社長が訊く
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社長が訊く『Wii U』

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社長が訊く『Wii U』

New スーパーマリオブラザーズ U篇

目次

2. 「もったいない」

岩田

竹本さんから相談された足助さんは、
どのようにかかわっていったんですか?

足助

まず、竹本さんとふたりで
タッチで出るブロックを使って何ができるのか、
いろいろ試してみました。
そのなかで、すごく盛り上がったのが
じつは「ジャマをすること」だったんです。

岩田

お助けプレイではなく、
「相手のジャマをするプレイ」
で盛り上がったんですか。

足助

そうなんです。
たとえばノコノコのこうらが
びゅーんと飛んできたときにブロックを置くと、
それに当たって跳ね返るので、
それでプレイヤーのジャマをできたりとか。

岩田

プレイヤーがジャンプするタイミングで
頭上にブロックを置いたり、とかですか?

足助

そうです、そうです(笑)。
「わざと意地悪をして楽しむ」
という遊びかたがとても楽しかったんです。
その次に、ふたりの連係がとれてきて、
お互いを精一杯フォローしたとき、
どんなことができるのかを試してみたんです。

岩田

今度はふたりで協力して、
超絶プレイの方向を探ったんですね。

足助

そうです。
すると、いろんな遊びかたができるし、
「お、こんなルートを発見したぞ!」
ということがあって、すごくうれしかったんです。
そのときに「これはいける」という
手ごたえを感じました。

岩田

でも、そうやって
ふたりだけで盛り上がって、
周りの人にはわかってもらえない、
というふうにはなりませんでしたか?

足助

そうですね、なりました(笑)。

岩本

あの、僕はどちらかというと最初、
その“周りの人”でした。

岩田

はい(笑)。

岩本

「タッチしたらブロックが出る」
という話をはじめて聞いたとき、
きっちりマップがつくられているなかで、
好きなところに行けてしまうのは
「どうなんだろう?」と思っていました。

岩田

マップの仕掛けや、マップ作者の狙いが
台無しになってしまいかねないですからね。

岩本

そうです。
ところが、このふたりがすごく上手で、
その超絶プレイを見ているだけで
ものすごく楽しかったんです。
それに、プレイヤーのルートが
「人によって変わるのも面白い」と思いました。

足助

これまでの『マリオ』だと、
たとえば上のほうに登ろうとするとき、
豆の木を出したり、
隠れたブロックを出す必要がありましたよね。

岩田

あと、パタパタの上を踏んで跳んだりとかですね。

足助

はい。『マリオ』というゲームは
ひとつの場所に行くにも、
いろんな登りかたがあって、
それを発見するのが楽しいんですけど、
今回はブロックを使うことによって、
新しいアプローチのしかたが増えたように感じたんです。

岩田

新しいルートが「バディプレイ」で足される、
ということなんですね。

足助

そうです。
たとえば取るのが難しいスターコインがありますけど、
ひとりでプレイすると、どうしても取れなくて、
「バディプレイ」で取れたときは
すごくホッとするんです。
で、そのあとはバディのサポートなしで
もう1回やってみたくなるんです。

岩田

え? 難しいスターコインをひとりで取るんですか?

足助

ええ。一度見て、
どこにあるのか、わかっていますので。

岩田

ああ、なるほど。
それまでは、そこにスターコインがあることに
まったく気づかなかったけど、
「バディプレイ」をすることで発見するんですね。

足助

そうなんです。
しかも、どんなルートがあるのかもわかりますし。

岩田

だから、ひとりで遊ぶときの
偵察みたいにも使えるんですね。

足助

そうです。
ただ、ストーリーモードの
「バディプレイ」に関しては、
初心者のための意味合いが強いんです。

岩田

前作の『NewマリオWii』では、シャボン玉に入ったまま
ほかのうまい人に先まで連れて行ってもらうことで、
「アクションゲームが得意じゃない自分でも
 はじめてエンディングまでプレイできた」
という話をいろんな人から聞きましたが、
このシリーズは、初心者でも最後まで
遊んでいただけるように、
毎回、チャレンジし続けている感じがしますね。

足助

そうですね。
なので、ゲームが苦手な人でも
「バディプレイ」をうまく活用して、
今回は「クッパ戦までたどり着いてほしい」
と思っています。
それと、ひとりだけでクリアできるような人には、
とても遊びごたえのある
「おだいモード」を用意することにしました。

岩田

その「おだいモード」というのは、
どうやってできたんですか?

竹本

実際、僕たちがそうなんですけど、
自分たちでお題をつくって、
開発中によく遊んだりしていたんです。

岩田

自分たちで、しばりをつくって遊ぶんですよね。

足助

そうです。
それは『マリオ』上級者の
定番の遊びかたでもあると思うんですけど。

岩田

「おれはこんなにすごい方法でクリアしたぞ!」
と自慢したくなっちゃうんですよね。

足助

そうです(笑)。
で、そのような遊びかたを、『NewマリオWii』のときに
「こんな遊び方もあります」
「いろんなお題にチャレンジ!」
というかたちにまとめて、
任天堂のホームページに掲載したところ、
とても評判がよかったんです。

岩田

どうして、そのようなことをしたんですか?

足助

面白い遊びかたがあるのに、
一般のお客さんたちに伝えないのは
「すごくもったいない」と思ったからです。
それに「『マリオ』をずっと遊んでほしい」
という思いもありました。

岩田

「クッパを倒して、ハイおしまい」
ではもったいないということですね。

足助

はい。それで今回は
「おだいモード」というかたちにして、
最初からゲームのなかに入れることにしました。

岩田

「ゲームに入れよう」と言い出したのは
足助さんだったんですか?

足助

いえ、僕がチームに入ったときには、
竹本さんのほうで入れることは決定していました。

岩田

竹本さんにとっても、
「おだいモード」的な遊びかたに
手ごたえを感じていたということなんですね。

竹本

そうですね。
それに、これまで『マリオ』シリーズにかかわってきて、
自分でコースをデザインするときは、
たとえば「このコースは、
1回も地面を踏まずにクリアできる」みたいに、
自分のなかで勝手にテーマをつくって
コース設計をしてきたんです。

岩田

ああ、コースづくりの背景には
必ずそのようなドラマと意志があるんですよね。

竹本

そうなんです。
でも、そのようなことを黙って入れても、
世間の人たちに気づいてもらえないことも多くて、
それが「もったいない」と思っていました。

岩田

でも、今回のように、
最初から「おだいモード」として
ゲームのなかに入れられたら、
「新しい遊ばれかたになる」ということなんですね。

竹本

はい。

足助

で、今回の「おだいモード」は、
「幅広い層の人たちに遊んでほしい」
と思いましたので、
上級者の人が楽しめるモードから、
ストーリーモードを半分くらいまで
行けるような人であれば、
ちょっとずつでも遊んでいけるような、
少しかんたんなモードも用意しました。

岩田

すべてが超絶プレイばかりでは
ふつうのプレイヤーにはツライですからね。

足助

そうですね。
なので、アクションが苦手な人でも、
たとえば、連続1UPのやりかたを
まず「おだいモード」で覚えてから、
ストーリーモードのコースで試してみると、
マリオの数がいっぱい増えて
とても遊びやすくなりますので、
初心者の人にもメリットがあると思います。

岩田

超絶に難しいお題から、
それなりに経験を積めば、
多少はうまくなくても
楽しめるモードなんですね。

足助

はい。その人の腕前に応じて、
金・銀・銅メダルという
3つのレベルがありますので、
「ぜひチャレンジしてほしい」と思います。