7. 身近なコミュニケーションの手助けに

岩田

『トモコレ』をつくっていく課程で、
ディレクターの高橋さんとは、
めざす考えは一致していたんですか? 
それとも対立があったりしたんですか?

坂本

基本的にめざしてるものは同じだったと思います。
けど、細かいところでのこだわりとか
ニュアンスのようなものは、やはり違ってたりして。
いちばん大きかったのは、“生年月日問題”ですね。

岩田

ちょっと詳しく話してもらえますか。

坂本

生年月日を入力して、
それをもとに占いとか、相性診断をやっていこうと。

岩田

そのシステムは『とっとこハム太郎』のときから
とてもよくできていたと評判でしたよね。

坂本

そうなんです。
そもそも、生年月日を入れるというのは、
四柱推命とかでも実績があるように、
とても説得力があると思っているんです。
それが本当に正しいのかは別にして、
しっかりとした裏付けがある感じを出すためにも
生年月日の入力は欠かせないと思ったんですね。
ところが、モニターの意見をとってみると、
友だちの生年月日は知らなかったり
聞きにくいという話もあって・・・。

岩田

とくに女性に対しては
生年月日が聞きにくかったりしますよね。

坂本

ええ。ところが友だちどうしでも、
「わざわざ生年月日を聞くのは気が重い」
という意見がわりとあったんです。
で、高橋さんもそこをすごく気にしていて、
占いみたいなものの裏付けとしての生年月日入力は、
彼も賛成だったんですが
商品として見た場合、
そこでつまずいてしまうのは、どうなんだろうと。

岩田

Miiを登録しようとすると
その入口で「生年月日を入れてください」と言われて、
そこで固まってしまうのは間違ってると考えたんですね。

坂本

はい。生年月日を入れなくても
登録できることはできるんですが、
それを入れなければ見られないコンテンツも
たくさんあるんですよ。
たとえば適職診断では、デザイナーが
とてもたくさんの職業の絵を描いていて、
高橋さんもその頑張りをよく知ってるんです。
でも、生年月日を入力しないと
適職診断ができませんので・・・。

岩田

スタッフがせっかく苦労して描いた絵が
見てもらえなくなるんですね。

坂本

高橋さんはディレクターとして
それがとても申し訳ないとも思い、
やはり生年月日がハードルになるんじゃないかと思っていたんです。
それでも、最終的に僕が「やらせてほしい」と頼んで、
彼が生年月日入力を受け入れてくれたんです。

岩田

坂本さんがそこまで
生年月日入力にこだわったのはどうしてなんですか?

坂本

僕がそこまでこだわったのは、
やっぱり生年月日を人に聞くという行為も、
遊びにしたかったからなんです。
どうやったらうまいこと、
あの人の生年月日を知れるんだろうかとか、
ちょっと極端なことを言いますと、
生年月日を平気で聞けないような人を
『トモコレ』に入れても面白くないんじゃないのかと。

岩田

実世界と地続きのソフトなんですね。

坂本

はい。ただ、うちの奥さんに言わせると、
「子どもに年がばれる」と言うんです。
隠してるのがおかしいんですけど(笑)。

岩田

(笑)

坂本

「これ、どうしてくれるの?」と。

岩田

まあ、母親というのは、
自分の年齢を多少サバを読むこともあるみたいですよね、
子どもに対しても。
自分の子どもにサバを読んでどうすると思うんだけど(笑)。

坂本

ですよね(笑)。
あと、「Miiニュース」というのがあって・・・。

岩田

はい。島で起こった出来事が
ニュースとして放送されるんですね。

坂本

あれで、「街のMiiに聞きました」と言って
街角のMiiがコメントするコーナーがあるんですけど、
そのときに
それを見たうちの奥さんが
「余計なものが表示されている」と。

岩田

(笑)

坂本

でも、そうすることで
リアリティも生まれると思うんです。
それに生年月日があることで、
分身としてのMiiは、
自分や友だちのイコールに近くなると思うんですね。

岩田

しかも感情移入しやすくなりますしね。
そもそもMiiは
このソフトの副産物として生まれたわけじゃないですか。

坂本

そうですね。

岩田

いまでこそMiiは世の中にあふれていて
その存在は当たり前のように言われてますけど、
実は坂本さんが
『大人のオンナの占い手帳』をつくろうとしなければ
生まれてなかったんですよね。

坂本

あのソフトをつくってるときに、
スタッフがモンタージュ的なものをつくろうと
言い出さなかったら、
絶対生まれてないでしょうね。

岩田

しかも、坂本さんの
“規格外の顔”というフレーズがなかったら・・・。

坂本

僕が“規格外の顔”じゃなくて男前だったら・・・。

岩田

(笑)

坂本

さらに、僕が岩田さんに見せなければ・・・。

岩田

わたしもそれを宮本さんに見せなければ
Miiは生まれてなかったかもしれないですね。

坂本

そのMiiが生まれてなければ
『トモコレ』をつくることもなかったかもしれませんし。

岩田

いろんなことが全部つながってるんですよね。

坂本

不思議ですね。

岩田

不思議ですよね。
そんな不思議な『トモダチコレクション』を
お客さんにどのように楽しんでほしいか、
最後にひとことメッセージをお願いします。

坂本

自分の本当に親しい人、
家族であったり、
自分の愛する人とか
好きな人を『トモコレ』に入れて、
その様子をまるで本人を見るような気持ちで、
お世話してあげたり、観察するだけでも
じゅうぶん面白いと思うんですけど、
それに加えて、このソフトのテーマである、
現実世界の人とも横のつながりを広げていただいて、
『トモコレ』を中心にいろんな人と、
より親しくなっていただけるとうれしいですね。

岩田

Miiをつくるのが苦手な人に対しては?

坂本

似顔絵は、得手不得手があるみたいで、
「僕、つくれない」という人もいたりとか、
「似てる、似てない」とか言われたりもするんですけど、
最終的にMiiの似顔絵というのは、
つくった人が、「これは僕の奥さんです」と言えば、
それでいいと思ってるんです。
似てる似てないといったことはあまり気にせずに、
どんどん思い入れのある人を登録していってほしいなと思います。

岩田

そうですね。
上手であることに、こだわる必要はあまりないと。

坂本

最初は似てないのかなと思っても、
次第に似てるように感じるようにもなりますしね。
だから、かまえることなく、
どんどん遊んでもらいたいなあと。
それに、ゲーム機のなかだけでなく、
実際に人間どうしで楽しんでほしいんです。
誕生日を聞きにくいかもしれないですけど、
聞けば、より仲良くなるキッカケになるかもしれませんし、
Miiニュースを見ていたら
「今日は○○さんの誕生日です」と言われて、
「ああそうか」と、
それで本人にオメデトウと言ったら
喜ばれたということもありますので。
『トモコレ』で、身近なコミュニケーションの
いいお手伝いができればいいなと思っています。

岩田

長い間、お疲れ様でした。
これからどんなことが起こるのか、発売日が楽しみです。