2. ソフトを買っても遊び方がわからない

波多野

わたしは買い物に出かけることが多いのですが、
ゲームに限らず、いろんな商品を売るお店がたくさんありますね。
そのなかで、いちばんわかりやすいのは、
八百屋さんだと思っているんです。
大根とニンジンを間違える人はいません。

岩田

はい(笑)。

波多野

カボチャとスイカを間違える人もいません。
鮮度は要求されますけど、商品を間違えるようなことは、
よほどのことがない限りありませんよね。
ところがわたしたちの商品は、
カボチャかスイカかニンジンか大根か、
ひと目見ただけではわからないんです。

岩田

たしかにゲームの場合、同じパッケージに入っていますし、
遊んでみるまでは、それがどんな“味”なのか
わかりにくい商品ですよね。

波多野

ですから、まず、わかりやすく陳列すること、
そして、いかに商品の説明をするか、
この2点がすごく重要だと思うんです。
そこで、本屋さんも見ました。電器店も見ました。
いろんなお店を見るようになって、
「ゲーム売り場というのは、お客さんに対して、
まだまだわかりづらいところがあるな」と感じたんです。

岩田

他の商品の売り場をいろいろ見回ると、
ゲーム売り場がお客さんに
あまり親切でない構造のままではないかと、
改めて強く感じられたということなんですね。

波多野

そこで、お客さんたちは
売り場でどんなことに迷ってらっしゃるのか、
どうして迷っていらっしゃるのか、
そういう問題を肌で感じてもらうために、
任天堂の営業部員たちに
販売店さんの売り場に立つことを提案してみたんです。

岩田

それが、営業本部会議で
波多野さんが打ち出した「コンシェルジュ構想」ですね。

波多野

はい。販売店さんのご協力をいただき、
2008年の3月から、およそ2ヵ月間にわたって、
営業部員に店頭に立ってもらって
実際にお客さんと向き合ってもらいました。
お客さんとの対話を通じて、
実際にどうしてお客さんが迷われているのか、
どういう知識を持って、お客さんは買いに来られているのか、
ゲームを購入されるキッカケは何だったのか、など
いろんなことがわかってきたんです。
そこで、そのあとも調査を続けることにして、
外部の調査会社に協力をお願いして、
専門の調査員の方に、コンシェルジュを依頼しました。
すると、お客さんの様子が
より精度が高い状態でわかってきたんです。

岩田

たとえばどんなことがわかったのですか?

波多野

たとえば、テレビの宣伝を見て、
ソフトを買いに来られたお客さんがいらっしゃいます。
ところが、宣伝のことはよく覚えられていても、
商品名は思い出せない方がとても多いんです。
だから「この俳優さんが出ているソフトが欲しい」と
店員さんにお尋ねになるのですが・・・。

岩田

店員さんがそのCMをご存じであればいいのですが、
そうでないと、そのソフトを特定する
手がかりがまったくないんですね。

波多野

そうなんです。
さらに困ったのは、知り合いから「面白いから」とすすめられて、
それでやってみようと思ったけど、
まったくタイトルを覚えておられないというケースもありまして。

岩田

「なんかああいうソフトください」と言われても
店員さんは探しようがないんですね。
品揃えが増えたことで、むしろ困った問題が生まれたんですね。
たとえば「英語のソフトが欲しい」と言われても、
10種類、20種類もあったりしますので、
お客さんの求める英語のソフトが
そのなかのどれなのか、まったくわかりませんし。

波多野

その通りです。
そういう混乱状態が
だんだん深くなっていったような気がするんです。
もっと極端な例を挙げますと、
初めて『脳を鍛える』を購入されたお客さんが、
家に帰って、さっそく遊んでみようと
パッケージを開けてみたところ、
中からちっちゃいのが出てきた、とおっしゃるんです。

岩田

パッケージの中には
ソフトが入っているのが当然ですよね。

波多野

ところが、その方は
ハードを持っていらっしゃらなかったんです。

岩田

ああ・・・。

波多野

「どうやって遊ぶんだ、これは」と。

岩田

そのお客さんは、
ハードを買わなければいけないことを
ご存じなかったんですね。

波多野

そうなんです。
でも、そのようなお客さんも
わたしたちにとっては大切なお客さんなんですね。

岩田

“ゲーム人口の拡大”というのは、
わたしたちの想像を絶する、新たなお客さんを生んだんですね。

竹内

実はさらにもっと極端な例がありまして。

岩田

竹内さんはコンシェルジュのときに、
膨大なデータが集まってくるのを集計していたんですね。

竹内

はい。毎週300件ほど、
説明員の方のコメントが寄せられてくるんですけれども、
その中身を読むと、びっくりするようなことがあったんです。
たとえば、DSのソフトを買われたお客さんが、
「どうやって、DSの本体に入れるんだ?」と。

岩田

え?

竹内

パッケージがでかいじゃないですか。
そのパッケージがDSに入らないというので
困られていたそうなんです。

岩田

ええーっ!?

竹内

それを、50代と20代の親子の方がいっしょになって
お困りになっていたそうなんです。
その当時は、すでに累計2300万台くらいのDSが出ていて、
多くの方々が持っていらっしゃいましたが、やっぱりまだ・・・。

岩田

DSがたくさん普及しているから、
どうやって遊べばいいのかは、すでに社会の常識になっていると、
わたしたちがそのように考えることは、
実は思い上がりも甚だしいということですね。

竹内

そう思います。
そこで、コンシェルジュからの情報を集計したところ、
商品名を言えて、内容もだいたいわかっておられるお客さんは、
全体のわずか10パーセントしかいらっしゃらないし、
逆に、何もご存じないというお客さんが半分近くいらっしゃったんです。

岩田

任天堂がコンシェルジュを派遣できた店舗は、
全国でたかだか30店とか、それくらいですから、
現実にはそれ以外の膨大なお店で、
迷ったまま、欲しい商品にたどりつけないお客さんが
たくさんいらっしゃるということですよね。

竹内

はい。ですから、
これは思った以上に深刻だと思いました。

波多野

そういうお客さんが増えてきたことに対応するには、
もちろん販売店さんのご協力をいただかなければいけません。
そのためにも、わたしたちとして
ちゃんとフォローする必要を強く感じるようになったんですね。

竹内

そこで、もう一度
ゼロから考え直す必要があると感じまして、
「ニンテンドーDS はじめての人に。」と
「Wii はじめての人に。」という小冊子をつくることにしたんです。

岩田

店頭に置いてある横開きのパンフレットですね。

竹内

「Wii はじめての人に。」の1ページ目を開くと
左に「Wiiってなに?」という問いかけからはじまり、
右ページには「テレビにつないで、
ソフトをセットして遊ぶゲーム機です」と。
それは、わたしたちにとってはすごく常識的なことなんですけど、
そのような小冊子が、実は店頭で求められているということが、
コンシェルジュの統計を通じてわかったんです。

岩田

ゲーム業界にいる人にとっては常識でも、
実はそれが大きな盲点になることもあるということですね。
お客さんが困っておられるんじゃないかと思って
実際に店頭に立って調べてみると、
わたしたちが事前に想定していた以上に問題が根深くて、
「こういったことまで、
しっかりお伝えしていかなければいけないんだ」
ということを、思い知らされたということでしょうね。

竹内

はい。思い知らされました。

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