簡単には壊れない製品を目指して

切れやすいケーブルと格闘

私は任天堂に入社して以来、携帯型ゲーム機の開発に携わってきましたが、入社して3年目に担当を任されたのがNewニンテンドー3DS LLの機構設計です。私は主に上画面周りの設計を任せられることになりました。


上画面側は、内蔵カメラ、3Dボリューム、スピーカー、そして液晶など、いろいろな部品で構成されています。そのひとつひとつをどこに配置するかをデザイナーや電子技術の設計者と相談しながら決めていくのですが、製品化に至るまでに、いくつもの難関を乗り越えねばなりません。デザイン的にはこの場所に置いてほしい、電気的にはこの場所を希望するといった別々の要望があり、さらに簡単に壊れないためにはこのような構成にしたいという機械的な要望も合わさり、さまざまなトレードオフの中で最適化を目指す必要があります。


例えば、上画面側と下画面側との間は、FPC(フレキシブルプリント基板)を使って電気的に接続しています。このFPCというのは、帯のようなものに配線している厚さ0.1mm程度のケーブルなのですが薄いだけに切れやすいです。


任天堂では、専用の機械を使って、本体の開閉機構を閉じたり開いたりする試験を行うのですが、その開閉回数は数十万回実施し、簡単に壊れないことの裏付けが取れてから初めて製品化されることになるのです。でも、FPCとその周りの機構設計がうまくできなければ、数千回で切れてしまうんです。

Newニンテンドー3DS LLの本体上部 Newニンテンドー3DS LLの本体上部にはさまざまな部品が配置されている。

FPC(フレキシブルプリント基板) FPC(フレキシブルプリント基板)

課題解決までのトライアル・アンド・エラー

そこで、FPCの幅を調整してみたり、透明のハウジング(※)の中にFPCを通して、ケーブルのたるみかたを自分の目で確かめては設計変更したりといったトライアル・アンド・エラーを繰り返しました。そのため、簡単には壊れないレベルに開閉試験をクリアするまでに、100台程度の試作品を作り直しては、テストする必要がありました。


また、New 3DS LLの3Dボリュームやサウンドボリュームでも難関が待ち構えていました。スピーカーに近い場所に配置したため、音の種類によっては共振して、カタカタという「ビビリ音」が発生してしまったのです。通常のゲームで遊んでいるときは気づかないくらいの音なのですが、社内のサウンドチームの人たちがそれを見逃してくれるはずもありません。その期待に応えるために、まるで職人のように、ヤスリやカッターで、100分の1ミリ単位まで調整しては検証を繰り返し、なんとかビビリ音が発生しなくなる仕様にたどりつきました。


このように、ひとつの携帯型ゲーム機が世に出るためには、いくつものハードルを乗り越える必要があります。世界中の幅広い世代のお客様たちが触ってくださることを想像しながら、少しでも手触りのいいものにしようと設計する仕事に、私はとてもやりがいを感じています。


※ゲーム機の外側を構成する部品のこと。

社員略歴

廣瀬 新治技術開発部/2010年 入社
2010年「理工系(ハードウェア)」入社。「ニンテンドー3DS LL」の「タッチペン」「ヘッドホンマイクジャック」「拡張スライドパッド」などの設計を担当。「Newニンテンドー3DS LL」では、上画面側の筐体や充電台などの機構設計担当者として関わる。
職種