社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』

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社長が訊く『ニンテンドー3DS』

目次

9. 3D映像を再生する道具。

糸井

いま、映画にしろ、テレビにしろ、
まさに「3Dブーム」ですよね。
それは、ニンテンドー3DSにとって、
ありがたいことですか? それとも、逆?

宮本

うーん、まぁ、ちょっと戸惑いましたね。
ニンテンドー3DSの計画が進むにつれて、
にわかに世の中が「3D、3D」と
にぎやかになっていった感じがあって。

岩田

そうなんですよ。
そろそろ発表しましょうかっていうときに、
「3D元年」とか言われだして。
どうなってるんだ、これは?
という感じでした。

宮本

もう、取りかかってるのに、インタビューで
「テレビはどんどん3Dになるけど、
 任天堂は3Dについてどう考えますか?」
みたいなことを訊かれるんですよ。
もうすぐだから待っててください、
とも言えないですし(笑)。

一同

(笑)

糸井

そのタイミングはなかなかすごいですね。

岩田

そうなんです。

宮本

あの、つくり手のほうの動き、
たとえば3Dの映画が
どんどんつくられているというのは、
ソフト的にいえば、いいことなんですよ。
ニンテンドー3DSのソフトの幅を
広げてくれる可能性がありますから。

糸井

ああ、そうなんだ。

岩田

わかりやすい部分でいうと、
いま、3Dのコンテンツをつくってる人は、
アウトプットの場が少なくて困っておられるんですよ。
映画館という出口はできたかもしれないけど、
家庭のテレビには、まだそれが普及していないですから。
3Dテレビは発売されていますが、
メガネを使用する3Dテレビが
そんなに速く普及するとは思えないんです。
実際、ハリウッドの人たちに
ニンテンドー3DSをお見せすると、
ものすごく興味を示してもらえるんです。
だから、たとえば、3D映画の予告編みたいなものを
ニンテンドー3DSで見られるようにしたら
よろこんでくださる人はたくさんいると思います。

糸井

なるほど。
いってみれば、ニンテンドー3DSを、
3D映像を見る端末として考えて。

岩田

そういうことです。
できあがった予告編は、
ニンテンドー3DSに配信することができます。
Wi-Fi環境にあるマシンであれば、
お客さんが眠ってるあいだに、
配信することさえも可能です。

糸井

へぇーー。

宮本

夜中のうちにこっそり配信しておくと、
朝起きて電源入れたとき、
「あ、新しい映像が来てる」っていうふうになる。

糸井

そのへんのコンセプトは
たぶん、Wiiと同じだと思うんですけど、
なんていうか、携帯機のほうが
より気軽に楽しめそうな印象がありますね。

岩田

そうかもしれません。

宮本

ちなみにそういう配信を
「いつの間に通信」って呼んでます(笑)。
だから、ニンテンドー3DSは、
「すれちがい通信」と「いつの間に通信」で。

糸井

なるほどー。
あの、正直、ぼくは、
その配信にとっても興味がありますね。
なんていうか、もっとその部分は、
PRしてもいいんじゃないかなと思うくらい。

岩田

ああー、そうですか。

宮本

そうなんですね。

糸井

うん。これ、ちょっと大きいと思いますよ。

岩田

たしかに、注目すべき要素だとは思うんですが、
任天堂はゲームの会社なので(笑)、
どうしてもゲームのほうに意識がいくんですよ。

糸井

それはそれで任天堂のよさだと思いますが、
消費者目線でいうとこれは大きな魅力ですよ。
その、3Dの映像を再生する道具って、
自分ちにはないから。

岩田

そうなんですよね。
3D動画の再生というのは
じつはこの機械の価値のひとつなんですよ。
世の中に、動画を見られるデバイスは
いくらでもあるんですけど、
3D動画を気軽に見られるデバイスは
世の中に、まだそんなにはないんです。

糸井

そう思います。
今日はいろんなものに驚きましたけど、
消費者としての欲が出たのは、
その、3D映像の再生装置としての部分ですね。
とくに、ハリウッド映画のトレーラーなんかが
ひょいひょい見られたら、ぼくにとっては
けっこう身近な道具になります。

宮本

未知数ではあるんですけど、
うまくお互いの利益が共有できそうな
予感があるんですよね。
あの、やっぱり昔はゲーム関係者のあいだにも、
ハリウッドコンプレックスみたいなものがあって、
対等じゃない雰囲気があったんですけど、
最近、ハリウッドの人たちって、
かなり真剣に任天堂と向き合ってくれるんですよ。

糸井

ああ、そうですか。

宮本

昔は、王道の路線とは離れた、
ちょっと変わった企画として、
任天堂のキャラクターを使いたいっていう人が
たくさんいたんですけども、
もう最近は、ほんとに真剣に
任天堂のキャラクターの映画を撮りたいと
言ってくれる人がたくさんいらっしゃるんです。
きっと幅広い年代に支持されている点が
魅力になってるんでしょうね。
で、そういう人たちが本気で
ニンテンドー3DSに入ってくるとしたら
おもしろいことになってくるんじゃないかと思うんです。

糸井

しかも、その映像が、夜のうちに配信されて。

岩田

それが手のひらの中で、手軽に再生できるとなると・・・。

糸井

うれしいですよね。
あの、なんていうんだろう、
そういう意味では、ニンテンドー3DSって、
先進性を表現するのが
じつは、ものすごくらくな機械ですよね。
3Dの不思議なうれしさは
ことばにするのが難しいかもしれないけど、
こんなに新しいことが詰まってますって言うのは
じつは、そんなに難しいことじゃないし、
言われれば言われるほど、わくわくする。

岩田

そうかもしれないですね。