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2008年3月期 決算説明会
質疑応答
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Q 1  今期のハードの値下げについて、どのように考えているのか。
A 1

取締役社長 岩田 聡:

 今回の業績予想では、ハードの値下げを前提にした計画は立てておりません。また、ハードの値下げが必要になるという考え方も持っておりません。時間が経てば経つほど、(段階的に)ハードの値段が下がっていくというのは、早く買うお客様ほど損であるということを明言するモデルであって、私はそのモデルが正しいとは思っておりません。時間が経てば必ず値段が下がるのだという前提で経営をするのは、むしろおかしいと思っています。

Q 2  ファイアーエムブレムというソフトは、私は任天堂の最高の名作だと思うが、そのエンディングに山内さんとか岩田さんの名前が総合プロデューサーとして挙がっている。どのようにかかわっているのか教えてほしい。
A 2

岩田:

 今ファイアーエムブレムを開発しているプロデューサーの相談相手は私なので、私はファイアーエムブレムを開発しているプロデューサーの相談に乗るのが仕事です。総指揮という定義は時代とともに変わりますので、私のやっていることは山内の時代とは少し違うのではないかと思います。

Q 3  Wiiウェアについてもう少し詳しく教えてほしい。日本のサービス開始後、新規参入されるメーカーさん等の反応に変化があるか。この分野の成長を期待しているが、今後のソフトの投入数や金額面でのイメージはどのようにお持ちなのか教えてほしい。
A 3

岩田:

 ソフトの参入については、少しずつ増えているという印象を持っています。また、すでに配信を開始されたソフトメーカーさんの中には、1作目の配信の結果がまずまずよかったので、まだ日本だけしか配信していませんが、世界中で見れば何倍かマーケットがあるわけですから、「日本だけでこれだけ期待できるなら次もぜひやりたい」ということで、早速2つ目を始めたいと考えて動かれているところもあるようです。

 一方で、Wiiウェアがどれくらいのスピードでお客様に届いていくのかという予想は、非常に難しいと思っています。もし私たちが在庫を持って事前に用意をしないとお客様に届けられないのであれば、一生懸命予想してこれぐらいの数だと考えて手配するわけですが、電子的に配信する以上、われわれが物理的にモノを用意しないといけないということではありません。ですから、正確にこのくらいのビジネス規模になるだろうというところまで予想しておりませんので、お答えする材料はありません。

 しかし、少し長い目で見ると(Wiiウェアのような電子配信ビジネスが)重要な位置づけになってくるのではないかと思います。それが1年で臨界点をポンと超えていくのか、3年、5年かかって超えていくのか、電子的なソフト配信ビジネスの将来はまだ不透明であると考えています。ただ必ずやっておかなければいけないことであると思います。ただし、私はパッケージビジネスが単純に電子配信ビジネスに置き換わるとは考えておりません。パッケージにはパッケージのいい部分があり、配信ビジネスには配信ビジネスのいい部分があると思っています。両方が大きく栄えていくようなモデルを目指したいと思っています。

Q 4  プラットフォームサイクルの話について。DSは日本では、2006年ごろ火がついて、それが2007年になり、人気がやや鎮静化しつつある状況とのことだが、ヨーロッパで昨年一気に盛り上がったあと、同じような経過をたどる心配はないのか。同時にDSとWiiは直感的な操作である反面、やりこみ要素が少ない、飽きやすいともいわれているが、同じようにDSがヨーロッパでも人気が落ち込む、あるいはWiiも同じように近い将来、鎮静化してしまうという不安はないか。
A 4

岩田:

 まず「DSが日本で2年ぐらいで少し勢いが鈍ってきたので、1年遅れ、1年半遅れでアメリカやヨーロッパが、同じぐらいの時間でそういう状況になるのではないか」というご指摘についてですが、たとえばヨーロッパと一口にいっても、イギリスのように盛り上がりまでのスピードが速い国とドイツのようにゆっくりの国とを一緒にするのは正しくないのかもしれません。

 ただ、(アメリカもヨーロッパも)日本よりもはるかに人の数が多いです。私はゲーム機普及の究極の目標は1人1台だと申し上げたことがありますが、人の数が多いということは、それだけ市場の潜在ポテンシャルが大きいということです。ですから、(アメリカやヨーロッパは)日本よりも人の数が多いし、日本のように情報が早く伝わり、早く消費されてしまう国は他にないと私は感じていますので、日本よりもサイクルは少し長くなるのではないかというのが私の仮説です。

 もちろん、油断して「絶対に大丈夫」という気はないですが、日本と同じサイクルで、すぐに今の状況が変わってしまうとは感じていません。また(市場の流れが変わる)兆候を注意深く見つめていますが、今のところその兆候は感じていません。

 やりこみ要素の問題は、ハードの特質で決まるわけではなく、一つひとつのソフトにどれだけのやりこみ要素を持たせるか、そしてお客様に直感的にわかりやすいという部分と、やりこめば、「噛めば噛むほど味が出ますよ」という部分のバランスをどうご提示するか、ということで決まるものだと思います。たとえば今日本で売られているDSのソフトにも、直感操作が特徴のソフトがいっぱいある一方で、やりこみ要素が豊富なソフトもあります。そのバランスは時とともにだんだん変わっていくのではないかと思っています。「DSやWiiのソフトはすべて直感的にわかりやすい代わりに底が浅い」というのは、表面的な見方であると思います。

 Wiiのことですが、1年前の今ごろ、「Wiiは発売して数カ月でえらく勢いがいいけど、すぐ飽きるんじゃないか」という話を多くの方がされていました。1年前にその話をされていた方は、1年経ってもまだ同じことをおっしゃるのか、それとも「これからいよいよ本物だ、次々とソフトがつくられていい循環が回るサイクルに入った」と捉えられるのかは、いろいろな見方があるかと思います。

 任天堂としても、世界中の需要に応えるために今年の夏に向けて増産をして、任天堂にとっては今まで売ったことがない、それどころか「据置型ゲーム機の世界で1年に誰もこれほどハードを売ったことはない」というところにチャレンジするわけです。ですから、われわれは「今の勢いはある程度本物と見てよいのではないか」という判断をして進めています。ただ、「お客様が飽きてしまえばそれでおしまい」というのがわれわれの仕事ですから、「お客様が飽きられるよりも早く次の提案を続けるのだ」ということだけは、しっかり肝に銘じて進めたいと思います。

Q 5  日本は前世代のハードのときにハード志向にかなり偏った影響もあって、深刻なゲーム離れがあったが、御社の努力もあって、今ようやく戻ってきた。
 でも、成長率としてはちょっと低くなっている。このまま続くと日本のプレゼンスが1桁になってしまうのではないかと危惧している。今までゲーム市場は日本で文化的に発信されて拡大してきたのが、変わってくるのではないかと危惧している。これを岩田さんはどのように思っているのか。もしそういう状況であれば、これを変えるような方策を考えているのか。Wiiウェアの話でも、日本では小さい開発会社が開発するという状況にはまだなっていないので、そのへんをどう見ているのかを解説してほしい。
A 5

岩田:

 2003年でしたか、私は東京ゲームショウで基調講演をさせていただいたとき、「5年前と当時」、今からすると10年前と5年前の比較をして、「(任天堂も含め)こんなに日本のソフトメーカーさんのプレゼンスが海外(市場)で下がってしまった」ということをお伝えしました。その当時は任天堂のプレゼンスも下がっていた時期でしたので、われわれも大きなことを申し上げられる状態ではなかったのです。10年ほど前は日本のゲーム産業のプレゼンスは世界中で非常に大きく、海外のパブリッシャーさんを大きくリードしていた時期があったと思いますが、海外のパブリッシャーさんがつくりだされた新しいビジネスの構造が海外のマーケットにうまくフィットして、日本のソフトメーカーさんのプレゼンスが下がったということは言えると思います。そのことについて、日本全体で盛り返すための動きは十分にできていないのではないかと思います。

 実際にソフトの販売数について統計を取りますと、日本(市場)のプレゼンスは低いんです。携帯型ゲーム機は比較的日本(市場)のプレゼンスは高いのですが、据置型になりますとハード以上にソフトの本数のプレゼンスが低いんです。このまま放っておくと1桁になるのではないかと心配をされているというお話をされましたが、今世界全体で売れる据置型のソフトの本数で、日本の割合は15%を切っていると思います。かつては4分の1ぐらいあったと思います。ですから、(日本では)据置型のソフトが以前のようには売れていないということです。

 これは、「日本という社会が皆さんお忙しく、テレビの前にどかっと座って、長時間ゲームを楽しむということが生活と合わなくなっている方が増えている」ということで、その部分が携帯型ゲーム機のマーケットが大きくなったというところに表れていると思います。一方で、今でも世界中で据置型ゲーム機のマーケットは非常に大きいですから、世界のマーケットに支持していただける(据置型の)ソフトをつくるということは大切だと思います。

 Wiiウェアに関しては、現時点では日本の参加される会社さんは大手の会社さんが多く、海外に行くと小規模の会社さんが多いという特徴があります。私はどこかの小規模の会社の方がWiiウェアで成功されて、それが事例として紹介されることで、新しく小規模の会社の方がどんどんチャレンジを進めるという循環ができることが望ましいと思っていて、何とかそういういい例が一つできるといいなと思っています。また、そういうことについて、任天堂が何をサポートすると一番有効なのかを考えたいと思っています。

 私たちは日本のパブリッシャーさんといわれる大手のソフトメーカーさんたちといろいろなお付き合いがありますが、そこで海外展開をどうするのかということが大きなテーマになっています。これはちょっと特殊な例ではありますが、一つ大変よかったなと思っている例は、セガさんと一緒に取り組みました「マリオ&ソニックの北京オリンピックのゲーム」です。北京オリンピックのライセンスをセガさんが取得されて、ゲームについての独占的な権利をお持ちで、「マリオとソニックの共演でゲームをつくりたい」というお申し出をいただいたことで、このプロジェクトが始まりました。

 日本ではマリオ&ソニックのゲームは任天堂が売りました。しかし、アメリカやヨーロッパではセガさんが売られていて、DSやWiiを合わせて500万本以上というプレスリリースを先ごろ出されていました。アメリカやヨーロッパで日本のパブリッシャーがこれほどのビックヒットを出したのは久しぶりで、一ついい例ができたかなと思います。ただし、単純にマリオをお貸しすればというものだとはもちろん思っていません。しかし、うまく企画のツボがはまって、お互いの得意分野がうまくかみ合ったときに、このような協力関係によってよい結果が出ることで、最終的に日本のソフトメーカーさんのプレゼンスが上がることに、任天堂もお手伝いできたらよいなとは思っています。

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