4. スタッフのツッコミもボイスで再現

岩田

フレーズ検索を使った問題をたくさんつくり、
そのなかで採用されるものと、ボツにされるものがあって、
それを分ける基準はどんなところにあったのですか?

征矢

ふつうのクイズゲームであれば、
「これ面白いね、採用!」でいいんですけど、
今回は検索を使ったゲームですので、
選んだ言葉とヒット数は切り離すことができないんです。
たとえば、言葉として組み合わせるとすごく面白い問題であっても、
ヒット数を比べてみると、ごくわずかの差ということもあって、
問題にするのは微妙だということで
ボツにしたものもけっこうあるんです。

西村

さらに、わかりやすさを追求するために
説明文も載せるようにしました。

油井

今回のゲームは
ヒット件数の差で勝負がつくわけですけど、
なぜそのキーワードのヒット件数が多いのか
最後に「なるほど!」と言ってもらえるといいと思ったんです。

岩田

1年前の段階では説明がまったくなかったので、
問題に答えても、どこかで突き放された感があったんですね。

油井

はい。結果だけが表示されていただけなので、
なんだかもやもやしていたんですね。

岩田

だから「わかりにくい」という声が
あがっていたのかも知れませんね。

油井

多人数で遊ぶ場合は、
そういった説明はほかのプレイヤーがしてくれるんですけど。

岩田

多人数で遊ぶと楽しいけど、
ひとりで遊ぶのはちょっと物足りない、という声があったのも、
そこで説明できますね。

征矢

その通りです。
ひとり用で、しかも検索になじみのない人でも、
説明を載せることで
「なるほど!」と言ってもらえるようになりました。

岩田

なるほど。・・・すごくスッキリしました。

一同

(笑)

岩田

そうやって、長いトンネルからようやく抜け出し、
光が見えてきたのは、どのくらい経ってからだったんですか?

西村

あの“暗黒の事件”から半年以上が経っていました。
問題作成をしたり、それらを実装するのに
かなり時間がかかりましたので、
たぶん2009年の秋に近い、9月頃だったと思います。

征矢

そうでしたね。
でも、その頃には「これならいける」という感じになりました。

岩田

西村さんはどうだったんですか?

西村

面白い問題をたくさん用意できましたし、
説明を加えるなどして
システム的にもかなりわかりやすくはなったんですけど、
最後のもう一歩という部分で、
何か足りないという気持ちがありました。

岩田

それはどういう部分で?

西村

演出の部分ですね。
「たくさんのゲームに埋もれてしまうんじゃないか」と
そんな気持ちがわたしのなかにもありまして、
ほかのゲームではやっていないことを
このゲームで実現したいと思っていたんです。
そこで、考えたのが→フキダシです。
複数人で遊んでいるときのやりとりの楽しさを
ひとりで遊ぶときにも体験してほしいと思ったんです。

岩田

西村さんから「フキダシを入れたい」という
提案をされたとき、征矢さんはどう思いましたか?

征矢

ようやく完成が見えてきて
「最後はどうまとめましょう」という時期でしたので、
「えっ?」と思いました。もういいんじゃないかと(笑)。

岩田

そう考えるのがふつうですよね。

西村

そこを無理を承知でお願いして、
なんとか試作をつくっていただきました。
やっぱり周りにいる人が言ってくれるようなことを
Wiiが代わりにやってくれると絶対に面白いはずだと思ったんです。

岩田

で、つくってみて、どうでしたか?

西村

もともと文字が多いゲームなのに、
さらにフキダシの文字が躍るわけですから、
「こんなのを読んでいられない」と言う人もいるかなと思いました。

岩田

そもそも、文字を使うゲームですから
そのうえに、フキダシが出ると、
さらに文字だらけになってしまうんですね。

西村

はい。そこでさらにボイスも出せるようにしたいと。

岩田

(シフトの2人に対して)
西村さん、欲張りだったでしょう?

油井・征矢

(笑)

西村

しかも、開発の残り期間を考えたとき、
ほとんどデッドラインに近い時期でした。

岩田

もうほとんど完成という時期になって、
フキダシを入れろだの、今度はボイスを入れろだの言われて、
油井さんはどう思われましたか?

油井

実は、社内で対戦プレイをしていると
開発スタッフのなかに必ずツッコミを入れる者がいまして、
それがめちゃくちゃ面白かったんです。

征矢

いちいちしゃくに障ることを言うんですけど、
すごく面白くて。

岩田

もしかして、その人がボイスのモデルなんですか?

油井

はい、実は(笑)。
ですから、ボイスを入れれば
面白くなるのは間違いないと、
わたしたちもずっと思っていたんです。

征矢

それに『安藤ケンサク』がパッケージになって出たときに、
みんなで遊ぶ雰囲気をいっしょにお届けできないのは
とても残念だなという気持ちが頭のなかにありました。
ですから、西村さんから
「フキダシとボイスを入れたい」という話をいただいたとき、
「ああ、彼がしゃべることをそのまま入れればいいんだ」と
閃くものがあったんですね。

岩田

じゃあ、内蔵されたんですね、その人が(笑)。

油井

はい。彼がしゃべっていたことをそのまま入れています。
基本的には彼がしゃべったことを全部メモしまして。

征矢

この場面でこんなことを言われたらイヤだろうな、とか、
場面場面で、彼の言葉を当てはめていったんです。

油井

でも、それを取材したときは、
彼は本当に嫌がっていましたね。

征矢

自分が考えていることを、
ゲームでそのまま言われるのがイヤだと言うんです(笑)。

油井

だから、だんだん無口になって・・・。

征矢

しまいにはしゃべらなくなってしまいました(笑)。

一同

(笑)

岩田

で、実際にその人の言葉が内蔵されて、
手ごたえは変わりましたか?

西村

はい。無理をお願いして入れてよかったと思いました。
ボイスを合成音声で再現して
まずは社内でプレイをしてもらったら、
「何か言うてるで」とか「何言ってるの、こいつ」とか・・・。

岩田

内蔵されてる人のツッコミに対して、
逆にツッコミを入れかえしているんですね(笑)。

西村

それで最後には「これ、おもろいやん」と言われましたので、
本当に入れてよかったと思いました。
ほかにテストプレイをしてもらった人からも、
「ゲームのなかに人が住んでいるような感じがする」
というコメントをもらいました。

征矢

ああ、ありましたね。

岩田

まさにその人が内蔵されたんですね(笑)。

油井

でも、本人はすごく嫌がっていますので、
匿名希望でお願いします(笑)。