4. 刺激を受けたゲーム

岩田

じゃあ「石投げ水切り」をつくった蛭子さんは、
全体の中で刺激を受けたゲームはありましたか?

蛭子

僕は→「ボールとシーソー」です。
ずーっとやっていたいような中毒性があるんですよね。
「タンク!」(※27)みたいで、
ああいうのが個人的に、昔から好きなんです。

※27

「タンク!」=『はじめてのWii』に収録されているミニゲームのひとつ。戦車を操作し、砲弾や爆弾を使って敵戦車を破壊する。

岩田

「タンク!」は熱かったですからねえ。

仁井谷

じつは、「ボールとシーソー」の背景を
積み木にしたのは「タンク!」の影響です。
ゲーム自体はストイックなので、見た目はかわいくしたくて
「タンク!」みたいな感じを追求しようと思いました。

蛭子

あ、そうだったんですね!

岩田

なるほどね。
仁井谷さんはどのゲームがお気に入りですか?

仁井谷

僕は「モグラたたき」です。
たたいていて、単純に気持ちがいいんですよ。

岩田

みんな違うゲームを挙げるところが面白いですね。
普通は、特定のものに集中しがちなんですが、
試作のときに社内のいろいろな人に訊いていたときから
違うものが挙がっていたんです。
そのためWiiリモコンプラスならではの操作感のゲームが、
ツブぞろいでそろった感じがしますね。
江藤さんは今回、刺激を受けたゲームはどれですか?

江藤

僕は「傘ライダー」が楽しいです。
ちょっと谷口さんに質問なんですけどね、
→「はばとび」、どうしても2000mを
超えられないんですよ・・・。
どうやったら超えられるんですか?

谷口

あれはターボとジャンプのタイミングなんです。

江藤

ああ、ジャンプのタイミングは第一ですよね。
そのあとに風向きを見て、風に乗るべきか、
まっすぐ行くべきか・・・。
実際のジャンプも風が影響するところがあるから、
偶然に左右されるところと、
自分の技術をすりあわせていくところがはまりますよね。

岩田

お、いいお客さんですね(笑)。
中さんはいかがですか?

僕がいちばん遊んだのは「ドッキングステーション」です。
個人的な趣味に合っていて、30面まで進めたんですけど、
「これ、ちょっと難しすぎないか?」って思いました(笑)。

岩田

ちょっと難しいゲーム性が、中さんの性に合うんですね。
あとは微妙な操作ができるところがいいんでしょうか。

そうですね。
細かい操作をしながらやっていくところと、
それから面をクリアしたあと、
面セレクトがあるのがいいんですよ。
だからうちの「360°シューティング」にも
最後の最後に、面セレクトを入れたんです。

岩田

では「ドッキングステーション」がなかったら
「360°シューティング」に面セレクトはなかったんですか?

はい、きっとなかったと思います。

溝邊

じつはうちは逆で、本当は面セレクトを入れたくなかったんです。
というのも宇宙ステーションを組み立てていくゲームなので、
1面から地道に完成させていくのであって、面セレクトで
途中からつくりはじめるイメージがなかったんです。
でもいろいろな人が遊びますし、
「あの面をもう一度やり直したい」
という意見が出てくるだろうということで、入れたんです。

そういう意味では、他社さんの開発途中の
ソフトを見ながらつくっていくのは面白いですね。

岩田

ひとつの価値観でデザインされたものではないからこそ、
独特の魅力や刺激がある感じがしますね。
では船木さんはいかがですか?

船木

僕は「傘ライダー」です。
風に乗るのが気持ちよくて、スピード感があって
面白いなあと思ってプレイしていました。
それから非常に参考になったゲームは、
同じ海を題材にしている「ドルフィン」です。

岩田

それぞれ見ているところが違うんですね。

船木

はい。野中さんに「『ドルフィン』のように
もっとクオリティを上げてがんばってください」
と言われた経緯がありまして、とても参考になりました。

溝邊

あ、それははじめて知りました。
弊社は「ミッチェルさんの『海底のお宝』を参考にして」
と言われていましたよ(笑)。

岩田

あれ? 野中さん、そういうやり口だったんですか?

野中

まあ、あの・・・はい、そういうときもありました(笑)。

岩田

だんだんプロデューサーの陰謀が
暴(あば)かれていきますね(笑)。

野中

まあ切磋琢磨していただいた甲斐があり、
2〜3月ぐらいに一気に全体のクオリティが上がったんです。

岩田

最初は品質的にもデコボコした感じだったのが、
あるとき全体がガッとよくなった時期がありましたね。
それが、この商品が手ごたえあるカタチで
まとまったいちばんのポイントなんですが、
なぜそういうことが起こったんでしょうか?
お互いが、ほかのチームがつくる作品に
刺激を受けたこと以外にも、何か理由がありますか?

高橋

ひとつは、会社さんごとに得意分野が異なるので、
できあがったものを見て刺激を受け合い、
自然とクオリティが上がっていったということはあると思います。

野中

最後のほうで、任天堂のグラフィック監修チームに
加わってもらったんです。
最初は各社ごとにグラフィックを進めていたんですが、
方向性が似ているグラフィックに関しては
逆に善し悪しが目立ってしまうので、
同じ水準に整えることにしたんです。
それから、サウンドで全体の統一感が出てきました。
ゲームごとのSEなどを徹底的に調節することで
ゲームの手ごたえを統一していったんです。
グラフィック、サウンド、そしてゲームのクオリティに
手ごたえを感じてきたのが2〜3月ごろでした。

岩田

音はすべて任天堂でつくったんですか?

細川

いえ、音制作自体はバラバラですけど、
すべてまとめて全体の統一感を出したのが
任天堂のサウンドディレクターでした。

野中

音のトーンに関しては、かなり徹底していましたね。

細川

そうですね。
全体のトーンはサウンドでそろえました。