社長が訊く
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社長が訊く『トモダチコレクション 新生活』

社長が訊く『トモダチコレクション 新生活』

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目次

1. 「次世代感」

岩田

今日は『トモダチコレクション 新生活』について、
お話をお訊きしたいと思います。
ここにいるみなさんは全員、前作の開発も経験していますね。
今作は前作のチームの人たちを中心にしながら、
途中からいろいろなメンバーの補強もして、
かなりのパワーをかけた長期戦になりましたね。

高橋

そうですね。
制作期間としては、前作より
ちょっとだけ長めになってしまいました。

岩田

はい。前作は最初にけっこうな試行錯誤(※1)がありましたが、
今回は、最初から『トモコレ』をつくると決めていたので、
つくることそのものに集中していた時間は、
前作よりずいぶん長かったですよね。
それでは、坂本さんから、自己紹介をお願いします。

※1
前作は最初にけっこうな試行錯誤=『大人のオンナの占い手帳』として企画がはじまった前作について、くわしくは社長が訊く『トモダチコレクション』をご覧ください。

坂本

プロデューサーの坂本です。
今回は高橋さんや、中江さんと
「今度の『トモコレ』をどういうものにしようか?」とか、
「前作できなかったことで
 今回、実現させたいことは何なのか?」とか、
「新作として何が望まれているのか?」とか、
密に相談しながら開発を進めてきました。

岩田

時には見守る人であったり、
相談相手であったり、つくる当事者であったりと、
それらを行ったりきたりする感じですか?

坂本

そうですね。
意外にいろいろと実務的なこともやりましたね。

岩田

「じつはけっこうつくってます」
ということですか?(笑)

坂本

はい、けっこうつくってます(笑)。

高橋

企画開発部の高橋です。
前作同様、今回もディレクターを担当しました。
坂本さんや中江さんと、企画や仕様を考えたり、
スケジュールの管理を担当しました。

岩田

高橋さんは前作の『トモコレ』のあと、
3DSの本体機能にもかかわっていましたよね。

高橋

はい、本体機能のホームメニューの
ディレクションも担当していました。
でもその間も、坂本さんと今作の話をしていたので、
頭は半分、『トモコレ』状態でした(笑)。

岩田

「はやく本体機能を終えて、
 『トモコレ』をつくりたかったらしい」
と聞いていましたよ?(笑)

一同

(笑)

中江

企画開発部の中江です。
前作ではメインプログラムの担当でしたが、
今作は企画を考えたり、
プログラマーさんを取りまとめたり、
みなさんの開発環境をサポートしたりしていました。
前回とはだいぶ仕事の内容が変わりましたので、
苦労した部分もあり、楽しかった部分もありました。

岡本

企画開発部の岡本です。
前作と同じくアートディレクターを担当しました。

岩田

今回は前作とくらべて、
デザイナーの人数がどっと増えましたけど、
まとめるだけでも大変じゃなかったですか?

岡本

あ、はい、大変でした・・・。
でも、よくできる方たちが集まっていたので、
助かりました。

岩田

くわしい話はのちほどにするとして、
でははじめに、このプロジェクトが
はじまった話からお訊きします。
開発がスタートしたのは、まだ高橋さんが
本体機能をつくっているころからですか?

高橋

そうですね。
「今作は何が求められているのか?」
という話から打ち合わせがはじまりました。

岩田

わりと、すぐにその答えは出たんですか?

坂本

いえ、そのあたりの判断がいちばん大変でした。
「今回も同じノリでいいのか?」とか、
「手ごたえの部分を見直すべきなのか?」とか、
そういうところから議論をはじめたので、
方向性の腹をくくるまで、時間はかかりました。

岩田

以前の『トモコレ』はビジュアルを脱力気味に、
でもユニークで面白いことを見せるつくりにした結果、
わたしたちが事前に考えていた以上に、お客さんに
ポジティブに受け入れていただけたと感じています。
ただ今回は3DSという、
DSよりもずっと豪華な世界がつくれるハードでしたから、
「『トモコレ』というテーマとかみ合うのか?」
ということが、最初に頭を悩ませた
問題だったんじゃないですか?

坂本

そうですねぇ・・・。
(高橋さんに)どうでしたか?

高橋

ビジュアルの方向性に関しては、
「DS版のビジュアルでいいんじゃないか?」
っていう話も最初はしていたんですが、
やっぱり・・・(岡本さんに)どうぞ(笑)。

岡本

岩田

高橋さんというのはNINTENDO64時代に
任天堂の中で先頭に立ってCG技術を極めていった人で、
映像技術系にすごくこだわりがあるんです。
でも、『トモコレ』における「次世代感」っていうと、
『トモコレ』は変に力を込めないところがウリなので、
言葉としては対極にあるような気もしますね(笑)。

坂本

まさにそのとおりで、最初の絵づくりができて
「わりといいかも!」と思っていたら、
高橋さんから
「まだ次世代感がない!」と言われてしまって・・・。
みんな困り果ててしまったんです(笑)。

高橋

その後、「そこにいる感じをもっと表現する」
という方向の試行錯誤を重ねていったんですけど、
ビジュアル面での戦いは、そこから
半年は続いていたように思います。

岩田

でも結果的に、きれいに表現されている部分と、
わざと隙を残してある部分の案配が面白くて、
独特の感じになりましたね。

高橋

そうですね。
そこにある「空気感」を大事につくっていきました。

坂本

Miiたちが動いてあの声でしゃべると、
やっぱりこれまでと同じ雰囲気に見えるんです。
そこが『トモコレ』のMiiの強みでもあり、
姿がきれいになっても、
人格そのものは変わらないんです。

岩田

声については「次世代感」は考えなかったんですか?

坂本

「あの声じゃないとこのソフトじゃなくなる」
っていうこだわりが、僕はかなり強かったんです。
「たどたどしいけど、わりとちゃんとしゃべる」
という独特の個性が、この世界観に合っていて、
『トモコレ』が成立した大きな要因だと思っています。
前作のMiiたちに強い愛着や思い入れがある人にとって
「そのMiiの声」は大切な要素だと思います。

岩田

それで制作が本格的にスタートしたあと、
最初に何をつくったんですか?

高橋

最初・・・(中江さんに)何をしていましたっけ?

中江

最初は、お店やミニゲームなどの
できそうなところだけを先行して、
バラバラにつくっていました。

岩田

あの・・・そういうつくりかたをすると、
あとで収拾がつかなくなったりするんですけど(笑)。
どうしてうまくいったんですか?

高橋

まず最初に、前作から絶対に残すものを決めたあと、
できるところから順番につくったから
うまくいったんだと思います。

岩田

ああ、なるほど。

高橋

今回は新要素として、
結婚したカップルに子供が生まれるんですけど、
これは制作がはじまる前から相談をしていました。

坂本

実際に高橋さんにお子さんが生まれたんです。
リアルな体験が参考になるから、よかったよね。

岩田

うん、当事者として経験するのは
濃い体験ですから、
ディテールが実感できるでしょうね。

高橋

そうですね(笑)。
デザイナーさんに子供の動きとかを
指導していましたけど・・・。

岩田

「我が家ではこうやって動いているんです」
みたいな感じですか?

高橋

「はいはい」の仕方ですとか・・・。
「もっと赤ちゃんは泣きやまないよ」とか(笑)。

岩田

(笑)。
生まれる子供の顔は、
プログラム上では両親を引き継ぐんですか?

高橋

はい。両親のパーツを引き継ぐので、
目はお父さん似だけど、
全体の形はお母さん似とか、
そのへんは開発中もすごく盛り上がりました。