3. 「石投げ水切り」

岩田

仁井谷さんは、どのように企画がはじまったんですか?

仁井谷

わたしはあまり時間もなかったので、
Wiiリモコンを左右に振るだけの、単純な操作でできる
遊びを考えるところからスタートしました。
それで試作品は、タテに並んだ的を
ボールで壊すゲームをつくりました。

野中

内作だからといって、もちろんひいきせず、
試作品はみなさんと同じふるいにかけました。

仁井谷

試作をつくったあとはサポートと並行作業だったので、
本制作のステージは細川さんにお願いしました。

細川

マップに関してはパーフェクトをねらおうとすると、
かなりのテクニックが必要となる方向性でまとめました。

岩田

「腕に自信がある方はぜひパーフェクトをねらってほしい」
ということですね。
ミッチェルの船木さんはどのようにはじまりましたか?

船木

うちはリモコンの操作方法から考えて、
単純に回転と傾きを使って何かできないか?
というところからスタートしました。
回転させるという動きから
糸をまきとるアイデアが生まれ、
そして、傾けながら手前と奥に
ストロークさせるような動かし方が
“歩行”に似ているな、と思ったところから
企画が広がっていきました。
 
歩きながらカンをつぶしていくゲーム、
リズムゲームなどを考えたんですが、
いろいろと意見がわかれてしまいましたので、
その足の動きを発展させた「一輪車」を考えて、
これを試作しました。
そのあと糸をまきとるアイデアのゲームを試作して、
そのまま本制作につながりました。

岩田

それが製品化された→「まきあげろ!海底のお宝」ですね。

船木

はい。単純に糸をまきとるだけでは地味ですので、
ゲーム&ウオッチの『オクトパス』(※26)の世界観で
まとめることにして、Wiiリモコンプラスを
リールとして扱うことにしました。
それから→「一輪車」の方は本制作までいきましたが、
残念ながらミニゲームとしては収録されませんでした。
ですが、任天堂さんの担当者の方がねばってくださり、
かくし要素として残していただくことになりました。

※26

『オクトパス』=携帯型液晶ゲーム「ゲーム&ウオッチ」シリーズのタイトルのひとつ。1981年発売。

高橋

本当はね、マスターアップが近づいてきたこともあり、
ふたつを同時に仕上げるのは期間的に難しいので
「海底のお宝」に集中してほしい、とお願いしたんです。

野中

じつは高橋さんにはナイショでしたけど、
ミッチェルさんは「海底のお宝」に集中しながらも
陰ながら「一輪車」の制作をつづけていたんです。
それでコンパクトに上手くまとまったんで、
かくし要素として入れることにしました。

岩田

ではチュンソフトの溝邊さんはいかがですか?

溝邊

うちはスタートが遅くて、9月ごろに野中さんから
「任天堂でつくったサンプルを製品化してもらえませんか?」
というお話をいただいたんです。
それでまず→「ドッキングステーション」のサンプルを
京都で見せていただき、持ち帰ろうとしたら、
「いや、ここで見て、記憶して帰ってください」
と言われて、まずびっくりしました(笑)。

一同

(笑)

岩田

つまり「目コピーしてください」ということですね。
製品化をお願いしているのに、
サンプルを持って帰れない時点でおどろきですよね。

溝邊

はい(笑)。でも、プログラマーが
記憶をたどって、再現自体はすぐにできたんです。
このゲームはWiiリモコンプラスを宇宙船に見立てるんですが、
直感的で簡単な遊びでありながら、クリア条件が難しく、
試作の段階ですごく評判がよかったんです。

野中

最終的には30面もつくってもらいましたね。
チュンソフトさんには、先行して制作していただいたので、
仁井谷さんの「ボールとシーソー」とあわせて、
サンプルとしてみなさんに見ていただいたんです。

溝邊

あと→「ドルフィン」は、
はじめは、イルカショーやトリックなどもやろうとしたんですが、
「海の中を楽しむ」というキーワードをいただいていたので
気持ちよさを体感することと、きれいな海を泳ぐという
ポイントに集中してつくりました。

岩田

では蛭子さんは、
どのように企画がはじまったんですか?

蛭子

グッド・フィールも特殊な事情がありまして、
途中参加でした。

岩田

『毛糸のカービィ』がおわってからですから、
みなさんより、だいぶスタートが遅いですよね。

蛭子

はい。1回目の試作審査会のあとぐらいでした。
弊社はシードで参加することになったんですが、
よくよく野中さんに聞いてみると
「試作がダメだったら落ちるよ」
というお話で、シードでも何でもなかったという・・・。
しかも「途中から入って採用がなかったら、
かっこ悪いですよ」みたいなお話もあり・・・(笑)。

野中

ええっと・・・すみません(笑)。

蛭子

うちは比較的自由に、楽しくわかりやすいテーマを考えて
→「モグラたたき」→「石投げ水切り」の試作をしたんです。
最初、「モグラたたき」はシューティングなどを入れて
ゲーム性を強くしていたんですが、
“たたく”ことそのものの気持ちよさを
求める方向性にだんだん修正していきました。

岩田

「石投げ水切り」のほうはいかがですか?

蛭子

「石投げ水切り」は最初、投げるだけで、
夜になって徹夜で投げていたら朝になって・・・みたいな
郷愁感ただようゲームをイメージしていたんです。
でも投げ方などの上達要素も必要、というお話もあり、
やはりゲーム性を加えることになりまして、
評価要素なども追加して、いまのかたちにまとめました。

野中

・・・ただ、みなさん、いま「うんうん」って
うなずいておられますけど、
完成したあとに各制作会社さんと反省会をしたとき、
「モグラたたき」と「石投げ水切り」が
話題に出ることが多かったんですが、
この2本とも最初のころの仕上がりが
あまりよくなかったこともあり、
「このゲームは本当に成立するのか?」
という声をよく聞きました。
そうでしたよね・・・大島さん?

大島

あ、ええ・・・(苦笑)。

一同

(笑)

大島

でもね、最終的にいちばん面白くなったゲームだと
僕は思っています(笑)。

岩田

今回のソフトの中で、大島さんが
いちばん面白かったゲームは「石投げ水切り」なんですか?

大島

はい、僕は大好きです。
最初のころはですね・・・
どうすれば正しい投げ方なのか、
まったくわからなかったんです。
でも評価要素が追加されてから、
「あなたの角度が曲がっていました」って言われると
「えっ! 曲がってた?」って気づいて
何とかしようとするから、
だんだんテニスをしている感じになってくるんです。
それでシュパッとキレイに入ったら、
「ああーーーー(感慨深げに)」と。
そんな感じで何だか・・・すごくはまっていきました(笑)。