社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』

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社長が訊く『ニンテンドー3DS』

発売前に宮本さんに、訊いておきたいこと。

目次

7. 地味なテーマのゲームを立派に育てる

岩田

これは、私の個人的な感想ですけど、
今回、『スティールダイバー』で、
宮本さんが地味なモチーフに取り組んでる、
というのがすごく新鮮なんですよ。

宮本

あ、そうですか(笑)。

岩田

宮本さんがふだんつくるものって
地味っていうことと対極にあるじゃないですか。

宮本

あ、でもね、それは、誤解です。

岩田

誤解ですか。

宮本

『ゼルダ』もつくってるときは
地味やったんですよ(笑)。

岩田

(笑)

宮本

ああいったジャンルのものがね、
こんなにメジャーなものとして扱われるなんて
最初の『ゼルダ』をつくってたときは思わなかったです。
だって、剣と魔法の世界は、
そんなにメジャーじゃなかったですよ。

岩田

そうでしたか。

宮本

『ネバーエンディング・ストーリー』(※16)とかが
人気になりかけてはいましたけど。
だって、「小僧、この剣を持って行け」
みたいな世界ですからね(笑)。
地味といえば地味ですよ。

※16
『ネバーエンディング・ストーリー』=1984年に制作された冒険ファンタジー映画。日本では、1985年に公開された。

岩田

その意味では『ゼルダ』も『スティールダイバー』も
宮本さんにとっては変わらないわけですか。

宮本

と思いますね。
だから、地味っていうよりは、
アテンションがとりづらいというだけで、
ぼくのなかでは、
「面白いもののひとつ」という意味では
どちらも同じ中身なんです。
あとは、どう着飾ってみんなに興味をもってもらうか、
ということなんでね。
もともとのテーマは、わりと地味だと思いますよ、どれも。

岩田

いや、いまの話はすごく面白いです。
あの、世の中の人って、宮本さんのことを、
たくさんの有名なキャラクターに囲まれて
それを自由につかっている人だと
思われている気がするんですよ。
だから、なにかゲームをつくって、
そこに有名なキャラクターをぽいっと貼りつけたら、
たちどころにみんなのアテンションが集まる、という。

宮本

(笑)

岩田

私みたいに古くから宮本さんを知っている人は、
ほんとはそうじゃないって知っているんですけどね。
マリオが最初はただのジャンプマン
誰も「マリオ」っていう名前を知らないときから
宮本さんはマリオを育ててきたわけだし、
ドンキーコングにしても、
ゼルダの「リンク」にしても、
ピクミンにしても、同じように育ってきたものだし。

宮本

そうですね。
とくにピクミンの場合は、ぼくは自分で絵を描いていないのでね。
絵を描いてもらうまで、どういうキャラクターが
どういうふうに表現されてくっつくかは
自分でもわからないですから。

岩田

つまり、最初からキャラクターがいて、
自動的に注目が集まってっていうことではなくて、
面白いものを突き詰めていって、
それが最終的に、すごく派手になったり、
そのままの地味さで出ていったりするんですね。

宮本

うん。そうですね。

岩田

だから、やりかたとしては、
今回の『スティールダイバー』が
特別っていうわけじゃないんですね。

宮本

そうですね。
けっこう、多いですよ、地味なものも(笑)。
さっき話に出た『パイロットウイングス』なんかも
メカが主人公ですから、地味といえば地味ですし。
『Wii Fit』(※17)なんかも。

岩田

ああ、言われてみれば、確かに地味ですね(笑)。

宮本

でしょう(笑)?

※17
『Wii Fit』=2007年12月に、Wii用として発売されたフィットネスソフト。

岩田

そういう地味なモチーフを扱うとき、
気をつけていることってありますか?

宮本

つくっているときにですか?

岩田

ええ。工夫したこととか。

宮本

どうでしょうねぇ・・・。
ああ、内部的なことでいえば、
「励ます」ですね。

岩田

「励ます」。

宮本

現場を。

岩田

「現場を励ます」(笑)。

宮本

「この地味なモチーフでヒットさせたら
 このチームはすごいぞ」って。

岩田

(笑)

宮本

「これこそ、実力の発揮しどころやぞ」って。

岩田

ははははは。

宮本

「シリーズものの新作でヒットさせたって
 きっとシリーズだからって言われて
 おまけにプレッシャーばっかりきつくて
 たいへんやぞ」って。
それは、ぼく自身がよくそう感じるので(笑)。

岩田

はい(笑)。

宮本

だから、
「この地味なテーマのゲームを
 立派に育てるっていうのが、たのしいやない?」
って励ましながらやってました。

岩田

よくわかりました(笑)。

宮本

あと、これはノスタルジックなイメージかもしれませんが、
昔はプラモデルなんかも、
戦車とか戦闘機が花形だったでしょう?

岩田

はい、確かにそうでした。

宮本

あのころは、火薬とか爆竹を
プラモデルの戦車に詰めたりしてね、
走らせながらバーンと爆発させたりして。
その、壊れるか、壊れないか、
っていうぎりぎりのあたりで遊ぶのが
当時としては、最高の贅沢で(笑)。

岩田

お話していつも思うんですけど、
宮本さんのそういう子ども時代の経験や思い出は
ほんとうに、全部ゲームづくりに活かされているんですね。

宮本

(笑)