社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

第16回:『真・三國無双 VS』

目次

5. “1人でも、対戦でも”

岩田

『VS』になったことで、いままでとは
変えなければならないことはありましたか?

小笠原

「STORY MODE」は敵がAIなので、
ある程度は手加減してくれますけど、
「VS MODE」の対戦ではガチンコ勝負なので
そうはいきません。
無双アクションは速いテンポで
バンバンバンッと決まる爽快感が特徴ですから、
対戦で棒立ちだと一方的に終わってしまいかねないので、
“ガード”を使うことをオススメします。
ひょっとして、いままでガードボタンを一度も使わずに
クリアされた方が多いんじゃないかと思うんです(笑)。

岩田

それはけっこう、ありそうな気がします(笑)。
ボタンを連打するプレイでも何とかなるよう、
わざとつくられている部分がありますよね。

小笠原

そうですね。
いままではあえて触れていなかったんですが、
今回については、ガードボタンを意識してプレイすれば、
自ずと反撃のタイミングが生まれるので、
対戦のときに意識していただきたいと思います。

岩田

それくらい、相手との駆け引きは変わっているんですね。

小笠原

今作の大きな特徴として、
指先を使うストイックなアクション部分と、
頭を使うシミュレーションのような部分があります。
今回、シングルプレイでも対戦プレイでも、
戦闘は3人の武将でチームを組んで、
拠点争いで激突します。
その際、戦況を下画面で把握しながら
タッチ操作できるんです。
たとえば状況を見て有利なエリアに武将を送り込んだり、
タッチで操作して武将を切り替えたりできるので、
より戦略的に拠点に攻め込むことができます。

岩田

アクションで忙しくボタンを押す部分もあれば、
頭を使って味方をどこに送り込むかを
考える部分もあるんですね。

小笠原

はい。とくに戦場で頭をつかう部分を
非常に高めていますので、
ものすごくアクションが上手な方と対戦しても、
「ひょっとして勝てるかも・・・!?」っていうくらい、
ちょうどいいバランスになっていると思います。

岩田

今日、お話をうかがっていて、
『三國無双』を『真・三國無双』につくり替えるときに
小笠原さんが果たした役割のように、
『無双』シリーズの新しいかたちとして
生まれ変わらせたものが『VS』と言えますかね?

小笠原

そうですね。
今回は相当、アクション以外の
頭をつかう部分をどう表現するかに時間をかけましたので、
そのおもしろさを知ってもらいたいと思います。

岩田

それでまた、ゲームの遊ばれ方や
深さが変わっていくかもしれませんね。

小笠原

はい。従来のシリーズの方向性とは明らかに違う、
3DSならではの『真・三國無双』として、
発展していけると思います。
もちろんシングルプレイは、ご安心いただける
ボリュームとクオリティになっていますし、
一騎当千の無双アクションで対戦する楽しさを
実際にお楽しみいただきたいと思います。

岩田

“1人でも、対戦でも”ですね。
それからインターネット対戦もあるんですよね。

小笠原

はい、ローカルプレイ(※20)だけでなく、
インターネットで最大4人のプレイヤーと対戦できます。
あと、体験版で“引き継ぎポイント”という仕様があって、
体験版をプレイして製品版を購入していただくと、
いろんな特典を獲得できます。
さらにダウンロードプレイで親機になってプレイすれば、
子機にも同じ“引き継ぎポイント”が入りますので、
ぜひ、みんなで対戦の輪を広げていただければと思います。

※20
ローカルプレイ=ニンテンドー3DS同士の無線(ワイヤレス)通信機能を使った通信プレイのこと。

岩田

では最後に、『無双』を遊んだことがない方に
「『無双』はこんなゲームです」とお伝えするメッセージと、
従来から『無双』を遊んでこられた方への
メッセージとふたつ、お願いします。

小笠原

う~ん、難しいですね・・・(笑)。
まず遊んだことがない方に向けては、
“一騎当千”って言葉は人によって感じ方が異なると思いますが、
戦場で一騎当千と呼ばれる存在は、
現実ではなかなか体験できないほど
人に頼られたり、賞讃されたりと、
戦場という極限状態で出てくる人間の感情の中で、
一番もり立てられるものなんです。

岩田

究極のヒーロー気分、ですね。

小笠原

いまは「ヒーローになりにくい世の中だなぁ」と思うんです。
だから爽快なアクションはもちろんですが、
ヒーローやヒロインだけが味わえる、
さまざまな人からのポジティブな感情を体験できる
ゲームが『真・三國無双』シリーズです。
遊んだことがない方は、ぜひ一度プレイしていただければ、
だれでもその感覚を味わうことができると思います。

岩田

『無双』シリーズは、
熱心にゲームを遊ばれる方の中でも、
一番間口が広いゲームのひとつだと思います。
というのは、そんなに指が上手に動かない人でも、
クリアするためだけならけっこう前に進めるんですよね。
力技で何とかなるくらい
“ヒーロー気分を味わうこと”
に対してのおもてなしが徹底していると思います。

小笠原

はい、そこは絶対に
はずさないようにつくっています。

岩田

では、シリーズファンの方にお願いします。

小笠原

『VS』の部分にフォーカスしてお話ししますけど、
今回は対戦ゲームなので、
先ほど紹介した頭を使って勝つ部分と同時に、
指先のテクニックで勝つアクションについても、
いままでよりかなり踏み込んで
たくさんの仕様を入れました。
みなさんならではの勝利の秘訣を
追求していただきたいなと思います。

岩田

あと、対戦プレイは勝者がいたら
絶対敗者がいるわけですから、
ゲーム仲間たち、あるいは
インターネットを通じた世界中の腕自慢たちに、
どこまで立ち向かえるか、
挑戦状みたいなところもありますよね。

小笠原

そうですね。
あとストーリーは、単に三国志のエピソードを
違うかたちで表現するだけではおもしろくないので、
今回は大胆に“ifの設定”からスタートしています。
従来は基本的に歴史辞書にあったかたちで描いていたんですけど、
今回は諸葛亮が三国志の軍師たちをある場所に集めて、
「いままでの合戦について語り合おうではないか」と
いうところからはじまります。

岩田

へぇー(笑)。

小笠原

いままでのシリーズには描かれていないような
キャラクター同士のやりとりが
しっかりフルボイスで表現されていますので、
初のシチュエーションをお楽しみいただきたいと思います。

岩田

歴史が大好きな小笠原さんとしては、
歴史の史実にもとづく部分へのこだわりと、
逆にゲームや娯楽だから
あえて現実離れしたことも含めて、
どうやってバランスをとっているんですか?

小笠原

ただ単に史実と同じだけでは
おもしろくないってところはあるんですけど、
断片的に記録として残っている史実はあっても、
その描き方は無限にあると思うんです。
たとえば織田信長のドラマを5人がつくるとしたら、
5通りの物語になるように。

岩田

事象は同じでも「なぜそうしたか」ということですね。

小笠原

そうです。
さらに踏み込んで、
実際に起きた事象が変わっても、
その流れになるまでの必然性が大事なんです。
歴史好きの人間は、事象が正確かではなく、
歴史の流れ・・・説得性も加味した必然性が大切なんです。

岩田

史実に忠実かどうかよりも、
「因果関係がちゃんとしているか?」ってところに
こだわりがあるんですね。

小笠原

はい。その因果関係でキーになるのはキャラクターです。
キャラクターの感情がどう動くのかを描いてあげれば、
ドラマ的におもしろいし、
ifが整合性をもって展開されていくと思うんです。
そこは歴史とはいえ、エンターテインメントに仕上げられる
ゲームの強みだと思うので、
これからもつづけていけると思うと、
いろいろやりたいことがあって楽しいです(笑)。

岩田

『信長の野望』をつくるはずだったのに(笑)。

小笠原

それはいずれ、絶対に実現しようと思っています!

岩田

「小笠原の野望」ですね(笑)。
今日は『真・三國無双』がどうして生まれたかということが、
わたしの頭の中でいろいろとつながっておもしろかったです。
どうもありがとうございました。

小笠原

こちらこそ、どうもありがとうございました。