4. 真夏の喫茶店でSOS

岩田

先ほど波多野さんは、八百屋さんを例に挙げて、
わかりやすい陳列と商品を説明する大切さを話しておられましたが、
商品の説明を突き詰めていくと、
今回の「おさがしガイド」にたどりついたわけですね。
このような検索ツールをつくることになったのは
どこからのスタートだったんですか?

波多野

わたしの頭のなかで
おぼろげなイメージはあったんです。
でも、具体的なことを彼らに話した記憶はないんです。

岩田

それでは、波多野さんが明確に、
「こういうものをつくれ」と言ったのではなく、
「こういうものがあるべきだ」ということを、
いろんなかたちで話していたら、
ボトムアップから生まれてきた企画だったんですね。

波多野

そうです。
ですから、わたしがいろいろ言ってきたことを、
彼らなりに考えて、カタチにしてくれたんですね。

竹内

波多野さんは当時、
“販売開発プロジェクト”ということを言ってたんです。

岩田

そうでしたね。
「販売方法も開発する時代だろう」ということで
“販売開発”という新しい言葉ができたんですよね。
わたしも「なるほど」と思いました。

竹内

そこで、その“販売開発プロジェクト”に
各部門から何人か集まりまして、
週に1度、どんな売り場をつくっていくかという
話し合いをする場を設けるようにしたんです。
そのときに、わたしが
「検索ツールのようなものがあったらいい」
という話をしたことが、そもそものはじまりなんです。

岩田

竹内さんの頭のなかには、
検索ツールの完成像はどのくらいあったのですか?

竹内

正直な話、まだ何もありませんでした・・・。

岩田

お店に来られたお客さんに触っていただくと、
ソフトのことがご理解いただけるものがあったらいいと、
そんなイメージだったのですか?

竹内

そんな感じです。
そこで、その検索ツールの条件を3つ挙げたんです。
1つ目が「わかりやすくて操作しやすい」。
まあ、当たり前のことなんですが(笑)。

岩田

はい(笑)。

竹内

2つ目が「お客さんの希望の情報が入手しやすい」。
で、3つ目が「操作するのが恥ずかしくない」と。
「この3つだけは絶対にやってね」と、
あとは尾田さんに・・・。

岩田

尾田さんは、そんな基本的な条件だけで
「検索ツールをつくれ」というお題を与えられたんですね。

尾田

・・・そうなんです(笑)。

竹内

「あとはよろしく!」と。

岩田

ひどいこと、しますねえ(笑)。

一同

(笑)

竹内

そこは信頼してましたから。

岩田

尾田さん、そのときどう思いました?
途方に暮れませんでしたか?

尾田

それはもう、どこから手をつけたらいいのか・・・。

岩田

いつもモノをつくっている開発者が
そのようなお題を投げられても、
別に驚嘆には値しませんけど、
ふだんは開発の仕事をしている人じゃない人に
投げるようなお題ではありませんよね。

尾田

ですから、どうやって進めたらいいのかと、
途方に暮れていた時期がかなり長かったんです。
なにしろ、社内の開発の人たちはとても忙しくて
手を借りることができないという、
そんな状況にありましたので、
外部の開発会社さんに協力を依頼しなくてはならず、
だからといって、どう進めたらいいのかと、
悶々と悩んでいたりしていたんです。

岩田

とっかかりはどこからついたんですか?

尾田

そうですね・・・
どういう要素を盛り込んだらいいのか、
イメージはなんとなくあったんです。
ところが、どうすればお客さんに操作していただきやすい
インターフェイスになるのかという部分で、
すごく悩んでしまったんです。
で、正直な話をしますと・・・
その時点で自分がいっぱいいっぱいになってしまって、
「もう限界だ」と思ったんです。

竹内

そのとき、尾田さんがSOSを出してきまして。

岩田

尾田さんは開発を専門にされていないので
そもそもスムーズに仕事は進むわけがないですよね。
もし、お題を出されて、ホイッとできたら驚きですし、
「開発に来ない?」と言いたくなります(笑)。

尾田

(笑)。
そこで、竹内さんに、泣きを入れると言いますか、
相談することにしたんです。

竹内

それが休みの土曜日でした。
いきなり近所の喫茶店に呼び出されてしまいました(笑)。

岩田

それくらい尾田さんは
いっぱいいっぱいになっていたんですね。

尾田

はい。すごく暑い夏の日でした・・・。

竹内

それで、喫茶店で会ったら、
ずいぶん深刻な表情で、
「もうダメです」という話を聞かされました。

岩田

とっかかりが見えないときがいちばん苦しいですからね。
まあ、開発者の苦労もちょっとわかったという感じでしょうか。

尾田

ちょっとどころか、すごくわかりました。

岩田

それで、喫茶店で話をしてから
状況は大きく変わったんですか?

尾田

はい、竹内さんがいろいろ動いてくださったようで、
その日を境にいろいろな方のサポートを
受けられるようになりました。

岩田

そこから、酒井さんも
グッと深く関与するようになったんですか?

酒井

そうですね。もともとわたしは
最初から“販売開発プロジェクト”のメンバーでもありましたし、
以前から『みんなのニンテンドーチャンネル』を
店頭で利用できるようになれば、
そこからいろいろなことが生まれてくるのではと考えていましたので。
それから、ここにいる3人は、偶然ですけど
昔、同じ時期に営業の現場にいたことがありました。
そのころからお店の方々と相談しながら、
よりよい売り場をつくりたいという思いが
根底にあったのだと思います。

岩田

酒井さんは尾田さんに対して
どんなアドバイスをしたんですか?

酒井

わたしは、『みんなのニンテンドーチャンネル』を運営していますので、
「こういうデータがあるので、検索ツールに使えるよ」と。

岩田

たとえば世代別、あるいは男女別に
「おすすめソフト」がわかるようなアイデアも
そのときに持っていたんですね。

酒井

はい。そもそも『みんなのニンテンドーチャンネル』には
ものすごい数のソフトのデータベースが集まっていて、
それぞれのソフトを紹介するムービーを見ることができます。
それらを「お店でも見られるようにしましょう」と。
そこで、簡単に見ていただくためには、どんな構成がいいのか、
どういうインターフェイスにしたらいいのか、ということを
互いにやりとりしながらはじめました。

岩田

尾田さん、
酒井さんに後光がさして見えませんでした?

尾田

はい、見えました(笑)。
本当に神頼みではないんですけど、
いろいろアドバイスをもらいました。

岩田

迷っていたら、ヒントをくれる人だったんですね。

酒井

わたしたち同期なんです。
だから、お互いに言いたいことは遠慮なく言えますし。

岩田

ああ、2人は同期だったんですか。

尾田

そうなんです。それでいろいろお願いしやすかったり、
相談しやすかったという面がありました。

酒井

同期じゃなかったら言えなかったようなことも、
けっこう言ってたと思いますし(笑)。

竹内

・・・僕には言えないような話も?

尾田・酒井

はい(笑)。

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