8. つぎに進む話、進まない話

糸井

誰かがすごく考えてきたもので、
本人がすごくいいと思ってても、
それは違うな、っていうものってありますよね。

宮本

そうですね、それは、あります。

糸井

ありますよね。
で、宮本さんはおそらく、そういうものに
たくさん接しているのではないかと思うんですが。

宮本

うーん(笑)。

糸井

こういうものがよくて、こういうものがよくない、
みたいなことがまとまってたら教えてください。

宮本

あの、その人が一所懸命考えてきて、
張り切ってプレゼンしたものに対して
それはこうすべきじゃないかな、
ってこっちがいちゃもんをつけたときに、
「ああ、それも考えたんですけど・・・」っていう
反応をした人の案は、つぎによくなる傾向がある。

糸井

ああ、そうですか。
その方向を一度は考えているということ?

宮本

「そうあるべきや」っていうことが
ちらっとは思い浮かんでるんですけど、
なにかほかの理由があって、
ちょっと曲げてしまったというのかな。
だから、「ほんとはそうやったんです」みたいなことが
言い訳じゃなく考えられていた場合は、よくなるんです。

糸井

根っこのところではそっちを向いてるんだけど、
案としてまとめるときに・・・。

宮本

そうそう、プレゼンの資料とかをつくっていくうちに、
なんか、妙に違うなっていうものになっていってたのが、
本人に薄々わかってるようなときは大丈夫なんです。

糸井

うんうんうん。

宮本

そういうときに、本来あるべき姿を指摘されて、
きちんと「ほんとはそうだったんですけど」って
言える人はつぎにつながる。
でも、「それはほんとはこうでしょう」と言ったときに
「いや、ぼくはそうだと思いません」って、
パーンと返ってくるようなときは、それっきりですね。

糸井

ああ、ああ。わかった。
要するに、アイデアを
簡単に勝ち負けにしちゃう人はダメなんだよね。

宮本

そうです。

糸井

そうじゃなくて、いいことを思いついたなら、
ちゃんと取り組んで、つき合っていくというのかな、
あと、もっと自分たちをちゃんと頼ってくれ、
みたいなところがあるよね。

岩田

ああーー。

宮本

「そうは思いません」だと、
それに取り組むまえに終わってしまうんですよね。

糸井

だから、商品論みたいな話でいうとさ、
なんだろうな、たとえば料理でさ、
ちょっと欠点はあるけど、あなたこれ大好きでしょ、
みたいなものってあるじゃない?
つまり、ちょっとコゲの入った焼きそば的なもんだよ。
そうすると、大きい企業が
焼きそばを出すっていうときに
コゲはダメだろうっていう話になるじゃないですか。

岩田

はい、はい。

糸井

で、話が通じない場では、
焼きそばって、コゲてちゃダメですよね、
ってことで終わっちゃうんだけど、
話を転がせる場合は、
「そのコゲがなんともいえず
 香ばしくて美味いんだよね」ってなる。

宮本

うん。

糸井

そうすると、
じゃあコゲをどうしようかっていうことで
ほかの人に渡せたりしますよね。
でも、会議がただの商品論に終始すると、
ダメなところをどんどんカットしていくだけになる。

宮本

そういう感じ、そういう感じ。

糸井

「そうなんですよね・・・」の先に
転がしていかないと、そうなっちゃう。

岩田

だって、そつのないものって、
個性がないってことですからね。

糸井

ああ、そうだね。

岩田

そこには、作家性も個性もないので。

宮本

だから、その人におコゲの話をしたときに、
「そうなんですよね・・・」って、
まずはわからないと、もうアウトなんです。

糸井

そうですね。

宮本

「いや、わかるんですけどねぇ、
 こういう理由で難しくて・・・」
っていう話になれば、
じゃあ、そこをなんとかしようっていう
アイデアの話になるんで。

岩田

そこから、やっとアイデアの話なんですね。

宮本

そうです、そうです。

糸井

自分はほんとうはこう思ってるんだけど、
社会や会社はそれを許さないだろう、って
思い込んじゃってるところがあるんですよね。
だから、まずは、「許すよ」って
言ってあげればいいんですよね。

宮本

うん。だから、実際の会議でもあるんですけど、
「そこ、会社としてダメって言ってないですよね?」
ってぼくが岩田さんに確認して、岩田さんが
「言ってないです」って答えると、
話が、つぎの段階に、ひとつ進むんですよ。

岩田

はい。

糸井

わかるわ。