社長が訊く
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社長が訊く『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』

社長が訊く『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』

目次

6. 遊びの環境の幅

岩田

そろそろ最後になりますが
Wii U版『ドラゴンクエストX』の発売に際して、
興味を持っているみなさんへ
おふたりからメッセージをいただけますか?

藤澤

はい、では僕から。
Wii版を発売してつくづく思うのは、
どんなに僕たちが言葉を尽くして
「怖くないですよ、おもしろいですよ」と伝えても
身近な家族や友人からの
「おもしろいから一緒にやろう」という一言には
かなわないなあ、ということです。

岩田

はい(笑)。

藤澤

いま『X』を遊んでくれているみなさんは、
いちばんの理解者であり、
心強い味方ですから、そういう方をひとりでも増やし、
その輪を広げていくことが、
最終的にいちばんのアピールにつながると思います。
なので、実直に、真剣に、コツコツやっていくことがすべてで、
そこに尽きるかなと思っています。
これは本当に、ウラ技や近道はないんです。

齊藤

ある意味、25年以上前に
いちばん最初の『ドラゴンクエスト』が出た時も
きっと近い状況だったんじゃないかなと思うんです。
日本でまだRPGを知っている人が少なくて、
「RPGは難しそう」という誤解があったところを、
遊んだ方たちの「おもしろい」という声で
くつがえしたのが、
『ドラゴンクエスト』の歴史だったわけで。

岩田

「おもしろい」という一言が連鎖して、
一気に広がっていったんですよね。

齊藤

そうですね。そういう意味では、
いま『ドラゴンクエストX』には
当時にはなかったネットをはじめとする
さまざまな伝達手段が豊富に用意されています。
それこそMiiverseも新しい伝達の手段ですし、
チャンスはたくさんあるんです。

岩田

はい。そうですね。

齊藤

ですから、つくったら終わりではなくて、
遊んでいただいているみなさんに
「またおもしろくなったね」と、
言ってもらえることをめざして
努力を惜しまずやり続けることが、
結果につながっていくことだと思います。

藤澤

僕からも、もう一言いいですか?

岩田

もちろんです。

藤澤

日本国内に限らず、
世界中でいくつも例があることですが、
オンラインゲームは、
開発に長い時間をかけても、
運営フェーズでつまずけば成功できない
舵取りがとても難しいプロジェクトです。
でも『X』は、船出から7か月という時間を経て
なんとかいま、安定運行と言っていい段階に入ることができました。
ここまで来られたのは、本当に
遊び続けてくれたプレイヤーのみなさんのおかげです。
そういった方を裏切らないように、
今後もしっかり、やっていきたいと思っています。

岩田

この『ドラゴンクエストX』は
Wii版のサービス前、そして7か月を経過し
新たにWii U版が加わるこのタイミングと、
2度にわたってお訊きするタイトルとなりました。
今日のお話を訊いていてわたしは、このゲームが
MMORPGというジャンルの概念を変え、
ごく軽く短時間で楽しめる遊びから、
じっくり長時間やりこむ遊びまで、
遊ぶ人のライフスタイルに合わせて楽しめる、
ダイナミックレンジのより広いゲームに
なったように感じました。
 
そしてWii Uは、
Wii U GamePadを用いることでテレビを専有せず、
気軽にオンラインを楽しむ手助けをしてくれる、
相性の良いものになっていると思います。
もちろん、ここぞというクライマックスでは、
家のいちばん良いテレビで、迫力あるHDの画と
臨場感たっぷりのオーケストラが楽しめます。
そういう意味でWii Uは、
現実のハードの側面から遊びの環境の幅を広げ、
Miiverseとの連携の可能性も含めて
Wii以上にいろいろとできることが
あるんじゃないかとも、思っています。

藤澤

そういう意味でいうと、ゲームのほうが
プレイヤーのライフスタイルに寄り添っていく
必要がある時代だと思います。

岩田

そうですよね。
ゲームに合わせてもらう時代ではないですから。

齊藤

あと、わたしからもうひとつだけ。
あまり説得力がないかもしれないんですが、
みなさん、もう少しだけ
ゆっくり遊んでもらえたらなぁ、と。

一同

(笑)

齊藤

大型アップデートのたびに、
みなさんゲートが開いた瞬間、
全力疾走で殺到してくるような感じなんです。

岩田

「急がなくても、何も逃げませんよ」
ということですよね(笑)。

藤澤

でもまあ、それもひとつの
楽しみかたのひとつではありますよね。
とにかく「誰よりも先に楽しみたい」という。

岩田

それを言うなら、
「クラスでいちばん最初に解くぞ!」って、
みんな睡眠時間を削って遊んできたのが、
『ドラゴンクエスト』の歴史でもありますからね。

齊藤

そうですね。
もちろんそれはそれでいいんです。
ただわたしが言いたいのは
「周りがそうだから、自分も
 そうしないとダメということはない」
ということなんですね。

岩田

ああ、たしかに。

藤澤

ただ、最初の頃よりもだいぶ
減ってはきていますよね。
遊びの幅も増やすことができたので、
いまはけっこうまったり、みんなそれぞれの楽しみを
見つけられている気がしてます。

齊藤

だから「お花にお水をあげるだけでいいんです」
という遊びかたを言えるようになったのが、
すごくうれしいんです(笑)。

岩田

はい(笑)。
「初心は忘れず、中身は充実」ですね。
来年の今頃はどうなっているか、楽しみです。

齊藤・藤澤

そうですね。楽しみです。

岩田

これからまだまだ、
新たに『ドラゴンクエストX』の世界へと
入っていく方が増えると思います。
そこでは昔『ドラゴンクエスト』第1作が
日本でRPGを大衆化させたように、
これから『ドラゴンクエストX』が
日本のオンラインゲームに対する誤解や偏った見方を
塗り替えていく未来が、
きっと開かれていることと思います。

齊藤・藤澤

はい、がんばります。

岩田

ありがとうございました。