5. ひとりと群れとの往復運動

糸井

まぁ、土日にかぎらず、
何曜日でもいいんですけど、
カギは、ひとりぼっちでいることですよね。

岩田

ひとりで考える、ということですか?

糸井

うん。

宮本

そうですねぇ。

糸井

それはね、いいことでも、悪いことでも。
あのね、これは、ある会社の話なんですけど、
全社員が一丸となってがんばって危機を乗り切った、
ということがあったんですって。
で、そういうときは、みんなが前向きで元気なんです。
ところが、メンタルのカウンセリングを受けたら、
実際は、みんな、ぎりぎりの状態で、
全員、精神的に参っちゃう寸前だった。

岩田

ああ。

糸井

ほんとうに元気で健康な人はいなかったんです。
でも、なぜあんなに元気でいられたかというと、
そのメンタルの専門家が言うには、
ひとつは「我慢してるんですね」と。
で、もうひとつは、「みんなといるからです」と。
つまり、「俺は元気だ」っていう人が隣にいると、
元気になれるんですよ。

宮本

うん。

岩田

元気はうつりますからね。

糸井

そうなんだよ。
仲間といるときに助かるのはそこでね。
で、自分が見えなくなるというのも
そういうところなんだ。

岩田

ああ、はい。

糸井

任天堂も、たぶんチームとしては
それぞれがうまくいってるから、
上手に元気でいられるんだろうけど、
ひとりになると、やっぱり、ちょっと痛いところとか、
弱ってるところに気づくんだと思う。
で、逆に、そういうところに気づくことが、
クリエイティブにとって重要で。
自分がほんとうはどうしたいんだ、
みたいなことがわかってくるんですよ。

宮本

そうですね。

糸井

ひとりでいるときに感じる痛みみたいなものが、
実は重要だっていう気がするんですよね。
仲がいいとか、いまは元気だとか、そういうものだけで
乗り切っていけるかというと、そうじゃない。
ひとりでいるときに元気を維持できなかったら、
それは、ちょっとね。
だから、群れにいるよさと、群れから離れるよさと、
この往復運動を無意識でやってるんじゃないかな。

岩田

はい。

宮本

ぼくもひとりになるのも結構好きです。