任天堂がぬいぐるみを作るとき

あみぐるみのamiibo

私の所属する製品技術部では、任天堂が発売するすべてのプロダクトの量産を、予定通りの日程と数量で、さらにお客様の期待に応える高い品質で生産することが主な業務です。入社当初は、Wiiリモコンなどの電子ゲーム機の量産を担当していたのですが、2014年にamiiboを量産することになり、私は製品技術部内で、そのリーダーを任せられることになりました。


初期のamiiboは、PVC樹脂(塩化ビニール)を成形して作るフィギュアだけだったのですが、あみぐるみヨッシーのamiiboを作るという話が来たときは、おもしろいなと思いつつも、ちょっと不安な気持ちになりました。


というのも、任天堂がぬいぐるみを量産することがはじめてのことなら、製造を委託するぬいぐるみメーカーさんや工場とのおつきあいもはじめてのことだったからです。製造を委託するとはいえ、品質を保証するのは任天堂です。ご協力いただく企業様に、任天堂の品質へのこだわりをしっかりと理解していただくことが、私のテーマになりました。


試作品を作ることになり、中国にあるメーカーさんの工場に行った私は、早くもひとつの壁にぶちあたりました。製造ラインには見本のぬいぐるみが置かれているものの、現場の作業者への作業指示の資料が何もなかったのです。これはひとつひとつの作業工程に指示文書を掲示している電子ゲーム機の製造ラインとは大きな違いでした。

安全へのこだわり

もうひとつ大きな心配がありました。あみぐるみヨッシーは、ミシン縫いと手縫いとで仕上げていくのですが、作業中に針が折れることも珍しくありません。ただ、針の破片があみぐるみの中に残れば一大事です。その工場では、縫い針は1人に対して1本ずつ渡し、もし折れた場合、その破片をすべて見つけてそろえたうえで、新しい針と交換するシステムでした。さらに、できあがったあみぐるみはすべて検針機にかけてチェックするので、安全面は十分だと伺っていました。


私は万全を期すために、その検針機が針の破片を完全に検出できるかどうかをテストをしました。やりすぎかとは思いましたが、ヨッシーにわざと針の破片をつけて検査をしてみたのです。すると、50回に1回、検査機をパスしてしまいました。従来のぬいぐるみ製品であれば、検針機のほかに、より感度のよい金属探知機に通して針の破片を検出できましたが、あみぐるみヨッシーにはNFCタグが入っているため金属探知機は使えません。そこで私は工場の責任者に粘り強く説明し、感度のより高い検針機を新たに導入することについてご理解をいただきました。


普段からぬいぐるみをメインに生産されているメーカーさんと、ゲーム機を主として作っている任天堂とでは、扱う商品や生産数量が異なるため、製造工程に対する考え方が違っていて当然です。意見を交換し両社のやり方を理解しながら、最終的にはお互いのいいとこ取りをした工程ができ上がりました。


そうしてたくさん生産されたあみぐるみヨッシーがずらりと並んだ様子は、まさに壮観でした。あみぐるみたちの温かみのある姿ひとつひとつが本当にかわいらしく、努力が報われた気持ちになりました。


※NFC=近距離無線通信。NFC対応の任天堂のゲーム機にかざすと、データを読み書きできる。

これから検針を行うたくさんのあみぐるみヨッシーたち これから検針を行うたくさんのあみぐるみヨッシーたち

中国の工場での検針の様子 中国の工場での検針の様子

社員略歴

戸津隆洋

戸津隆洋製品技術部/2005年 入社
2005年「理工系(ハードウェア)」入社。ニンテンドーDSシリーズやWiiの本体、周辺機器などの量産、品質管理に電気回路面で関わる。『amiibo』(2014年)のプロジェクトでは、製品仕様と量産工程を含めたトータルの品質保証体制を構築するリーダーを務める。
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