社長が訊く
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社長が訊く『スーパーマリオ 3Dランド』

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社長が訊く『スーパーマリオ 3Dランド』

開発スタッフ 篇

目次

6. 「うれしいからええやん」

元倉

箱つながりでもうひとつ、こっそりと
「ハテナボックス」をかぶるマリオを入れています。
箱をかぶると、ずーっとコインを出し続けるっていうのを。

辻村

見た目は普通のハテナボックスなんですよ。
最初、バグかと思いました(笑)。

岩田

出たコインはどうするんですか?

林田

じつは今回、細かいんですけれど、
「コイン自動取得」という仕様を入れています。

岩田

ああ、今回はコインを自動取得できるんですか。

林田

はい。いままでの3Dマリオでは、
たとえばクリボーを踏んだ後にコインが出ると、
いちいちそれを取りに戻っていたんです。
これを手塚さんが、「戻るのがちまちましてる」って言ったんです。
手塚さんがつくっていた2Dマリオでは、
クリボーを踏んでもコインは出ず、スコアが出るだけなので、
ポンポンポンって踏んでいけるんですよ。

岩田

そのほうがテンポがいいんですね。
最初は3D空間を動き回るだけでもうれしかったので
コインを取りに戻っても良かったんですが、
そのことが普通になってきたいまでは、
むしろテンポを悪くしているだけなのではないか、 
という指摘だったわけですね。

林田

そうなんです。やっぱり僕らも、
「リセット」しきれてないんですよね。

岩田

そういえばほかにも、手塚さんからは
きびしいことを言われたと聞きましたが。

林田

僕が思うに、手塚さんがゲームにおいて、
もっとも重視してるのは、
“うれしさ”とか“気持ちよさ”なんですよ。
だから「コインを取りに戻るのも嫌」という理由も
ようやくわかりました。

岩田

長いつき合いで、ようやく・・・?(笑)

林田

『Newスーパーマリオ』で、
巨大マリオで、ダダダダーッと敵を倒していく

あれなんか、コースのつくり手からしたら、
とんでもない仕様なんですよ。

岩田

ゲームのつくりを壊してるんですよね(笑)。

林田

あれも「うれしいからええやん」ということなんだと思います。

岩田

手塚さんって本当に、「うれしいからええやん」
っていう台詞が似合いますよね(笑)。

辻村

そういえば、「中間ポイント」の話もありました。
我々がつくってる3Dマリオは、
ゲームの途中に中間ポイントというものを置いて、
「やられてしまったときも、ここに戻ってこられる」
という仕様になっているんです。
ところが、『Newスーパーマリオ』では、
ちびマリオの状態で中間ポイントを通り過ぎるだけで
なぜか普通サイズのマリオになるんです。
手塚さんに、「何で今回のマリオは大きくならないの?」
と言われて、逆に我々は、「何で大きくなるんですか?」
という質問をしたんです。

岩田

うん、よく考えてみると・・・、
さっぱり意味がわからないですね(笑)。

林田

そのときに手塚さんが何て答えたかというと・・・
「オマケ」だったんですよ。
僕たちは「オマケ? オマケって何!?」となってしまって(笑)。
これまで僕たちは、宮本さんが重視している、
「機能性」でゲームをつくっていたんです。
だから中間ポイントは、「そこから復活できる」
という機能性でつくっていたんです。

岩田

それなのになぜ、
そこに「オマケ」があるのか、ということですよね(笑)。

林田

そうなんですよ。

岩田

まさに「うれしいからええやん」ですね(笑)。

辻村

そこに落ち着くんですね。

林田

手塚さんにもうひとつ嫌がられていたのが、いじわるな配置です。
ジャンプした後に敵がいるとか、コインの先にいる敵とか、
そういうのを直しました。

岩田

やっぱり、お客さんに気持ちよく遊んでほしいんでしょうね。
「だまし討ちはなし!」ってことですね。

辻村

だから今回は、本当に真っ正面から遊びをつくりました。
「変化球を入れる」とか、「手応えある遊びにする」のは、
遊び慣れている人の理論なんです。
初心者にとっては、いじわるにしか見えないケースが多いんですね。
そこを反省点として、修正しています。
その分、スペシャルステージにつぎ込みましたけど(笑)。

岩田

手塚さんが、お客さんにとってストレスになったり、
期待はずれだというところを
どんどん指摘されたことによって、
2Dマリオに慣れているお客さんに、
より自然に遊んでもらえるようになったんですね。