嶋村

わたしは「 メトロイド ブラスト」で、
かっこよくパワードスーツをつくっていたんです。
でも、自分のライフがわかりにくかったので、
ライフの数字をデカデカと、
「お鍋のフタみたいなものに書いて背負っている」
という設定にしました。
そしたら・・・サムスとは
似つかわしくない感じになってしまいました(笑)。

岩田

でも「なんで数字を背負っているんだ!?」って、
最初は思いますけど、ダークな世界で
数字がぼーっと光っているから、
ちょっとかっこよく見えるんですよね(笑)。

嶋村

はい。この表現が
いちばんわかりやすかったですし、
坂本(賀勇)さん(※12)
「いいよ」って言ってくださったので、
ホッとしました(笑)。

※12
坂本賀勇=企画開発本部企画開発部統括。『メイド イン ワリオ』シリーズをはじめ、『リズム天国』や『トモダチコレクション』、『METROID Other M』などのプロデューサーを担当。過去、社長が訊く Wiiプロジェクト Vol.6『おどる メイド イン ワリオ』編社長が訊く『METROID Other M』コラボレーション 篇社長が訊く 坂口博信×坂本賀勇社長が訊く『キキトリック』に登場。

岩田

まさに「機能からのデザイン」を追求していますね。
ところで『Nintendo Land』を特徴づける
看板に顔がついたキャラクターは、
どうやって生まれたんですか?

阪口

キャラクターのキッカケは「音声合成」です。
テレビと手元のWii U GamePadという
ふたつのスピーカーがあるというのは、
いままでにない構造なので、ぜひ使いたかったんです。

岩田

たとえば手元のWii U GamePadの画面から
「こっちだよ」とテレビ画面に視線を誘導する、
なんてこともできますね。

阪口

はい。 キャラクターが音声合成で
ナビゲートする
かたちにしたくて、
モニターの形状にすればいろいろ表示できるし、
3本指があればスリーカウントできるし、
ということで「モニータ」が生まれました。

岩田

これも機能を突き詰めて
生まれたキャラクターですね。
「モニター」だから「モニータ」ですね(笑)。

山下

一応、「看板娘」というダジャレで、
女の子の設定です(笑)。