ゲームの世界に参加できる体験を

ゲームの雰囲気を
少しだけ現実に持ってくる

任天堂はこれまで、多くのお客様にゲームに親しんでいただけるよう、さまざまな体験会やゲーム大会を開催してきました。2019年10月に京都で開催された「Nintendo Live」もそのひとつです。私はデザイナーとして『あつまれ どうぶつの森』のブースの企画に参加することになりました。

およそ半年後の発売を控えていた『あつまれ どうぶつの森』は、注目度が非常に高く、新情報の発表があるのではないかとも期待されていました。しかし、まだまだ開発中のタイトルということもあり、公開できる情報は限られていました。そんな中、来場されるお客様に少しでもソフトの雰囲気や魅力を味わって、喜んでもらいたいというところから企画がスタートしました。

ゲームの中に登場する「たぬき開発」は、社長の「たぬきち」が、プレイヤーのみなさんの無人島移住をお手伝いするために設立した「旅行代理店」のような会社です。当時私たちがお伝えできる情報としては「『たぬき開発』が無人島に移住するお手伝いをしてくれる」という冒頭の舞台設定でした。その中で何ができるだろうと考えていたときに、ゲームの世界観をイベント会場にそのまま表現したら面白いかもというアイデアが生まれました。そして、「たぬきち」が「無人島ぐらし、始めてみませんか?」と自ら営業に来たというような企画にたどり着きました。企画が決まってからは、「ゲームの発売日を、無人島に出発する日にたとえてみてはどうか?」「旅行パンフレットのようなチラシを配ってはどうか?」「入口にのぼり旗を立てたい」「社長の名刺を作りたい」といったアイデアが一気に広がっていきました。

体験を持ち帰ってほしい

「たぬき開発」が、実際に「無人島移住パッケージ説明会」を行うという企画で、私はお客様に喜んでもらえ、ソフトの発売を楽しみにしていただける体験そのものをデザインすることにこだわりました。入り口でイベントスタッフの方に、実際のツアー旅行のガイドさながら案内をしてもらい、無人島生活の楽しさをご紹介しながら、お客様が島の写真やゲームに登場する「どうぐ」のミニチュアをご覧いただけるようにしました。

一番力を入れたのは、説明会の最後に、無人島に行ったような体験ができる撮影スポットです。ゲームの中に広がる島の景色を背景に、「どうぐ」を手に持って、「たぬきち」と一緒に撮影できるようにしました。イベントの撮影スポットというと、自分のスマホで記念写真を撮るのが一般的だと思うのですが、ここではプロのカメラマンに撮影してもらう形にしました。プロに撮影してもらう機会はめったにないですし、お客様にとってより思い出に残る体験になると考えたからです。

写真のほかにも、「たぬきち」の名刺、パンフレット、粗品のタオルやポケットティッシュをイベント用に自分でデザインして配布しました。これは、お家に帰ったあとでも「たぬき開発」を思い出してもらえるような仕組みを作りたかったからです。ティッシュに印刷してあるQRコードを読み取ると「たぬき開発」のホームページが見られるなど、リアリティーにもこだわりました。無人島で撮影した記念写真と、「たぬき開発」のお土産を持ち帰っていただいて、ゲームの発売を楽しみに待っていただきたいと考えました。ゼロから企画・デザインするのは不安や迷いがありましたが、来てくださったお客様が楽しんでいる姿に触れて、苦労が吹き飛びました。

社員略歴

石毛グローバルコミュニケーション部/2010年 入社
2010年「デザイン系」入社。
「ニンテンドー3DS LL」「Newニンテンドー3DS」などのパッケージデザイン・製品写真、『あつまれ どうぶつの森』などの広告グラフィックを担当。

↑