株主・投資家向け情報 > 株式情報 > 株主総会 > 第70期 定時株主総会 質疑応答

株主・投資家向け情報

2010年6月29日(火) 第70期 定時株主総会
質疑応答
Q 4  Wiiが出て株価がぐっと上昇した。3DSを出されるということで、株価が上がるかどうかわからないが、次の新機種は考えているのか。近々3DSの後を追いかけてくるような商品が出ることを、我々として期待していいのか。
A 4

岩田:

 当然のことながら、新製品の開発は常に進めております。いつ聞かれても「いつでも(新製品を)つくっていますよ」とお答えします。というのは、開発というのは新製品をつくるのが仕事です。製品をつくって、出し終えたら、すぐ次(の開発)が始まるわけです。ニンテンドーDSの後、いくつかのモデルが出ましたけれども、それでもニンテンドーDSシリーズとしてはいつか寿命が尽きる時が来ます。「では、その時のために次はどうするんだ」ということをずっと研究してきたわけです。ですから、ニンテンドー3DSも、もう6年がかりでつくっていると言えるわけです。「(ニンテンドー3DS以外の)他の製品はないのか」ということについて言えば、Wiiの先はどうするのかということも当然、研究しております。ただ、研究しているということと、「いつ出します」とか、「それはどんなものです」ということをいつ申し上げるかということは、別の問題でございます。残念ながら、娯楽というものの歴史は、模倣の歴史でもあるんですね。素晴らしいアイデアが出れば、特許等で守られないものは、たちどころに真似されてしまいます。そして、私どものビジネスというのは、お客様に良い意味で驚いていただいてなんぼ、という性質を持っています。何年も前から「お客様、こうやって驚いていただきますよ」と我々が予告して、3年後にやっと(製品が)できた時にお客様が驚いていただけるのかというと、それは極めて難しいわけです。ですから、私どもは基本的に、情報はなるべく引きつけてお出しするという考え方で、それが娯楽にとって良いことだと思って製品の発表タイミング等を考えております。ですので、当然私どもは持続的な成長発展をするためにも次なる製品を考えておりますけれども、「それはいつ、どのような形で、どんなものを発売する」ということがこの場で申し上げられないということを、どうかご理解ください。

Q 5  ライバルについてお聞きしたい。最近出てきたクラウド・コンピューティングをライバルとしてとらえていくのか、あるいは新しいアライアンスとして一緒にやっていくのか。
A 5

岩田:

 ライバルについてどのように考えているかということについては、以前ですと「ソニーさんやマイクロソフトさんとの競争」という形でよく取材を受けましたし、最近では、どうしても「アップルさんがライバルだ」というような形で、それを最初から記者の方が決めて取材に来られ、そういう記事になってしまうということがよく起こるんですね。一方で私どもは、自分たちのライバルは何だと考えているかというと、「お客様の興味関心と時間とエネルギーを奪い合うすべてのものがライバルだ」と思っています。特定のものだけをライバルだと考えますと、「そのライバルにいかに勝つか」という発想になるんですね。こういう発想になりますと、「相手の長所をどうやって潰すか」とか、「相手のできないことをどうやってやるか」ということばかりになり、非常に近視眼的なものの見方に陥ってしまいやすくなります。当社が実用品、生活必需品をつくっている会社で、どうすればお客様に商品を評価していただけるのかという軸がはっきりしている場合は、そのやり方もある程度有効なのかもしれませんが、当社の製品の場合、お客様にとって「面白い」とか、「良い意味で驚いていただく」というのはどういうことなのかというと、よくわからないわけです。それどころか、お客様に「どういうゲームで遊びたいですか」と聞いても、そのお客様のおっしゃるとおりにつくったら、すごく喜んでいただけるかというと、必ずしもそうとも言えません。むしろ、お客様が想像もしていなかったものがポンと出てきて、「あ、これは面白いわ」、「これが俺の欲しかったものだ!」と言っていただけるようなものをつくらなければならない、特殊な仕事なんですね。

 そういう特殊な仕事であるということを考えると、まず、特定のライバルというのを考えて、そことどう戦うかという発想を持つよりは、「人が興味を持つことってどんなこと?」、「人が時間やエネルギーを使うに値することってどんなこと?」、「どんなことを人は面白がっているの?」、という問いに対して、我々が感度をちゃんと持って答えていくことがまず大事なポイントだと思うんです。ですから、特定のライバルというのは意識していないということは、まずご理解ください。

 また、今クラウド・コンピューティングという言葉を使われましたが、これは最近、新聞等でもよく使われる言葉になりました。簡単にご説明しますと、今は非常にインターネットの通信網が発達しまして、皆さんの手元にある機械ですべてを実行しなくても、家庭にあるインターネットの回線や携帯電話の通信網といった通信手段を使い、インターネットの向こう側にあるコンピュータの集合をクラウドと呼んで、そちらのほうで複雑な処理をして返事をしてもらうというスタイルをとることによって、手元に大きな、高額なコンピュータを持たなくても、入力手段と表示手段だけがあれば、複雑な計算はインターネットの向こう側でやってくれるというのが、クラウド・コンピューティングの考え方です。また、クラウド・コンピューティングの有利な点は、あらかじめ設備をある会社が用意しますと、それをどのような用途にどう割り当てるかというのを非常に柔軟に切り替えられることです。例えばある日突然、サービスの需要が10倍になって、また3カ月経ったら何分の1かに減ってしまうというような、非常に変動性の大きなビジネスに対しては非常に有効な技術だと言われています。一方で、私どものやっている娯楽というのは、人が何かをすると機械が何かを返してくれるという、いわば「反応が命」の部分があるんですね。実は私どもがゲーム機の中で使っているさまざまな技術の中には、クラウド・コンピューティングに非常に向いているものと、それが全く向かないもの、むしろクラウドでやるとお客様は、「ボタンを押したのに返ってくるまでにワンテンポ遅れるので気持ちが悪い」というようになってしまうものの、両方があると考えています。ですから当社も、これはクラウド・コンピューティング向きだと思うものでは、きっと将来クラウド・コンピューティングを使うでしょうし、使うためにわざわざ自社で設備を一式持つというのは非効率ですので、そういうサービスをしている会社と組むことも当然出てくると思います。しかし一方で、あらゆる娯楽がクラウド・コンピューティングによって蹂躙(じゅうりん)されてしまうというようなシナリオもちょっと考えにくいと思います。特に、現状では通信手段を使いますと必ず一定の遅れやスピードの限界というものがございますので、その意味ではクラウド・コンピューティングを使えるところから使っていくということになると思います。

Q 6  グローバルの問題について、世界の皆さんに娯楽を売っていくということだが、現実には欧米、日本を中心とした比較的リッチなマーケットで商売をしている。新興国をはじめ、アフリカ、南米といった多くの人口を抱えるマーケットにどのように対処していこうとしているのか、もし方針があれば教えていただきたい。また、これらの市場のニーズをとらえるためには人材を登用していかなければならないと思うが、現在役員はすべて日本人で構成されている。マーケットは既にアメリカ、欧州と広くなっているが、こうしたところから人材を登用していこうという考えをお持ちか。
A 6

岩田:

 当然、日本、アメリカ、ヨーロッパのような先進国と言われるところ以外にも、経済発展が急激な国というのが大変たくさんございまして、以前であれば娯楽になかなかお金が回らなかったところが、だんだん気楽にお金が回せるような経済環境になってきているということは言えると思います。そして、私どもの「ゲーム人口の拡大」という基本方針についても、日本とアメリカとヨーロッパのお客様だけではなく世界中のお客様に「ビデオゲームというものは面白い」と受け入れていただき、そして最終的に、それに対価を払ってもよいと感じていただける方をいかに増やしていくのかということは、非常に重大なことだと思っています。

 一方で、いわゆる新興国と言われる国々の中には、ソフトウェアに対してお金を払うという習慣があまりできていなくて、むしろ抵抗がおありだという地域もございますので、そういうところに今と同じ形のビジネスが通用するのかということもございます。また、逆に全く違うビジネスをそういうところで展開したことを日本やアメリカやヨーロッパのお客様がご覧になって、「我々からこんなに(お金を)取っているのに、そこでは(同じ商品やサービスを)そんなに安くするのか」と反感を持たれてしまうのも大いなる問題ですので、これをいかに解決するかということが一つのポイントになるのかなと思います。ですが、中長期的な任天堂の発展にとっては、新興国でのビデオゲームの普及は欠くことのできないものだと思っておりますので、しっかりと時間をかけて取り組んでいきたいと思っております。

 また、「市場のニーズをしっかり理解するためには、役員は日本人だけで良いのか」というご質問については、私は経営陣の中に日本人以外が何人いるかどうかと、その企業が国際的な経営感覚を持ち合わせているかどうかというのは、全く別のことだと思っております。具体的に言いますと、私どもの今の経営陣が、もし全く外国のことを知らず、外国のことを理解しようともせず、外国に出掛けもせず、ということでしたら、これはもちろん問題だと思います。しかし、それぞれ皆、いろいろな形で出掛けておりますし、また、現地の事情や違いを理解する人間を取締役の候補者として挙げているつもりですし、それがなければニンテンドーDSやWiiという日本生まれの娯楽が世界中に広がることもなかったと思います。ですから、グローバル対応という意味で経営体制に不安を持っているわけではございません。今後とも、「日本だけでなく世界中のお客様を対象に」ということを続けていきたいと思います


このページの一番上へ