社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

第10回:『モンスターハンター3(トライ)G』

目次

6. 『3(トライ)G』から『4』へ

岩田

さて。そろそろ、
『モンスターハンター4(仮称)』の話を
しましょうか(笑)。

藤岡

ははは(笑)。ドキッとしますね。

岩田

今回お2人が大変だったろうなぁと思うのは、
これだけ『3(トライ)G』にパワーを注ぎながら、
同時に『4』の骨格もつくっていて、
モンハンの開発をされているチームが
3DSの2つのソフトにかかりきりだったわけですよね。
そのことについてどんな風に考えられていますか?
まず、現場の藤岡さんから。

藤岡

現場としては、僕自身もなんですが、
同時に走らせつつ『3(トライ)G』を
納得いく形で仕上げられたことが、
『4』の大きなプラスになっていると思います。
ハードのこともだいぶ理解できましたし。

岩田

『3(トライ)G』の開発で
ニンテンドー3DSを使いこなした経験が、
『4』にも活かせますからね。

藤岡

それともうひとつ、
『3(トライ)G』は短期決戦で、
段階的にどんどん結果を出して進めていく、
っていうつくりかたをしていたんです。
吟味する間も惜しいというか、
「迷っているなら入れてしまえ」ってほどの
スピード感で進めたんです。

岩田

はい。

藤岡

たいてい、シリーズをつくり続けると、
どうしてもまず構えてしまうというか、
いきなり“最善手”を打つことに思考がいきがちで、
それが逆に、新しい挑戦をするというとき
出足を鈍くしてしまうんです。

岩田

たしかに。熟考の一手になると、
ひとつのサイクルが遅くなりますからね。

藤岡

すると、何をやるべきかも
だんだんぼやけてくるというのを
何となく感じていたんです。
だから『4』はそうならないように
しなきゃといけない、と考えていたその横で、
『3(トライ)G』がひたすら
結果を出し続けていったわけです。

岩田

そのスピード感みたいなものは、
『4』のチームにも伝わるでしょうね。

藤岡

伝わります。
『4』は相当なプレッシャーがありますし、
いままでどおりに進めてしまうと、
破綻する可能性もあると思っていたんです。
ですから『3(トライ)G』のように、
段階的に目に見える結果を出していくことが
大切なんだ、と強く感じています。
それで『4』としても、
結果の最初のひとつとして、
9月の任天堂カンファレンスのステージで
映像を公開した
わけです。

岩田

『3(トライ)G』と
同じタイミングでの『4』発表は、
みなさん「まさか!」という状況でした。

藤岡

あれは、自分たちにとっても
ハードルを上げる映像でした。
たぶんいままででしたら、ああいった映像は
もっと慎重に水面下でコツコツつくって、
ゲームの完成目前までは見せなかったと思うんです。

岩田

でも今回はあえて、
いち早く世に出すことが、
つくる側にとっても意味がある、と
藤岡さん自身が感じたわけですね。

藤岡

はい。迷っている場合じゃない、
自分がこれをつくるんだ、って
スタッフそれぞれの心の中にある
超えるべきハードルになるわけです。

岩田

あれだけを見たら、
「これをどうやって操作させてくれるの?」
って、一気に期待が高まりますよね。

藤岡

この場で言ってしまいますが、
あれは開発スタッフが操作している
正真正銘のプレイアブル映像なんです。

岩田

つまり、あれをそのまま
操作できちゃうということですね?

藤岡

はい。実際に動かせます。
あとはゲームとしての落としどころを
どうするか、という段階まできています。

岩田

形になるという効果は、本当に大きいですよね。
辻本さんは、この2チームの同時進行を
どのように考えていますか?

辻本

僕は正直、藤岡がこの2チームを見ることは
負担が相当大きかったので、
心配している部分もあったんです。
でも逆に『3(トライ)G』の開発が進むほど、
藤岡も言っている、良い相乗効果が
いっぱい出てきました。

岩田

結果を出し続ける、ということですね。

辻本

ええ。それからやっぱり、
「ターゲットカメラ」のようなアイデアは
『3(トライ)G』の開発過程から生まれたんですが、
もし『4』だけをつくっていたら、
時間やパワー配分など、さまざまな制約の中で
アイデアから実装までを成立できたか、
わからなかったとも思っています。

岩田

開発に費やすパワーの配分が、
新規のナンバリング作品では
違っているわけですからね。

辻本

そうです。そういったつくり手側の
技術的なノウハウと発想のステップを
共有できたというメリットが、まずひとつ。
あとそれに加えて、副次的ですが
プレイヤーの意識的な部分で得られたものもあります。

岩田

具体的に言うと、どういうことですか?

辻本

今回の発表で、
プレイヤーがどこに惹かれるのか、
何が気がかりなのかを、
くわしく感じ取ることができたんです。
それは必ず、現在つくっている『4』に
良い形で反映することができると考えています。

岩田

異例のスピード発表にも、
大きな成果があったわけですね。

辻本

ありましたね、本当に。

藤岡

現場でも何人か、二足のわらじで
『3(トライ)G』から『4』の開発に
連投しているスタッフがいるんですが、
彼らの発想や処理のスピードが
本当に大きく成長していて、
思考の幅も広がっているんです。

岩田

考えているだけよりも、
どんどん手を動かすほうが頭も動く、
という感触を、
うまくつかんだんでしょうかね。

藤岡

ええ、シリーズを重ねてきて
考え過ぎになる問題も解消できて、
弾みがついている感もあるんです。

岩田

毎回常に、守る部分と壊す部分の選択と、
大きな世代交代を繰り返して
それを成立できたものだけが、
末永く生き残るフランチャイズになるわけですからね。

藤岡

そういう意味では、
ターゲットカメラひとつとっても、
過去作には戻れないレベルに仕上がった
手応えはあります。
こういったものをどんどんつくって
「あぁ昔の『モンスターハンター』って
 こんなんだったね・・・」って
言われるくらいにしたいです(笑)。

岩田

ぜひ、お願いします(笑)。
それでは最後に、
お2人から、みなさんへのメッセージを。

藤岡

つくり手の「G」の文字に込めた想いが、
本当にぎっしり詰まったゲームになったと思います。
いままでのファンの方も、
初めて遊んでみようかなという方も
両方の方に必ず満足してもらえる新鮮さ、
ボリュームは保証します。
みんなでわいわい遊んでもらえたら嬉しいです。

岩田

まさに完全燃焼、なんですね。

藤岡

はい。

岩田

辻本さんはどうですか?

辻本

今回ニンテンドー3DSで初めての
『モンスターハンター』となりますが、
その名にふさわしい手ざわりや
遊びがいを大前提につくった、
紛れもない『モンスターハンター』です。
安心して、手にとってほしいですね。
タッチスクリーンを使った操作系など
新たな試みもさまざまありますが、
きっと遊びこんでいくほどに、
自分だけの『モンスターハンター』の
遊びのスタイルを、見つけてもらえると思います。

岩田

ありがとうございました。
今日、わたしがお話を訊いていて感じたのは、
まずこの『3(トライ)G』が
『モンスターハンター』をずっと遊んできた
ファンのみなさんへの
つくり手からの感謝の気持ちであり、
「本当にすべてを出し切ったものを味わってもらいたい」
という想いがあるということがひとつ。
もうひとつは『モンスターハンター』が
世間でものすごい盛り上がりをしている中で、
そこに出遅れて、じつは未体験という方が
これから気軽に入れる入り口を、
とてもうまくつくられた印象を受けたということです。

さらに言うと、
なかなか一緒に遊ぶ機会がない大人の方でも
これまでより気軽に「今日も良い狩りでした」って、
軽く会釈をかわしあうような、
新しい世界が生み出される仕組みが生まれたことです。
そういったことがいろいろ重なって、
新たな広がりを見せる可能性を感じました。
これからみなさんに
がっつりと遊んでいただいて、
そうそう飽きるボリュームではないですが、
やりつくした頃にちょうど『4』が出る・・・
ということですかね(笑)。

辻本・藤岡

はい(笑)。がんばります!

岩田

今日はどうもありがとうございました。

辻本・藤岡

ありがとうございました。